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悪役令嬢、ナンパされる

「ねー、君一人?」

背後でそんな声が聞こえた。どこにでもいるんだな、ナンパって。やっぱ、季節柄か?私は視線も動かさず、ジュース購入の為カウンターでメニューとにらめっこする。

「ねー無視しないでよー」

まあ、こんなチャラい男、勘弁だよね。どこの誰がターゲットかは知らないが、御愁傷様。

「すみません、このマンゴートロピカルジュースを7つお願いします。」

言いながら腕のタグを見せる。このタグにバーコードをあてて支払いはチェックアウトの時に纏めてされるのだ。お財布持たなくていいって便利だよね。

「ちょっと、ねぇってば!!」

「うわっ!」

とん、と肩を叩かれ私は思わず声を出す。振り向いた先にはチャラい男が一人。えっ、私に声かけてたの!?

「ねえ?一人?」

「ジュース7つ買った女が一人だと思う?」

「…」

私はトレイに乗ったジュースを受け取りさっさとその場を後にした。人生で初めてのナンパだった。数ヶ月前まで誰かがナンパされてぇなんて話聞いたらモテ自慢乙って思ったけど、されてみてわかった。超うざい。なんか、頭悪い人の相手をさせられて時間の無駄って感じ。乙女ゲームの中なんだからせめてナンパ君もイケメンにしてほしい。そんな事を思いながらみんなの所へ戻ったのだった。



夕ご飯の時間になった。私と石竜子以外は全力で遊んだらしく、かなりお腹を空かせているらしい。夕飯はバイキングとの事。いっぱい食べるぞと気合いをいれていた。

「姉さん、ハンバーグと海老フライ好きだよね。僕のでラストだったみたいだから、あげるよ。」

「ありがとう!かわりにゼリーあげるね。」

「ありがとう!姉さん大好き」

「私も好きだよ」

「彼氏より僕だよね?」

「それはないな。」

「…」

ニコニコ笑っていた雪平君、笑顔がさっと消える。その様子をたまたま隣にいた私は見てしまった。ヒロインは堂本に視線を動かしてしまい、みていなかった。雪平君が私の視線に気づいた。慌ててニコっと笑っておいた。

「…それしか食べないの?」

「結構のせましたわ。」

「殆ど野菜じゃん、肉食え、肉」

ひょいひょいと英里佳様のお皿にステーキを乗せる匠。お、中々のレディファーストぶり!目の前で繰り広げられる光景に見入る。

「ちゃんと食っておかないと、今夜は徹夜だぞ。」

「そうでしたわね。魚も盛りますわ」

…徹夜?なんの話だ。聞かなかった事にしよう。

私は適当に盛った皿を片手に席に戻った、その途中。

「あ、さっきの彼女だ。ねぇ、君って人多いの苦手でしょ?こっそり抜けて二人でご飯食べない?」

「大人数より知らない人とのご飯のほうが苦手です」

歩みを止めず、視線も皿から動かさず即答して席に向かう。向かった先には石竜子がいた為席に着いた私に男は声をそれ以上声をかけずに消えていった。




バイキング会場の外で。

「ねえ、ちゃんとやってる?」

少年がイラつきながらチャラい男に言う。

「やってますが、全く隙がないんだよ。ブスの癖にお高く止まってる」

「そこをなんとかして、泣かせるのが君の仕事でしょ?ちゃんとやってよね。」

「あの女、なんかやらかしたんすか?」

今更な事を聞いてみるチャラ男。

「君には関係ない。じゃ、ちゃんと仕事するように。」

少年はチャラ男に背を向けた。チャラ男は小さく息を吐いた。そして、少年の姿が見えなくなってから柱の影に隠れていた男をよぶ。

「よくわかりませんが、こんな感じです。」

「本当、何考えてるんだ?泣かせる??嫌がらせか??」

男は眉を顰める。このチャラい男はこの男の部下である。チャラい男が一人でいた時に声をかけてきて女をナンパして泣かせろと金を渡して指示された。別に金はいらないが、女が女なので話に乗ったフリして上司にあたる男に報告をしたのだ。

「よくわかりませんが、彼は事故くらいでは全く懲りてないようです。」

「みたいだな…。まあ、とりあえず、お前、ちょっと当て馬役やってくれ」

言われてチャラい男は嫌そうな顔をする。

「何するんですか…?」

嫌だが断れない。何故なら目の前の男は上司だからだ。

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