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とある天才の決断

「つまり僕は自分が神としている事が出来る世界を天才君に作って貰う代わりにお気に入りの子の魂ごと転生させたんだな。」

神のなり損ないは自分がいる事が許される世界を。

天才は自分と彼女だけの世界を。

お互いの利益が一致し手を組んだ結果がこれだった。

「まあ、結果ダメだったみたいだねぇ。」

天才や神のなり損ないが想定したようには動かなかった。

「さて、もう終わった事をぐちぐち言っても仕方ないよね。

どうする?天才君?」

言われて天才…石竜子は我にかえる。

世界(うまれ)を捨てた彼には最早何もない。

でも、誰よりもここがゲームだと理解している。

「もう一度。」

『は?』

私とノエルの言葉がはもる。

「もう一度ゲームを!」

「出来るわけないでしょ!」

私の突っ込みにしかし神のなり損ないは

「出来るよ。」

「え!?」

ノエルが驚いたように口をあける。

「ここはゲーム。

望めば何度でも繰り返せる。」

神のなり損ないは笑う。

「実際、2回目だよ?エンディングを迎えたのは」

「え?」

これは意外にも石竜子の声。

「天才君すら知らないよね。

ここが2回目の世界って。」

「な、なんで…?」

石竜子がかすれた声をだす。

「なんで?前回も君はお気に入りを手に入れる事が出来なかった。

故に望まれたから設定画面からゲームをリセットして再スタートしたんだよ。

因みに記憶がないのは前回のゲームを無かった事にしたから当然記憶も無くなるって訳。

リセットはすると記憶の保持は出来ないんだよ。

あ、勿論ゲーム機能である僕は例外ね?」

小首を傾げて彼は言う。

「記憶があれば…」

「そうだねぇ、あればまた違うラストだったかもねぇ」

石竜子の呟きに他人事のようにかえす。

「それでも構わない!

ゲームのリセットとリスタートを要求します!」

「ふざけんな!」

ノエルが叫ぶ。

冗談じゃない!

石竜子の理想が叶うまで永遠にゲームをやり続けるなんて拷問だ。

記憶がなくてもそこには絶望しかない。

「よし、じゃあ、ゲームリスタートするね!」

無情にも神のなり損ないは石竜子に同調し、石竜子は笑う。

しかし…

「と、言いたいんだけど、それはもう無理なんだ。」

「は?」

「え?」

石竜子とノエルは同時に声をあげる

「どう言う事です?」

苛ついたように石竜子は神のなり損ないに詰め寄る。

「うんとね、それはそこの子が原因かなあ?」

ちらっとノエルを見る。

「これが?」

「これって言うな!」

「うん、前回、これはいなかった。」

「…?」

前回ノエルはいなかった?

「ちょっと言葉が足りないね。

前回、ノエルは唯のゲームキャラクターだった。

転生者じゃなかった。」

私と石竜子の視線がノエルに注がれる。

「大体僕の力じゃ二人をこの世界に転生させるので精一杯。

ノエル()まで無理。」

肩をすくめて神のなり損ないは言う。

「じゃあ、なんで彼はいるかって?

単純だ。」

ここで初めて神のなり損ないは泣きそうな顔をした。

「バレたんだよ、本物の神にね。」

「バレた?」

石竜子が一拍置いて反芻する。

「そう。本来なり損ないの僕はすぐに消されるはずだったのに、消されず残っている事も、勝手に世界を作って神を名乗っている事も、あまつさえ、神の世界から人間二人分の魂をこっそり攫ってきた事も…ね。」

泣きそうな表情は変わらない。

「本物の神が送り込んだ怒りのメッセージ。

それがノエルの転生理由だ。」

しーんと場が静まる。

「そ、それで?この世界はどうなる訳?」

私が無理矢理場を動かす。

「どうにもならない。このゲームが終了次第僕はこの世界から弾かれる。

おそらく行き場所は本物の神の元。

しこたま怒られた挙句消されると思う。」

言葉もない。

「そしてこの世界は…どうなるんだろう?

神の御心次第だね。

消されるか、残るか?

ああ、でも、手土産持っていけばお目溢しして貰えるかもしれないな。」

「手土産?」

「僕の共犯者。」

石竜子を見る。

「僕と一緒に神の元へ行き慈悲を乞えばあるいはこの世界は助けて貰えるかもね。

助かれば、後は元の世界と同様永遠の時が流れて命あるものは等しく死にそして生まれるその繰り返しが行われるようになる。

まあ、助かればだけど。

消されてしまえば、二度と転生などもない完全なる滅びが待ってるよ。」

あ、あと、と付け加える。

「勿論、僕と一緒に行けば確実に消されるよ。

どうする?石竜子?」



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