ヒロイン無双
「海に行こう!」
ヒロインから唐突な電話があった。
「なんで突然そんな事いうかな?」
「実は、誕生日プレゼントで熱海に最近できたホテルのチケットを貰ったの。だから行こう!」
「誰から貰ったかは知らないが、堂本と2人で行けば?」
「検討した結果まだ早いという結論に達しました。」
哀れや、堂本…。
「堂本は置いていくの?」
「連れてく。」
「お邪魔虫やん!」
「だから、みんなで行くんだよ!」
「みんなって誰?」
「私でしょ?良美でしょ?要でしょ?匠でしょ?自称良美の親友に、雪平。あと、石竜子さんもか?」
当たり前のように匠とそれに英里佳様の名前がでて驚く。てか
「雪平って誰?匠はともかく、英里佳がなぜでてくる?」
問われてヒロインの鼻息が聞こえる。
「雪平は私の弟。実は今迄入院していたのだけど、退院したからお祝い兼ねて連れて行きたい。あのお嬢様は匠経由で来る事になった。」
「匠をなぜ誘った?」
「気が付いたら知ってた。」
何それ怖い。
「まあ、賑やかし要員として連れて行く感じ。」
「成る程ね。」
正直、海なんか行って遊んでる場合じゃないが、今は待ちの時間だ。なら、遊ぶしかない。
「了解!遊ぼう!」
「なら、水着買いに行こう!今から!」
「…え?」
と、言うわけで、とあるショッピングモールに来ていた。沢山の水着が売っていた。
「良美、ずっと気になっていたんだけど、今体重何キロ?」
「…50…」
実はダイエット開始から10キロ痩せたのだ。我ながら快挙である。でも、鏡を見ても痩せた感じがしないから不思議だ。
「なら、ビキニもokだね!」
『ダメ!』
私と後ろに影の如く控えている石竜子が同時に叫ぶように言う。てか、石竜子の表情、マジで焦ってる。普段無表情だから驚いた。
「なんで?せっかく痩せて綺麗になったのに?」
「全然だから!ちっとも細くなってない!体重は減ったけど弛んでる!」
言われて、ヒロインは呆れたような目を向けた。
「もしかして、良美気がついてない?」
「な、何が?」
「そう言えば、先日のパーティーでも思ったけど、あのドレス似合ってなかったよね。」
「な、な、そ、そりゃ、私は美人じゃないけど、精一杯頑張って…」
「そうじゃなくて!せっかく痩せて可愛くなったのに全然いかせてなかったのよ、あのドレスは!」
ヒロインは絶叫した!
「匠も、言ってたけど、良美はどちらかと言えば英里佳嬢が来てたドレスが似合うんだよ!」
「な、何言ってんの!?」
英里佳様が来ていたドレスを思い出す。あの、赤い薔薇のような豪華なドレスが似合うだって!?
「その私服だって、制服だってダイエット前から替えてないんでしょ?だから、ダボっとしていて不必要に太ってみえるのよ!良美は金持ちなんだからケチらず服を買いなさい!」
「う?いや、でも、どんな服を買えばよいのか…」
困惑顔の私に優しくヒロインは微笑んだ。
「私に任せろ!」
「石竜子さんに見せよう!」
ビキニを試着した私にヒロインは無茶振りする。
「ぜっっったい、いや!」
試着室にしがみつき断固拒否する。
「可愛いのに?どうせ海で見せるのに??」
「関係ない!本番はパーカーきて海に入らない!」
「私が許す訳ないでしょ!当日はあきらめるのよ!?ほら、買った買った!!」
「うう…」
「次は私服よ!いい機会だから一式買うわよ!」
「は、はい」
逆らえず、ヒロインに身をまかせるのだった。