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いいえ、これは誘拐です。

「いいえ、これは誘拐です!」

間髪入れず私は突っ込んだ。何が愛の逃避行だ。私達はそんなに仲良くないよね。そんな私の突っ込みに彼ははっと鼻で笑う。心底楽しそうだ。

「誘拐ってのは身代金が取れる相手に対してやるもんだよ。」

いえいえ、普通に億単位でもらえまっせ?でも、もしや堂本は私が北帝だって知らない?石竜子の事は執事だって聞いたのに?下手に突いて蛇を出すのもな。運転している堂本の横顔を見つめて思う。どうやら彼は今上機嫌なようだ。このまま機嫌が悪くならないよう、とりあえずおとなしくしておこう。車は赤信号で止まった。その途端こちらを見る。目が合った。かつて騎士と呼ばれた男。本人は強さの為と思っているが実はそれだけではない。その整った容姿にも理由の一端がある。切れ長の瞳は凍えるほど冷たくそして美しい。その目が私に近づいてきた。目が近づきすぎてピントが合わなくなると同時に唇に何かが触れる。私の目が限界まで見開かれ後ろに飛び去る。しかし、すぐ後ろがドアであまり彼から距離が取れない。そんな私の様子に堂本は満足げた。

「今の反応…お前、初めてだろう?」

「あ、当たり前だ!!」

私の叫びに堂本は小首を傾げる。

「お前はあの男と長い付き合いなんだろう?」

「え、うん、まぁ、ながいねぇ。」

指折り数えてみればもう10年の付き合いだ。

「で、まだ何にもしてないと?」

「…?」

「親も知ってるんだろう?」

「てか、親が連れてきたんだけど?」

「…?」

堂本は青信号に気づき車をだす。

私と堂本は暫し無言で前を見る。多分私と堂本は同じ事を思っているに違いない。即ち

「会話が噛み合ってない。」

「あいつは親が決めた婚約者って事か。」

あれ?考えてる事違ってたわ。てか、

「こ、こ婚約者!?」

「違うのか?お前らは親公認の付き合いなんだろう?」

「違うわっ!」

「は?だって昨日あいつがお前とは恋人同士だって言ってたぞ!?」

「濡れ衣だっ!てか、私の低スペックぶりをみてよ!ありえないでしょ!!」

「じゃあ、お前らどういう関係だよ!!」

「石竜子は私の専属執事だ!」

「!?」

知らないうちに車は大人の隠れ家がやたらと多い街へときていた。

「とりあえず、飯でも食う?」

「奢れよ。」


普通の高校生はこんな高級な店はこない。だけど私は北帝。このレベルの店はファミレス感覚で利用している。幸いこの店は来た事も北帝出資先でもなく私に注目する者はいない。

「…つまりお前らは雇用関係にあると?」

「そういう事。」

私は石竜子の事を話す。堂本は石竜子の嘘を知り呆然としていた。

「大体、私の低スペックぶりをみてよ。これみれば分かるでしょう。」

にきびも酷い、髪もパサパサ、誤差程度に痩せたがまだまだたるんだ体。こんな私が芸能人も真っ青な美形の彼女なんてありえない。

「低スペック?」

「にきび顔のデブス。出会ったその日に笑い者にしてくれたよね?」

言われて堂本は顔色が悪くなる。どうやら思い出してくれたらしい。

「言っておくけど、私は忘れてないよ。一生忘れない。殺意すらあるよ。」

あの時の怒りは毎日4時間の運動すらも苦にしないレベルの燃料を心に投下してくれた。

「い、いや、それはだな…」

じぃーっと堂本を見つめる。

「す、すみませんでした。」

よっしゃ、頭を下げた!あー、胸がすーっとした!本当、ずーっとムカついてたんだよね!

「だ、だけど!」

うん、言い訳かね?

「今は綺麗だと思う」

ぞわぞわぞわ!

背中に悪寒が走る。

「頭大丈夫!?」

「大丈夫じゃないかも?」

「病院に行こう!!」

真剣に病院を勧める。

「その目だ。」

「?」

この性格の悪さが滲み出た目がなんだ?

「その目にもっと映りたくなる。」

「!!」

顔が赤くなるのがわかる。

「今日まで文句も言わずがむしゃらに目標に向かい努力する姿は賞賛に値する。」

真面目な顔で私に言い募る。

テーブルの上に出ていた私の手をそっと両手で包み込む。

「女は外見じゃない事をお前が証明した。」

「いやいや、それにしたって限度があるでしょ」

さりげなく手を振りほどこうとするが、堂本はそれを許さない。

「そんなに気になるか?」

「気になるからジム通ってるんだって!」

「体重はジムに通い続ければ一年で目標体重に到達するだろう。にきびは病院にいけば薬を処方してもらえばいいし、髪は美容院でヘアパックすればいい。」

「病院にはすでに通ってるけど薬は全然きかない。美容院も毛先を整えるくらいしかできないみたい。」

ため息混じりに私は言った。

「はあ?そんな訳ないだろ。この程度治らない訳がない。その病院藪なんじゃ?」

「北帝医療センターが藪?」

「…。北帝の病院がこの程度を治せない何てますます可笑しい。他の病院に行くべきだ。」

「でも、他の病院なんて私知らないし。」

堂本は時計を見る。

「まだ、時間はある。行くぞ!」

「ど、どこに!?」

「病院と美容院だ。」

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