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坂上香織

初めてあの人に出会ってもう一月以上経つ。あの日以来一度も会えていないが、この想いが消える事はなく、寧ろ積もっていくばかり。




屋形は今から1年程前に知り合った恩人だ。お金がなく、明日のご飯代も事欠く状態なのに働く事もせず、お酒ばかり飲む両親を尻目に私は年齢を誤魔化してキャバクラに入店したのだ。考えてみれば高校入学前の小娘が18歳と偽ってもバレバレなのだが、店長は何も聞かずに雇ってくれた。当時アホな私はラッキー以外に思う事もなく店で接客していた。そこに客として来たのが屋形だ。屋形は有名企業の子会社の社長で、かなり羽振りがよく、しかも私を指名してくれた。かなりの頻度で来てくれて、彼のお陰で当時働いていた店がかなり違法な事をしていると知る事が出来、辞めるのも手伝ってくれた。辞めた後は屋形の好意で家を用意してくれて、しかも高校にも行かせて貰っている。でも、それ以上の援助は受けていない。両親と入院している弟の面倒、借金返済は私がやる事にした。言うは易く行うは難し。毎日毎日寿命を削って明日の糧を得る生活は本当に辛く、誰彼構わず私は呪っていた。何故、私だけこんな辛い思いをしなくてはいけないのか?両親は好き勝手やってる。なのに明日のご飯は用意されていて当たり前だと思っている。おかしいじゃないか。私が背負ってる物、少しは持てよと要求したって罰は当たるまい。そんな中、同じ高校の同じクラスに凄いイケメンがいた。このイケメン、かっこいいだけでなく、家も金持ちらしい。なんか有名企業の社長令息なんだと。それを聞いて子供の頃から思っていた夢が頭をよぎる。玉の輿に乗る事、それが子供の頃からの夢であり、子供の頃から苦労していたんだと改めて実感させる事実でもあった。幸い私は美人だ。違法なキャバクラで入店以来ずっとトップの成績を誇っていた。大人も虜にする美貌と店で培った恋の駆け引き手練手管を用いてこのイケメンを落としてやる!


そう意気込んだが、恋のライバルがいて思うように事が運ばない。また、この女が恋のライバルである事を差し引いても気に入らない。私が欲しくて欲しくて仕方ない物を持っている。多分彼女は私の人生で最高峰の金持ちだろう。この日本で1日過ごすうちで彼女の苗字を冠した商品に触れずに生活する事は不可能と言われている。本当、非常識な金持ちだ。噂じゃ専属の執事なんてのもいるらしい。どこの姫だよ!しかし、彼女が持っていなくて私が持っている物もある。この美貌だ。彼女はとても醜い。そして私は美しい。所詮高校生の恋なのだ。お金は武器にならない。ましてや、恋しい男は金持ちなのだ。金になんか靡かない。ライバルとは常に張り合い、罵り合い、罠を仕掛け、騙されて…結果私が勝った。途中、男の取り合いをしている事を忘れかけていたが、兎に角勝った。終了式の日彼が彼女に引導を渡し、私はお金を持った男を手に入れたのだ。


その喜びは余り長く続かなかった。まず、日を追うごとに彼は私に興味を失くし、反比例するが如くライバルに執着しはじめた。最初は朝電話をするぐらいで満足していたようだが、2年に上がる直前には私と会っていても彼女の名前ばかり唱えるようになっていた。正直、ドン引きもいいところだが、私はお金があれば構わないのだ。多少アレでも…と半ば無理矢理納得させていた。2年になって無事彼と同じクラスになり席も近くてほっとした。ライバルも同じクラスで席が彼と私の間という所が妙に怖くもあったが。そしてその日私は彼女の心が完全に彼から離れていると悟る。去年のバトルはなんだったんだというくらいの掌返しであったがしょせんお嬢様のワガママだったという事だろう。可哀想なのは彼だが。そして、その日に彼から別れを切り出されるが納得出来ずにケンカ別れする。で、イライラしながら繁華街を徘徊していたら、ガラの悪い男に捕まったのだ。最悪だ。基本イライラしているものだから、普段上手く躱せるし流せる事も出来なくなっていた。つい売り言葉に買い言葉で、相手を怒らせてしまい、あわや大惨事という所に…


運命の彼と出会ったのだ。


彼も私と同じくイライラしていたのだろう。やたら鋭い一撃で相手を伸したあとも、無意味に追撃を加えていた。粗方すっきりしたら、こちらを振り向きもせずに帰ろうとするので慌てて、声をかけ食事に誘うも断られ、名前も名乗らずサッサと去っていってしまった。


その後ろ姿はさながら騎士のようであり…


運命を感じざるを得ない恋に落ちてしまっていたのだ。

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