散会
途中アラン視点
恐怖が心を支配した。
まさか本当に忘れてしまうなんて!
あまりに現実離れした現象に言葉もない。
勿論、言葉を尽くして説明すれば彼らは思い出したが明らかに温度差があった。
頭がクラクラする。
佐倉はああやっぱりねと呟いていた。
頭を抱えつつもやるべき事はやらねばならない。
俺たちは監視カメラの映像を見せて貰えるようホテル側と交渉に入る。
かなりの時間話し合うが、映像の提供はしてもらえなかった。
唯の一顧客に映像を見せる事は出来ないとの事。
「…仕方ない、カメラは諦めて目撃者や協力者を探そう。」
俺の言葉に頷く一同。
誰にも見つからずホテル内部に侵入なんて無理だし鍵の問題もある。
必ず、石竜子に手を貸した人がいるのだ。
そいつを探して口を割らせる。
「それと、そのワンピースもう一度見せてくれないか?」
堂本がいい、アランは見せる。
背中部分にはっきりと靴跡がある。
「アラン、ちょっと実験に付き合え。」
そう言ってアランと堂本はその場を離れて行った。
残された俺たちは聞き込みを始めた。
***
「人間には絶対に直すことのできない癖というものがある。
直す事が出来ない理由はそこに癖があるなんて本人が気づいていないからだ。」
彼はワンピースの足跡を睨みながら言う。
ここは堂本さんの道場。
そのど真ん中で僕はトルソーに飾られたワンピースを眺めながら堂本さんの話を聞いていた。
「今回の場合はこの足跡にある癖を見つける。
アランの蹴りと犯人の蹴りの違いを見つけて、アランと犯人が別人であることを証明する。」
「な、成る程。
言いたい事は分かりました。
しかし、そんな簡単にできるのでしょうか。」
「なに、ひたすら蹴りを打ち込みアランの癖を解読してこの足跡の主との違いを見つけるだけだ。
アランはひたすら蹴り込めばいい。」
言って堂本さんは蹴り込み用のサンドバッグを持ってきた。
「まずは軽く100回から始めようか?」
僕は自分の顔がひきつるのを止める事が出来なかった。