表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/134

歯車は狂い毒が盛られる

途中石竜子視点

「お嬢様はお認めにならないかもしれませんが、私はアランが犯人だと思います。

少なくても犯人の可能性がある以上、お嬢様に近づける訳にはいきません。

それは兄であるノエルも同様。

二人共屋敷への出入りを禁止しますがよろしいですね?」

有無を言わさぬ石竜子の言葉に私は頷くしかできなかった。

石竜子は私の背中を撫でながら口元を緩める。

「では、手配して参ります。」

石竜子の手が私の背中から離れ、部屋から出て行く。

私はようやく呼吸が楽になる。

たかだか背中を撫でられただけで呼吸がうまくできなかった。

階段から突き落とされたから…だけではない。

前世受けたトラウマが蘇ったからでもある。

私は事故で死んだ。

具体的に覚えてなかったし思い出す事もなかったのに、何故かこのタイミングで浮かび上がってきた。

私は前世でも誰かに恨まれ殺された。

きっと私が愛したあの人に違いない。

それくらいしか思い当たる人もいないし。

今世では私を愛したアランが私を階段から突き落とし痛めつけた?

もし、そうならアランの二重人格とも言えるその性格が恐ろしい。

うかうか仕返しなんてすれば返り討ちにあいそうだ。

ああ、なんであの時階段から突き落とした犯人の顔を見る事ができなかったのだろう。

その立ち姿だけでもみていれば、少なくてもアランが犯人か否かくらいはすぐにわかったものを!

ワンピースがテーブルの上に出しっぱなしになっている。

今まで自分のだと思っていたが実は違った奴だ。

気持ち悪い!

私は衝動的にそのワンピースをゴミ箱へ投げ捨てた。

その瞬間、また階段から落とされた時の事が頭に蘇る。

それはリアルにたった今落とされたかのような痛みもついてきた。

背中の怪我はとっくに治っている。

それ以外の怪我だって同様だ。

なのに痛いのは何故か?

幻痛?

勘弁してほしい。

自分の体が怖くて涙が零れた。

トントン

ノック音が響く。

「ど…ぞ。」

「お嬢様?」

ドアが開いて石竜子が不思議そうな声をかけてくる。

しかしすぐに目を見開き私に駆け寄る。

手が私の背中に触れ、一瞬ビクッとする。

しかし石竜子はそれに気付かず、もう片方の手で零れた涙を拭う。

「大丈夫です。

お嬢様、この石竜子が必ず守ってみせます。

アランの脅しになど屈指はしません。

決して離しは致しません。」

なんでこの人は私から離れないのだろう?

たかだか父が勝手に決めた婚約者相手じゃないか。

北帝もいらないとか言っていたが、じゃあ何がほしいのか。

私?

私の価値なんて北帝しかないのに?

いや、なんでもいい。

とにかく、今は誰かにそばにいて欲しいのだから。

「さあ、もう一眠りしましょう。」

私の背中を撫でながらベットへと誘う。

優しく寝かしつけてくれる。

頭を優しく撫でられて、安心する自分が確かにいる。

「大丈夫、怖いものは何もありません。

ただ私を信じてくださればよいのです。」

石竜子が耳元で囁いた。

私は微睡みながらそれをきき、そうだね…と心の中で返事をしていた。


夢で再び前世での死の瞬間を見る。

恐ろしくても目覚める事がなく次は階段から落とされる夢。

アランの声が聞こえたような気がした。

目覚める事がなく朝までずっとリフレインする。

この日以降、この夢以外見る事が出来なくなった私は石竜子がそばにいないと眠れなくなってしまった。




***

お嬢様の夢見が悪い。

なんでも階段から突き落とされる夢をループで見るらしい。

怯えるお嬢様はなんて愛らしいのでしょう。

これはさすがに予想外。

どうやら神が私の為に働いてくださったようだ。

このような手助けは不要だったのですが、短時間でお嬢様の心を私に縛り付ける事が出来るのでありがたい。

お嬢様、今夜も私が共に寝ましょう。

その髪を撫で、夜通し側におりましょう。

涙は私が掬い取るので、安心して毒のような夢を見続けてくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ