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君は知ってる

目が覚めた。

朝だった。

天蓋付きベッドの上に私はいた。

…夢じゃないんだ…

ちょっと夢オチを期待したんだけど、やっぱり無理があったか。

私はため息をついた。

てか、修学旅行はどうなったんだろう?

石竜子がうまく誤魔化してたり…しないか。

帰ってからの後始末が面倒だ。

私はノロノロと歩き、パウダールームに向かう。

鏡に映る自分が全く可愛くなくてげっそりする。

私は顔を洗い、用意されていた化粧道具で軽く化粧をした。最近ヒロインに教えて貰ったのだが、まだまだ初心者。

ファンデーションを軽くのせる程度の事しかできない。

でも、それでも顔色がよくなったように見え、幾分ましな顔になった。髪を整え、クローゼットを覗く。中にはぎっしりと洋服や靴、アクセサリーがあった。サイズ的にも、わざわざ私用に誂えたくさい。一体いつから誘拐を企てていたのだろうか?

私は、適当に服を選ぼうとして…

トントン

ノックの音がして、服選びを中断する。

ドアを開けると、そこにはアランが立っていた。

「おはようございます、私の可愛い人」

「…おはよう」

「朝からそんな、刺激的な格好をされては困りますよ」

「?」

アランが私の下の方に視線を向けるので、私も追い…!

バッ!!

慌てて、私は後ろを向いた。

今着てるネグリジェ、めっちゃ透けてるんだった!

「こ、これは、用意されていたもので!」

「ええ、用意したの私ですから知ってますよ?」

飄々と言われて、私は顔が赤くなる。

なんで、こんなのを用意したんだ!

「これって日本ではこういうんですよね?」

にこりとアランは微笑んだ。

「ラッキーすけべ」

計算づくでラッキーすけべってアホか!

てか、誰得だよ!!

へたり込む私に笑いながら、視線を向けつつ部屋の中に入る。そして、クローゼットの中からおもむろに服を取り出す。

「良美にはこの服が似合いそう。さあ、着替えた着替えた!兄上達が良美に会いたがっていたよ!」

私は慌てて服を受け取り、着替えた。

ベアロ地に白いレースが袖と裾部分についているゴージャス系お嬢様ワンピースだ。それに黒のタイツにローファーがあてがわれる。

「うん、さすが、私の婚約者。可愛い、可愛い。

そうだ、髪も巻きましょう!」

いそいそとコテを持ってきて、私の意志を無視してくるくる巻く。

この人器用だな。

服に負けず、髪もゴージャスになった。

でも、顔が貧相だから、綺麗になった感じは一切ないのが私らしい。

アランが、顎を掴み、人差し指に紅を乗せ、私の唇に優しく触れる。

「うん、やっぱり、最高だ」

アランは満足げだ。

「ああ、兄上達に見せたくない。」

アランが、私を抱きしめる。

「兄上達も婚約者候補だったから特に。こんな綺麗な良美を見たらきっと、求婚するに決まってる」

私の髪を撫でる。

「良美、浮気はダメだよ?良美は僕の婚約者なんだからね?」

私から離れて子供にいい含めるように言うが、私はアランの婚約者ではない。

そう突っ込むと長くなりそうだからやめておくが。

「さあ、見せるのが惜しいが、兄上達が会いたがっているから仕方ない、行こう」

アランは昨日と同じように私をエスコートしてくれた。


ダイニングルームに着いた。

そこには二人の美形がいた。

一人は黒髪、青目で眼帯をしている。

銀細工のアクセサリーをジャラジャラしているが、すごく似合っていた。

もう一人はアランと同じ金髪、青目。

だけど、目つきが鋭く、アランより背が高く怖い印象だ。

「紹介するよ。こっちの黒髪が長男のルイスで、

目つきわるいのが、次男のノエル。」

「よろしく」

「よろしく」

「よろしくお願いします。」

私達は挨拶をする。

ノエルが何かつぶやいたが聞こえなかった。

「さあ、朝食を食べながら話そう」

アランの言葉に使用人がダイニングルームにはいってきて配膳をはじめた。


「あの、良美さん」

「はい?」

食事が始まってすぐ、ルイスが声をかける

「この度は愚弟がご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。」

深々と頭をさげてくる。

まあ、当たり前の反応だよね。

いきなり、自分の弟が見ず知らずの女の子拉致ってきたんだ。そりゃ、謝るわ。

「いえ、できる限り早めに日本に帰して頂ければ構いませんので」

私は努めて冷たく言い放つ。

「それは勿論!」

「ダメだよ!まだ良美にはこの国と私の事を知って貰わないと!」

「北帝を浚うなんてやりすぎだ!すぐさまおかえしして、一族総出で謝罪しなければ、我らなど、すぐに取り潰される!」

ええ、その気になれば電話一本で取り潰せます。

「だから、彼女は私の婚約者です!婚約者同士逢瀬を重ねてなんの問題があるんですか!」

「正式なものでもないし、昨日も言ったが断られている!お前は北帝から見れば立派な犯罪者だ!」

ああ、ルイスは常識人だ。

心が暖かくなる。

「私は犯罪者ではありません!寧ろ今まで婚約者と会うことができなかった私こそが被害者です!」

対するアランは話が通じなくて怖い。

てか、こんなブスと婚約者でいいのか?

いや、爵位と会社を継げればなんでもいいのか。

ちらりとノエルを見れば何か思案顔だ。

目が合い、困ったような顔をする。


和やかとは言い難い食事は終わったので、私は部屋に帰る事にする。アランはルイスと言い合いをしていて、まだ時間がかかりそうだったので一人で移動をした所、ノエルに声をかけられる。

「良美さん!」

「あ、ノエルさん」

私は足をとめ、彼を見る。

見た目はめっちゃ怖いが、口調は穏やかだ。

「すみません、兄弟が…」

「いえ、大丈夫です」

「部屋まで送ります」

言って歩き出したので、着いて行く。

「あの、食事はどうでしたか?」

おずおずと言った感じで、聞いてくる。

「おいしかったですよ」

「それ以外に何か…」

「?」

「ああ、なんでもないです!」

パタパタと手を振る。

おいしかった以外にもコメントが必要だったのか?次回はもう少し丁寧にこたえよう。

「部屋に置いてある服はアランが選んだものなのですが、気に入りましたか?」

「ええ、とてもよいもので驚きました。でも、私には華やかすぎて着こなせてなくて…」

「…?……?何故………??」

ノエルは眉をひそめる。

目つきが悪いから、眉をひそめるとさらに凶悪顔になる。彼は私から視線を外し、何やらブツブツとつぶやく。聞こえるような聞こえないような?

「なにか?」

「あ、いえ、お気になさらず。」

愛想笑いらしきものを浮かべてノエルは言う。

そうこうしているうちに部屋に着いた。

私はノエルにお礼を言って部屋に入る。

はて?

彼は何をぶつぶつ言っていたのだろうか?

私は部屋に備え付けられていたソファに座る。

ロココ調のソファって座り心地が悪そうだと思っていたが、そんな事なくて驚く。

ノエルはなにか言っていた。

なんだった?

聞こえなかったが、一部聞こえた。

私はきちんと聞くべきだったように思えてならない。

「…ああ、気になる!」

私は立ち上がる。

うざいアランがルイスで、足止め食らってる今の内くらいしか、ノエルとは話せない。

ダメ元で、聞いてみよう!

私は部屋をでて、ノエルを追いかけた。


ノエルはゆっくりと歩いていたらしく、すぐに追いついた。

なにか首をひねりながら歩いているのでもしかしたら、なにか言っているかもしれない。

私は気配を消してノエルの背後ギリギリに近づく。

「…おかしいなあ。良美は食事で気づくはずなのに」

食事で気づく?

何を?

「それに予定より、美人だった。こんなはずではないのだが」

…予定より?

「予想よりの間違いじゃなくて?」

私はノエルに思わず声をかけてしまう

途端、ノエルは見てて面白いくらいに飛び上がり振り向いた。

「よ、良美さん!?」

「それに、食事で何を思い出すんですか?私は。」

「あ、あの、その…」

見た目に反して押しに弱いのかタジタジだ。

私はノエルの腕をガッとつかんだ。

「部屋に来て頂けますよね?」

「いや、その」

「来るよね?」

「は、はい」

私はノエルを押し切り部屋に拉致った。


「で、予定では私は何を思い出すと?」

ノエルをソファに座らせ私は仁王立ちして問う。

体は大きいのに、何故か縮こまってプルプル震えるノエル。

「えと、そのーーー」

視線を彷徨わせ一生懸命何事かを考えている。

「それに、ご飯食べてる時に、なにか言わなかった?」

びくっと分かりやすい反応を見せる。

「正直に言おうね?」

「いや、その、なんだ…」

「因みに正直に言わない場合は電話一本でお宅の爵位も会社もつぶすよ」

「!!で、電話一本って…いや、北帝ならあり得る。…」

やはりぶつぶつ言う。

癖なのか?

「正直に言っても信じるかどうか?」

「まずは言ってみなさい?言わなきゃ確実に不幸にするよ」

ノエルは顔をこわばらせる。

そして、小さく息を吐いた。

「本当は嫌なんだ。子供の頃に言ったらバカにされたし、信じさせるような証拠もないし。」

不貞腐れてつぶやくように言う。

「どうせ、誰も信じやしねぇ。」

「いいから、アランが戻ってくる前に言え!」

再度、ノエルに言う。

ノエルは私を睨む。

目つきが悪い男に睨まれるとすごく怖いが、堂々と受け流す。

暫く沈黙した後、おもむろにノエルは言った。

「俺には未来がわかってる…」

ーーーと。


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