鑑定
アジア最大の独裁国家の元王族。
北帝の力添えで日本に亡命し、以降良美の執事となる。
それが石竜子の設定って訳か…
俺はぼんやりと思う。
予想外に大物だ。
俺達は言葉もない。
血筋だけならここにいる誰より上なのだから。
「えっと、石竜子にマスターキーを渡したってのは認めるのよね?」
坂上が上ずりながら問う。
そ、そうだ、今は石竜子の設定よりこっちの方が大事だ!
「は、はい!す、すみません…」
「な、なんでまた…」
問われた支配人はふいっと視線を逸らす。
「まあ…大方金かさもなきゃ弱みを握られたか…いずれにせよ理由なんかどうでもいい。
大事なのは石竜子がアランの部屋に入ったという事実。」
堂本の言葉に俺は頷いた。
「でも、アランさんの部屋で何をしたかまではわからないんだよね?
石竜子なら言い逃れしそうだよね?」
雪平が言う。
俺なら言い逃れ出来ず罪を認めるが、石竜子なら言い逃れしてしまいそうだ。
「部屋で何をしていたかがわかる…もっと言えば石竜子がこの服をこの部屋に置いたという明確な証拠が欲しいな。」
堂本が顎に手を置き考え込む。
例えばどのような物なら証拠となるだろうか?
わかりやすい映像がないなら石竜子の指紋とか?
俺はワンピースに目をやる。
「…指紋?」
「いや、このワンピースは僕が良美の家で見せた時に石竜子が触れた。
指紋は証拠にならない。」
アランが言う。
「ねぇ?こちらの服ではどうかしら?」
佐倉がもう一着の服を指差す。
「…この服は石竜子触った?」
長谷川の問いにアランは首を横に振る。
「なら、この服の指紋を調べればよいが…」
そう、問題は調べる術がない。
「あ、あの…」
そこにおずおずと手を挙げたのは小松さんだった。
「うちのとーちゃん…父は科学研究員で指紋の採取、鑑定をしているんです。
頼めばやってくれるかと…」
「ナイスよ!」
「あ、ありがとうございます!姫様!」
佐倉のお褒めの言葉に小松さんは恍惚とした表情を浮かべる。
「よし!早速頼む!」
長谷川が服を小松さんに押し付け、彼女は大きく頷いたのだった。