石竜子の故郷
音声が流れ終わった部屋に沈黙が落ちる。
だが、それも一瞬。
ガン!
ホテル支配人のすぐ横に堂本の長い足が蹴り込まれる。
安定のヤクザぶり!
「で?何か言う事は?」
「いや、私は何も…?」
音声再生。
「何か言う事は?」
「私は何も…?」
音声再生
音声再生
音声再生
音声再生…
以外エンドレス
「話すまでここから出れると思うなよ?」
ドスの効いた堂本の声がホテル支配人の耳元で囁かれる。
顔色が悪いよ、支配人。
音声再生
音声再生
音声再生…
支配人は数時間後、堂本に屈した。
「はい…私は彼にま、ま、マスターキーを渡しました。」
「何をするって言っていた?」
「す、すみません、そこまでは聞いてないです」
「ちっ!まあ、そうだな。」
堂本が吐き捨てるように言う。
「ところで…シーイーって何?
これってあの独裁国家の言語だよね?」
アランが聞く。
えっ?
そうなの??
でも言われてみればそうかも。
アジア最大の独裁国家の言語でシーイーって意味は確か…蜥蜴。
あっ。
独裁国家の国旗じゃん。
ねぇ、支配人さん、あんた何をどこまで知ってるの?
「あ、あの方は…昔から懇意にして頂いているお得意様でして…。」
「もしかして、10年前から?」
「そ、そうです!」
アランの言葉に頷く支配人。
「アラン?何か知ってるの?」
「知ってるっていうか…シーイーって独裁国家の言語で意味が蜥蜴で国旗にあたるのはわかるよね?」
「ああ。」
俺は頷く。
「あの国では国旗に準ずる名前は王族にしか使わなかった。」
「…あ」
そうだ!
あの国はそういう国だった!
でも…
「今あの国は…」
「そう、10年前軍部によるクーデターが起きて王族は全員処刑された。」
「えっ!?」
坂上が声を漏らす。
「おい、もしかして石竜子…いや、シーイーは…
独裁国家の王族の生き残りか?」
「…そうです。
彼はとある一流企業が手を貸して日本に亡命して暫くの間当ホテルに滞在しており、それ以来の付き合いとなっております。」
とある一流企業って北帝か。
王族の亡命にも手を貸せるってもうそれ企業の枠を超えてるよね?
内心思うが勿論口になんて出しません。
10年前クーデターにより国家は崩壊。
現在はクーデターを起こした軍部による独裁国家になっていて日本とは国交断絶状態だ。
それくらいの知識はここにいる全員が持っている。
俺達は顔を見合わせるのだった。