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知らないうちにジョブチェンジ

電話が鳴っている。

そう、電話が鳴っているのだ。

何故、かけてくる、匠。

横で私にスマホを差し出すのは石竜子だ。無表情だが、彼の言いたい事はわかる。即ち、

「番号変えますよ。」


学校につき席に座る。どうやら匠もヒロインもまだ来ていないらしい。おそらく仲良く登校イベント中だろう。いや、本当、ヒロインとラブラブなんだから私なんぞに構わないでほしい。

「北帝さん」

声をかけられ振り向くと一年の時に同じクラスだった取り巻きという名の友人だ。

「うん、何か?」

「いや、今日のホームルームで委員決めをするんだけどクラス委員を北帝さんにやって貰いたくて、声をかけたんだ。」

言われて私は思い出す。来たよイベント。これは匠ルートに入りかけの時に起こるイベントで匠の好感度を確認できる。そもそもラブ&マネーのラブの部分に好感度を見るパラメータは存在しない。基本プレイヤーは手探り状態で攻略対象の好感度をあげていくのだ。だが要所要所で好感度を見れるイベントがある。その一つがクラス委員決めだ。私は推薦で、ヒロインは立候補でクラス委員決めで一騎打ちをする。この際、得点差が大きく離れてヒロインが勝てば匠の好感度は高い。得点差が小さいと好感度が低い。万が一にも良美が勝つとこれは匠ルートへの突入不可判定となる。因みにクラス委員は男女ペアで行い男子は満場一致で匠になる仕様だ。

「うん、いいよ。」

「わあ、ありがとう。もし、立候補がいて選挙ってなっても私は北帝さんに入れるよ。」

「ありがとう。」

にこりと微笑みを返しておく。このイベントは匠ルート直前に起こる強制イベントだ。別に私に不利益になる事もない。むしろ匠のヒロインへの思いの強さを見たい。そうこうしているうちに匠がクラスに入ってくる。って、あれ?ヒロインどうした?置いてきた?声をかけようとしてふと昨日のやり取りを思い出す。声かけない、視界にも入れないって約束したし。ど、どうしよう。一人でワタワタしてると私の席の前で匠は足を止めた。

「…」

「お、おはよう」

視線を感じ挨拶を交わす。

彼はふいと視線を外し席に着く。

なんやねん。いや、なんでもいいや。この流れで言おう。

「ねぇ。今日も電話したよね。」

「…」

「何か用なの?」

「…生存確認?」

「はい?」

生存確認って何?私そんなに死んでそう?結構図太いよ。性格も体型もな。

「もしかして毎日する気?」

「…」

無言の肯定ってやつか?うん、面倒だけど番号変えよう。

そうこうしてるとヒロイン登場だ。キャラキャラと笑いながらクラスを練り歩き匠の前に来る。

「おはよう!匠君!」

「…はよ」

「今日ってクラス委員決めだよね。匠君やるんでしょ?匠君がやるなら私もやろうかな?」

ちらりと私を見る。

「私推薦されてるんだけど。」

「えっ、じゃあ、投票で決めるのかな?」

「そうなるだろうね。」

「よーし、負けないよっ!」

なんか、小動物が頑張ろうとしているように見える。可愛い。思わず撫でてしまう。

「なっ!?」

顔を赤くしてワタワタするヒロイン。やだ、可愛い。

「こ、こんないじめを…!」

おや?これいじめなのか?可愛がっただけなんだけどな。悪役は何をしてもヒロインに嫌われるのね。そうこうしているうちに先生が入ってきてホームルームが始まる。で、予定通りクラス委員決めが始まり、男子は匠で決定する。そして女子だが。私とヒロインの一騎打ちになる。当たり前のように投票になり開票の結果。


圧倒的得点差で私が勝ちましたとさ。


な、なんだってーーー!!!


いやいやいや!!おかしいだろ!

こんな勝ち方普通ない。これは匠ルートに入ってない勝ち方だ。なんか、知らないところでシナリオ崩壊が起こってるのでは?どこだ?どこで起こった?私は頭を抱えながらゲーム知識と現状を照らし合わせる。少なくてもこのイベントが発生したって事は匠ルートにヒロインは片足突っ込んでいたって事だ。だが、結果がこの勝ち方。途中でルートから降りたって事だが。どこで降りた。降りた先はどこだ?まさか石竜子か?思えば今朝はラブラブ登校イベントも起きてないようだった。今朝の時点で既にヒロインは匠ルートから降りている。じゃあ、昨日何かあったのか?昨日の席替え時点では匠ルートにいた。じゃあ、帰りか。学校終了後何かがあったと考えられる。石竜子は昨日ヒロインと会ったのだろうか?会ったとしたら私がジムで運動している4時間だ。なんも聞いてないけどな。でも昨日は色々あったから全部飛んだか?まあ、報告の義務なんてないけどな。ここまで考えてふと気づく。あれ、私悪役からモブにジョブチェンジできたんじゃね?と。


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