(3)俺と僕と友×4
天文部。それは本来星を観察する部活だ。それだけ、というわけではないが活動内容の大半はそれだ。しかし、時たま天文部部長である風勇が思いつきで何かを始める時があるのだ。そして、それに悪乗りするのが夕陽さんなんだ。そうして、そのまま栄夢、雛さん、俺、と巻き込まれていくのだ。
風勇の思いつきはある時はスパイゲームと名付けられた高度な缶ケリだったり(鬼は二人)、コソドロゲームと言って親分一人と子分四人に分かれて親分が命令したものを持ってこなければならないゲーム(お金を使うことは禁止、更に持ち出すところを誰かに見られてもダメ)だったりするのだ。
そして、今回風勇が考えたゲームとはその名もグラムゲーム。内容は重さを指定して、その重さに出来るだけ近い物を学校内で探すというものだ。今回は割と楽な方だ。走ったりすることもないし、無駄にドキドキすることもない。因みに一番値から遠い物を持ってきた人は全員にハンバーガーを奢るという罰ゲーム付きだ。こういうのは皆がやる気を出してやらないと面白くないから罰ゲームがあるのだ。今回の指定グラムは700グラム。
俺・・・本・・・895グラム。
栄夢・・・地球儀・・・688グラム。
風勇・・・教頭のカツラ・・・701グラム。
雛・・・サッカーボール・・・440グラム。
夕陽・・・700ccの水・・・700グラム。
「わーい、名雪の奢りだね」
そんなことを言ったのは夕陽さんだ。
「ちょっと待て」
自分でも驚くぐらい低い声が出たぞ。夕陽も普段の声と違うのを微妙に違うのを感じとったのか少ーし汗をかいてるようにも見える。
風勇のカツラにもつっこみたいがそれよりつっこまなければならないのは明らかに夕陽だ。計量カップで700cc計って持ってくるのはいかがなものなのだろうか。そんなの700グラムになるに決まってるじゃないか。
「言い訳があるなら言ってみたまえ、夕陽クンっ」
当社比三倍の笑顔で見つめると、夕陽さんの汗の量も三倍になる。
「まぁまぁ、二人とも落ち着け。名雪も男なら素直に負けを認めろ」
俺と夕陽さんの間に入って来たのは風勇だ。
「そうそう、諦めが悪いよ」
栄夢までそんなことを言う始末。俺がとった行動は・・・
「あれっ? 名雪はもういいの?」
突然の選手交代に戸惑う雪。
「「「「(逃げた!?!?!?!?)」」」」
「あっ、雛ちゃーん」
ボフッという音を立てて抱きついた僕。雛ちゃんは頭をナデナデしてくれる。子ども扱いされてるみたいだけど雛ちゃんから見れば僕は子どもだろうから何にも言えないんだよねー。
「と、とりあえずどうしようか?」
栄夢君が困ったようにそう言う。名雪が勝負で負けちゃったんだよねー。僕がやれば勝ってたと思うのになー。風勇君も夕陽ちゃんもどうしようか考えてるみたいだしねー。雛ちゃんはまだナデナデしてくれてるし。
「じゃあ、もう一回しようよー。次は1000匁ねー」
そう言って走り去って行った雪を見送ることしか出来なかったのは栄夢、風勇、夕陽だった。三人は一斉に首を捻る。
「「「1000匁って何グラムよっ?」」」
雛はというと・・・
「(・・・1匁はおよそ3.75グラムだから1000匁は3750グラム・・・)」
博識な雛さんでした。
結果、哀れにも栄夢君が奢ることになったそうです。