釣果と石竜子の独白2
途中石竜子視点
結果から言って釣れた。
小松を放牧してから一時間かからなかった。
仕立ての良いスーツを着た渋い顔した男が小松に接触した。
接触して何事か言い募った後、小松が石竜子でないと気づき、一歩後ずさる。
そこを捕獲。
「な、は、離せ!」
「はいはい。ちょっと来てくださいね。」
アランが有無を言わせず、自室に彼を拉致る。
そして、部屋で彼を取り囲む。
「今、この人になに話した?」
「いや、私はなにも…」
「長谷川!」
「はい。」
小松に仕掛けていた盗聴器を出す。
目を丸くする小松。
気づいてなかったんだね。
もう、プロと言っていいだろう。
「盗聴した音声データはこっちにある。」
再生機が動く。
『ちょっと…!
石竜子様こちらにはもうこないと…!
これ以上はマスターキーをお渡しする事は…って?』
流れる音声データ。
うん?
シーイー?
こいつはトカゲだろう?
***
「君の名前がやっと表にでたよ。」
私の後ろにいつの間にかやってきて声をかけてきた。
今更振り返るまでもない。
「やっとですか…」
捨てた名前のひとつがやっと舞台にでてきた。
「彼女は寝てるね。」
寝顔を勝手に覗かれ不快になる。
体を使って彼女を隠す。
そんな私を嘲笑う声の主。
「別に取りもしなければ減りもしないのにねぇ?
」
きっとあなたには理解できないでしょうよ。
「うん、そうだね、何度繰り返しても理解不能だよ。」
…繰り返し?
言葉の綾でしょうか?
意味不明です。
まあ、いつもの事ですね。
「まあ、あと少しだね。」
「今のところ予定通りです。」
「理想通り?」
問われてしばし考える。
…何故考えたのか?
問われるまでもない。
「ええ。理想通りです。
彼女を手に入れる事こそ我が悲願。」
「ふーん。まあ、君が幸せならいいんだけどね。」
…幸せならね?
声の主の小さなつぶやきはきこえなかった。
もし聞こえていたら…
いや、やはり同じでしょうね。
私はそういう人間だから。