準備
途中アラン視点
王子役は石竜子に決定。
衣装は学校にある既存のものではサイズが合わないので新しく注文。
よし、石竜子はこれでよし。
問題は私か。
私はいつもの倍の距離を走り、筋トレも倍時間をかけるようにした。
髪の手入れも美容院に毎日通いヘッドスパをしまくる。
肌の手入れでエステにも通う。
ええ、お金を使って美を買う行為ですが何か?
ヒロインはそんな事しなくても美人だからいいけど、こっちは低スペック悪役令嬢として生まれた女ですからね。
私にあってヒロインに無いお金を使ってようやくイーブンだろう。
…イーブンだよね??
とにかく時間がない。
人前に出るのだ。
恥はかきたくない。
ヒロインと最後の戦いだ。
手は抜きたくない。
彼女と並べる人間になりたい。
いつまでも低スペックではいたくない。
私は限られた時間を精一杯努力してミスコンに挑む事にした。
***
良美が頑張ってるとノエルから聞いた。
彼女の事だ、やるからには徹底的にやるだろう。
僕は彼女の隣に今は立てないけど、彼女の晴れ舞台を見に行くくらいはいいよね?
そうだ、着ていく服でも買いに行こう。
いい気分転換だ。
僕は服を買うのが好きだ。
男だけど着飾るのが好きなのだ。
きっとかつて醜かった事の反動で美しいものが好きなのだろう。
僕はついつい服や小物を買いすぎてしまった。
最近鬱々としていた気分が少しよくなった気がする。
やはり買い物は偉大だ。
そんな感じで荷物を抱えて道を歩いていると、路地から女性の声が聞こえてきた。
「…いい加減にしてください!
私は急いでいるんです!」
「またまた!なんかずっとそこに立っていたみたいだし?待ち合わせの相手にはすっぼかされたんでしょ?」
「そんな事ありません!」
どうやら女性が悪漢に絡まれているらしい。
僕はスマホを取り出し耳にあてる。
「警察ですか!女性が男性に絡まれています!
場所は…!」
「っち!」
悪漢は舌打ちしてどこかへ行ってしまう。
「あ、ありがとうございました。」
女性…というか少女?は礼を言う。
良美と同じ年の頃か?
ショートカットの可愛いらしい子だった。
はて?
どこかであったことがあるような?
いや、日本人で知り合いの女の子なんて良美しかいないし…気のせいか?
「いや、大した事ないよ。
気をつけるんだよ。」
「あ、はい、ありがとうございます。」
彼女は礼儀正しく礼をする。
その時、
「小松さん!」
遠くで彼女の名前と思しきものを呼ぶ声が聞こえたので僕はその場を去った。
珍しく僕はいい事したな。
少しホクホクした心を持ってホテルの部屋に帰った。
荷物をほどきクローゼットに仕舞う。
ふと、先日ノエルに衣替えしろといわれた事を思い出し、ついでだとやる事にする。
この服は…買ったけど着なかったな…
この服はヘビロテしたな…
えーっと秋口の服はこの引き出しの中だったよな。
ごそごそと整理をしていき、奥の方にも手を伸ばす。
「?」
なんだこれ?
僕は心当たりの無い服を二着みつけて暫し頭を傾げるのだった。