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バッドエンド

行けば消される。

行かなくても消されるかもしれない。

おまけに分のある賭けとも言えない。

それでも行くかと問われれば、私なら行きたくない。

ちらりと石竜子を見る。

石竜子もちらりと私を見る。

同時だった為図らずも目があった。

「…念の為聞きますが…

こちらの世界に私が残ったら一緒にいてくれます?」

答えがわかっている癖に聞いてくる。

私はゆっくりと首を横にふる。

ふう

小さく石竜子は息を吐く。

その顔はやはりな、といった雰囲気だ。

「でしたら、私がこの世界に残る理由はありませんね。」

「ん?僕と来るの?

愛する彼女のために?

愛されないのに、泣けるねぇ!」

泣き笑いで神のなり損ないは言う。

「彼女が私を拒否する以上、こんな世界に用はありません。

それに、私はあなたと違うんですよ?」

「へえ?どう違うの?」

「私は諦めてませんよ?

貴方がダメなら本物の神に直談判です。

また、新しい神に世界を作って貰って彼女と二人転生してみせましょう。」

石竜子のセリフに神のなり損ないは目を丸くする。

私だって同じだ。

「まだ諦めないんだ…」

同感だ。

「当たり前ですよ。

最後まで足掻いてやりますよ。

そうと決まれば行きますよ。

ほら、さっさと動いてください。」

てくてくと歩いて神のなり損ないの元に行き足蹴にする。

「あ!ひどい!僕、一応神なのに!」

「なり損ないでしょ。

ほら、早く!」

「ちぇ、わかったよ。あ、二人とも。」

『!?』

声を掛けられびくっとする。

「この世界が抜けたら操作不能のシナリオの読み込みが始まる。

つまりゲームのエンディングだね。

バッドエンドだけど、頑張ってね!」

…。

「は?なんだって?」

「何って、乙女ゲームで恋をせずに誰も選ばずエンディングを迎えるんだよ?

バッドエンドに決まってんじゃん!」

「そう言うのって普通、ノーマルエンドっていうんじゃないの!?」

「このゲームにノーマルエンドなんてないよ。

まあ、せいぜい頑張ってね。」

「ちょっと待て!」

私の言葉を飲み込んで世界が動いた。

そこには石竜子と神のなり損ないはいない。

代わりにパーティ会場の騒がしさだけがあった。


パーティが終わった。

断罪が行われ、石竜子は失意のあまり行方不明となった…

と、周りは思い込んでいる。

所謂ゲーム補正だ。


この世界が消えるのか、それとも残るのかはわからない。

戦々恐々と毎日を過ごす。

それとは別に最後に投げられた言葉。


バッドエンド。


具体的にどうなるのかは不明。

自分達ではどうにもならない事が動いているのだ。

あまり夜も眠れない。

トントン

部屋をノックする音がした。

同時に部屋に入ってきたのはノエル。

「よう。」

お盆にマグカップが二つのっている。

テーブルにのせる。

中を覗けば、ホットミルクだった。

「眠れないだろ?…実は俺もだ。

付き合え。」

「…了解。」

私はマグカップをとり、ホットミルクを啜る。

「どうなるんだろうな。」

「それはこの世界が?

それともバッドエンドが?」

「両方だよ。」

ノエルは眉を顰めながら言う。

「…まあ、ね。

でもさ、まさか貴方が…」

「お前が…」

前世ストーカーの加害者と被害者だなんて。

「なんか、色々ごめん。」

「いや、こっちも色々ごめん。」

「そっちは被害者じゃん。

謝る事は何もないよ。」

「いや、俺はもっと誤解されないような態度をすべきだった。

自業自得な面も多々ある。」

「でも、巻き込まれて…」

死ぬ程じゃなかった…

「まあ、死んじまったもんは仕方ない。」

ホットミルクをごくりと飲む

「それに、こっちの世界での生活は辛くて苦しい事も多かったが、お前との生活は楽しかった。

アランもいいやつで現実で一緒にいられて本当によかった。

アランだけじゃないな、他のキャラクターも最高だった。」

「作った人がアレでなければ完璧だったわね。」

「それは言わない約束だろ。」

もう、誰も石竜子の名前を言わない。

忘れた訳じゃないが、思い出す事もない。

ゲームから退場したキャラクターの末路だ。

「今後はどうなるかわからない。

でも、いつこの世界が消えても悔いが残らないよう精一杯生きるのよ。」

私はホットミルクを一気に飲み干した。


そして、翌日遂にバッドエンドが動きだす。


北帝の不正疑惑が表沙汰になったのだ。

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