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ヒロイン、想い人と再会する

そう言えば、この学校には新聞部なるものがあったなとぼんやり思う。私は今、ざわつく他の生徒達を押しのけて最前列で掲示板に貼られた号外を見ていた。


思えば乙女ゲームだけでなく、漫画や小説などの恋愛物では教師×生徒は王道カップリングである。誰にも言えない秘めやかな恋と大人の男の魅力に読者は酔うのだ。


私はもう一度、号外の見出しを読む

『祝!後藤先生に可愛い彼女ができる!』


秘めやかどこいった?


この見出しと共にデカデカと載ってる写真は昨日強制的に撮ったヒロインと先生のツーショットである。先生は凄くいい笑顔で、ヒロインはなんで写真撮るの?というきょとん顔で写っている。いや、本当、なんでこの人都合良くデジカメ持っててしかも撮るんだろうとは思ったがここにたれ込む為だったんだ。

「な、何よ、これ!?」

後ろでヒロインの絶叫が聞こえた。声に合わせるようにモーゼの十戒の如く人が割れ彼女を掲示板の前に誘導する。

「おはよう、ヒロイン!」

私は声をかける。私達は親友なので私はヒロインをヒロインと呼んでいる。呼んだ当初は何そのダサい渾名と嫌がっていたが、今ではすっかり受け入れられ、私以外の人も呼ぶようになった。

「おはよう、これ、何??」

「何って、後藤先生の熱愛スクープ?まあ、本人のタレコミだけど」

「いやいやいや、私先生の彼女じゃないし!てか、こういうのって事実無根でも、停学とか退学とか、免停とかあるんじゃないの!?」

「理事長のお孫さんとその彼女にそんな罰が下る訳ないし。」

「理事長の孫なの!?」

どうやら知らなかったらしい。何にもしてない教師って生徒から見ても浮いてるから結構有名なんだけど。

「どうする?このまま付き合う?」

「勘弁して…」

心底嫌そうに言う。

「金持ちだよ?」

「金持ちでも変人は匠君で懲りた」

ちらっと後ろに視線をうつす。

私もそちらを見る。廊下の影からカメラ片手にこちらを見てる人影が1つ。安定のストーカー、長谷川匠だ。てか、匠を金持ちと称するあたりまだヒロインは匠の秘密を知らないんだな。

「でも、4月に会って以来好きになった人には会えてないのでしょう?」

言われてため息1つ。

「そうなんだよね。繁華街にいた人だからあの日以来毎日通って探してるけど、全然見つからない。」

「でも、平気で人をボコった訳でしょ?なんかチンピラの匂いがするよ?」

「着てた服がブランドだったからヤバい人ではないと思う。」

「世の中にはインテリ系ヤクザってのがいるんだよ」

ブランドで固めててもケンカの強い善人とは限らないのだ。

「どっちにしても会えてないから。もー、毎日気になって勉強どころじゃなくて結果変な男釣るってなんの呪いよ!」

確かに。

「ねぇ!今日補習終わったら遊びに行こう!」

「そうしたいけど、私は毎日4時間運動コースだからね。」

肩をすくめる。私もカラオケとかショッピングとかしたいんだけどね。

「マジで毎日やってるんだね。」

「やればやるだけ効果があるからね。」

最近は少し停滞気味だが、嫌々やってる訳じゃない。純粋に楽しいのだ。

「筋トレとか私無理。」

「やると楽しいよ。筋肉ついたからか、便秘も解消したし。」

言われて、心惹かれた顔をするヒロイン。

女の子の永遠のテーマだもんね。

「そこって体験できるの?」

「できるけど、超ハードだよ。体質改善が目的なら別の所でよくない?」

「良美が終わった後遊びに行きたいから、いいんだよ」

そういうことなら、まぁ、いいか。私は頷き教室に向かった。



「あ…あ……あ」

言葉がうまく出ないらしく口をパクパクさせるヒロイン。彼女の視線は一人の男に釘付けだ。

長身、細身の筋肉質。前にかかる髪を後ろに撫でつけた男。

「?」

彼は困惑気味だ。

「お、覚えてますか?4月に繁華街で絡まれている所を助けて頂いたのですが」

言われて男は首を捻る。

「数人の男をあっという間に伸して、動かなくなっても容赦なく叩き潰してました!」

言われてどうやら思い出したらしい。

「ああ!そんな事もあったな」

「その際はありがとうございました」

ぺこりと頭をヒロインは下げる。

「ムシャクシャしていた所に丁度いい八つ当たり要員がいたからやっただけで、助けたつもりはないんだけど。」

「いえいえ!実際助かったので!あの時は大したお礼もできず、改めて食事でもいかがですか!?」

「いや、本当に大した事してないよ。」

苦笑いしながら遠慮する。

「うー、じゃ、じゃあ!良美も一緒に行こう!ほら、良美も普段お世話になってるんでしょ!?一緒に恩を返そうよ!!」

いきなりこっちにパスがきた。ちらりと彼をみたら目があった。ヒロインもじっとこちらを見る。

え、なんで私が決めるの?まあ、ヒロインの手助けしたいし、彼に世話になっているのも本当だ。ご飯くらい驕ろう。

「そうだね。終わったら一緒にご飯でもどうですか?堂本さん」




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