相談
暫くノエル視点が続きます。
「おい!あのワンピースは一体なんだよ!」
俺はアランが泊まっているホテルの部屋に着くなりそう叫んだ。
「知らないよ!こっちが聞きたい!」
対するアランも負けじと声を荒げる。
優雅なアランには珍しい事だ。
「なんであんなもん持ってるんだよ。」
俺はソファにどかりと座り聞く。
アランもソファに向かい合って座る。
「この間、クローゼットの整理をしていたらでてきた。」
「は?」
意味不明すぎる。
「なんだよ、それ?
服が自然発生したっていうのか?」
「知らないよ!
僕だってわからない!」
アランは髪をくしゃりとかきあげ言う。
嘘をついているようには見えない。
まあ、アランは嘘をつくような子じゃないが。
「つまり、誰かがこの部屋に侵入して服を置いたって事か。」
俺の呟きにアランは、はっとしてこちらを見る。
「なんのために…」
「なんのため?
アランに階段突き落としの罪を着せるため。」
「なんで僕なんだよ!」
アランがテーブルをドンと叩いて言う。
なんでかって?
そんなの簡単な話だろう。
俺は一度深呼吸する。
心を落ち着かせるために。
落ち着け、俺は俺の役割を果たすんだ。
「アランを退場させる為。」
「退場?」
「そう、この間の花バトルでアランは振られた。」
「!」
「でも、まだ諦めてないんだろ?」
「当たり前だ!」
「それが嫌なんだろ、真犯人は。」
「真犯人?」
「アランに階段突き落としの罪をなすりつける事により、良美から強引に引き離した。
これで一番得をするのは?」
「…石竜子…」
よく出来ました。
俺は頷く。
「これは想像で、証拠がある訳じゃない。
けど、良美に一番近い存在なんだから、彼女を階段から突き落とす事も、このホテルに侵入してワンピースをクローゼットに仕舞い込む事もあいつなら可能だろう。」
言われてアランは顎に指をかけ思案する。
良美を突き落とす事は可能。
愛してる人間を痛めつけるなんて正気の沙汰とは思えないが可能は可能。
この部屋への侵入だって、金で買収するなり色仕掛けなりで入り込もうとすればできるだろう。
上手く罪をなすりつける事が出来れば、階段突き落とし犯人を近づけさせないという大義名分のもと良美からアランを引き離せる。
そして、怯える良美の心にするりと入り込み…。
「いや、そんな上手くいくのか?」
「事実上手くいってる。」
服を見せるタイミングまで読まれているとしたら脅威だ。
「このままだと、アランは二度と良美に会えない。」
「そんな!」
「そういわれても事実そうだろ。
あの、石竜子が俺達を会わせると思うか?」
「思わない…でもこのままだと…!」
「そう、俺達は無実の罪を着せられたままだし、
良美は石竜子に騙されたまま。」
「自分の目的達成の為なら良美を害する事すら厭わない人間を側に置いては置けない。」
アランはきっぱり言う。
「まだ犯人が石竜子と決まった訳じゃないが、99%そうだろうな。」
「だから、石竜子が犯人だっていう証拠を掴めば良美は目を覚ます?」
「ああ。」
俺は頷く。
「問題はどうやって。」
「他に何か置かれていたものはないのか?」
「ああ、こんなものもあった。」
アランはクローゼットから服を取り出す。
「なんかの制服?」
「作業着にも見えるかな?」
俺達は首を傾げる。
「まあ、これも何かの証拠品だ。
保管しておこう。」
「うん。」
「それと、俺達だけじゃどうにもならない。
助っ人を呼ぼう。」
「助っ人?」
俺は頷きスマホを取り出したのだった。