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出番直前

ミスコンの準備に気を取られて会社での嫌がらせは気にならなかった。

階段から突き落とされるという大規模なものがなかったからこその余裕なのだけど。

ノエルが社内で影のように付いて回ってくれたのもよかったのかもしれない。

ノエルはアルバイトととして入社しており私と一緒に業務をこなしてくれた。

そして空気読まない風を装い、私にだけお菓子がないと大騒ぎし、挨拶を無視されれば大騒ぎしてくれた。

それがよかったのか周りの空気が少し和らいだ気もする。

会社が少しばかり居心地の良い空間になって暫くした頃、文化祭が始まる。


高校生活最後の文化祭。

ミスコンの結果はどうなるのかわからないけど

全力で当たりたい。

今日が私の美の集大成といってよいだろう。

私は水着を着てその上にパーカーを羽織っている。

今回ミスコンに出る女子生徒は私含めて5人。

ヒロインはエントリーナンバー4、私は5だ。

しかし、ヒロインがずば抜けて可愛いのは当たり前として他三人も凄く可愛い。

皆さん、出るとこ出てて引っ込むところは引っ込んでる。

私場違いじゃね?

うう…気合を入れてきたけど段々自信がなくなってきた…。

「お嬢様?」

不意に石竜子が声をかけてくる。

「石竜子…!」

「どうされました?」

「うう…皆んな可愛くて自分場違いな気がする…!」

石竜子は視線を周りに向けてから首を傾げる。

「どこにお嬢様より美しい人がいるのでしょうか?」

「いやいやいや!皆んなだよ!」

「お嬢様が一番です。」

石竜子が私の髪を優しく撫でる。

「その髪も…瞳も…唇も…その体も…全てが誰より美しいです。」

「色々贔屓目はいってますよ?」

私は恥ずかしくなり俯く。

きっと顔が赤い。

「正直、こんな大勢の人間に見せたくないんです。」

少し語気を強めて言われ私は顔を上げる。

強い視線が私に降り注ぐ。

「当たり前でしょう?

私だけのお嬢様なんですから。

許されるなら、今すぐ攫って閉じ込めて一生私に飼われていればいいと思います。」

「え?」

顔が引きつる。

じょ、冗談だよね?

石竜子は微笑む。

「冗談ですよ?」

だ、だよね!

あー、びっくりした。

「緊張とれましたか?」

「あ!」

いつの間にか緊張とれた?

というか、忘れてた!

「では、出番のようです。

いってらっしゃいませ。」

石竜子は恭しく礼をして私を送り出した。

この時私は忘れてた。


石竜子は冗談なんて言わない事を。

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