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ハイスペック悪役令嬢佐倉英里佳様登場!

「お嬢様来客でございます。」

石竜子が部屋にやって来て声を掛けてくる。今日は来客の予定はない。アポ無しで来客など滅多にない。

「誰が来たの?」

問われて石竜子は眉を顰め視線を外し答えない。ほんの数ヶ月前だったらこの反応をする人物の心当たりは二人いた。そのうち一人は長谷川匠である。現在では、馬鹿が参りましたと無表情で石竜子は答えるので、今来たのはもう一つの選択肢の方だ。私はため息をつく。やる事も考える事も多いそれこそ秒刻みのスケジュールで動く私にアポ無し訪問をしてくる客人に無性に腹がたつ。

「お嬢様ー…」

石竜子はそこまで言って踏鞴を踏む。真後ろから思いっきり押されたからだ。その、迷惑な客人に。

「中々こないから、こっちから来てあげたわよ!」

高飛車な物言いで登場したのは美少女だった。茶色いウェーブのかかった髪。鼻筋のとおった妖精のように可愛い顔立ち。彼女こそラブ&マネーで登場する悪役令嬢佐倉英里佳様だった。このゲームで登場する悪役令嬢は私と彼女のみであるが、私と違い彼女はハイスペックだ。どうせ転生するならこっちが良かったと心底思う。

「ちょっと、ぼさっとしてないで、さっさとお茶を持ってきなさい!」

英里佳様はなんのためらいもなく私の執事である石竜子に命じる。石竜子は私を見る。

「石竜子、この部屋にお茶をよろしく。」

「かしこまりました。」

一礼して石竜子はその場から離れ英里佳様はズカズカと部屋に入ってくる。そして勧めてもいないのにソファにどっかりと腰をおろす。そして向かいに座る私をまじまじと見つめる。

「ふーん、噂通りなのね。」

「噂?」

「今社交界では貴方の噂で持ちきりよ?」

知らないの?と言わんばかりに言ってくるが、社交界なんて殆ど行かないから知らないわ。

「貴方が美人になったってね。」

「なんで、噂になるのよ?」

「貴方は腐っても北帝の一人娘。将来貴方の夫になる男が次世代の覇者と言っても差し支えないのよ。たとえ社交界に姿を見せずとも皆注目しているのよ」

「実に不愉快ね。」

ここで石竜子が部屋にやってきてお茶を置いていく。

「石竜子もご主人様が綺麗になったと思うでしょ?」

ティーカップ片手に意地悪な笑みを浮かべ聞く。

「私如きが意見するものではありません」

実に不愉快そうにいう。意見も何もどうでもいいのでしょう。私が何をしても周りが褒めても彼は是とも否とも言わない。

「本当、つまらない男ねぇ。」

呆れたとオーバーリアクションをする英里佳様。

「で、貴方は何をしにきたの?」

いい加減本題に入れと促す。こっちはヒマではないのだ。石竜子はそっと後ろに控える。

「ああ、これよ」

彼女は私に手紙を渡す。

「何これ?」

受け取りながら聞く。

「今月末私のバースデーパーティーがあるのよ。その招待状。」

「行かない。」

「ちょっと、即答!?」

「当たり前でしょ?私がかつて貴方のバースデーパーティーに出席したことがあって?」

「無いわ。…でも、花は貰ってる!」

「言っておくけど、それ選んでるのも送ってるのも石竜子だからね。」

「いやぁぁぁ!」

大の男嫌いな英里佳様は頭を抱え絶叫する。

「親友の誕生日プレゼントくらい自分で選びなさいよ。」

「えっ!?私達って親友なの!?」

心底驚く。とりあえず、人の執事を後ろから平気で突き飛ばし、こき使う女を私は親友とは認めない。

「生まれた時から一緒じゃない!」

「ただの幼馴染よ!」

もしくは腰巾着と呼ぶ。子供の頃から良美ちゃん良美ちゃんってうざかった。

「ひどい!」

英里佳様は抗議の声をあげるが、正直、並んでいると外見偏差値の差がありすぎて引き立て役にしかなれず一緒になんていたくないのだ。なのに、ひっついてくる。ひっつくだけならまだしも、彼女は双子コーデとかいうのが好きでペアルックでの外出を強要してくる。おまけに石竜子と相性が悪い…と、いうか一方的に突っかかる。

「それで、パーティーで着るお揃いのドレスを仕立てよう、って話をしにきたのよ。」

「パーティーには出ないから不要の話し合いね。」

「でも、良美ってば痩せたし、肌も髪も綺麗になったし、今まで貴方を馬鹿にしてきた奴らを驚かしたくない?」

言われて私は考える。私は社交界には殆ど行かないが、お父様の仕事の都合で家族同伴のものがあれば、顔くらいは出す。だから、知ってる。お父様や私の前ではおべっか使う連中も本当は心の中で舌を出していることを。私にやたら親切にしてくるイケメンは例外なく北帝が欲しいだけだ。

「お嬢様、驚かせるのは構いませんが、その後お見合いの話が増えて身動きがとれなくなる恐れがあります。また、皆が良識ある方とは限りません。第ニ第三のストーカーを生み出す可能性があります。」

私の迷いに喝をいれるかのように事実を述べる。そう、私にはやる事がたくさんあるから、見合いなんかに手を煩わせている場合ではない。ましてや第二第三の匠など生み出してはいけない。

「うん、その通り!行かないわ」

「使用人は黙ってて!」

「大体、今月末は…ヒロインの誕生日だわ。」

「ヒロイン?」

「お嬢様が大変親しくしているご学友です。」

大変のところに力を込めて石竜子が言う。

「な、な、なんですって!?」

そんなに私に友達がいるのが不思議か?

「そいつ、絶対北帝が目当てよ!」

「いや、そもそも、最初は超仲悪かったし。今は金持ちの彼氏もいるからわざわざ北帝を狙ってはこないよ。」

「最初は仲が悪かったのに、今では友達って何その王道パターン!許せないわ、その女!」

「何が許せないのかわからないけど、貴方には関係ないわよね。」

「その女のせいで良美がパーティーに来ないなら大いに関係あるし!よし、こうなったらその女もパーティーに呼ぶわっ!」

「はい?」

何この子言ってるの?

「良美の学友にふさわしいか、この私が直々に見てやるわ!」

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