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(1)俺と友×2

 桜の花びらが一枚・・・二枚・・・・・・三枚・・・・・・・・・よんまい・・・・・・・・・・・・。






 私立真質まだち高等学校。

 全校生徒およそ600人という私立高にしては比較的少ない人数の学校である。

 その真質高校では入学式も無事終了し、今日から本格的に授業が始まったばかりである。






「はーい、止めてぇ」


 そんな声で今まで机にかじりついて問題を解いていた二年A組の生徒たちは一斉にペンを置く。教室のあちこちからは「無理だぁー」と叫ぶ男子生徒や「ねぇ、どうだった? 私結構自信あるかも」という女子生徒の声で溢れている。

 春休み明けの確認テストというものが今まで行われていたわけだが窓際の一番前の席。すなわち出席番号一番の生徒、青鹿あおが名雪なゆは絶望していた。


「『僕』の馬鹿ぁ」


 この少年名雪は二重人格だ。一人称が『僕』の場合は明るく人懐っこい可愛い系に部類される。そして、一人称が『俺』の場合はクールでスポーツも勉強もそつなくこなすカッコイイ系に部類される。しかし、そんな『俺』は『僕』が起こした不祥事の所為でことごとく苦労している苦労人である。

 そして今回はテスト前までは『僕』が出ていたのだが『僕』には少々退屈だったのか寝てしまっていたのだ。問題を解かぬまま。まぁ、寝ていて気付かなかった俺も悪いんだけどさ。


「名雪」


 そう言いながら俺の肩にポンっと手を置いて哀れみの視線を送ってきているのは由良ゆら栄夢えいむだ。栄夢とは一年の時に同じクラスになってからの仲だ。因みに出会いは可愛いもの好きの『僕』が背が小さい栄夢に抱きついたのが始まりだ。


「やっぱりね。テストが始まって直ぐにゆきが寝たからこうなるような気がしたんだ」


 皆は二重人格だと名前が紛らわしいからという理由で『僕』の方を雪と呼ぶ。俺としては名雪のまま通してくれてもいいんだけど。

 しかし、『僕』よ。問題を解いていないのはかなーり妥協しても名前も書いていないのはどうかと思うぞ。こうなると『僕』の方は最初からやる気なかったな。結局補習か宿題をやるのは俺なんだから。こんなことなら今日は俺が最初から出てれば良かった。表で笑って心で泣いて。


「なんだよなんだよ、お前らしけた面してんじゃねぇよ」


 どこからともなく現れ俺と栄夢の背中をバンバンっと叩いてるこいつは武都むと風勇ふゆう。風勇も栄夢と同じで一年の時に同じクラスになったのが縁で今に至る。因みに風勇との出会いは『僕』が餌付けされたことから始まる。同じ自分としてはいささか情けない気もするが。


「風勇は仲間だよなっ」


 栄夢は頭が良いから聞く気にもならなかったが風勇とは時々補習が被るからな。補習仲間だな。


「半分ぐらいか?」


 疑問系で聞かれても困るし・・・風勇が半分っ。五割っ。二つに一つは正解っ。・・・終わったな。


「まっ、いつものことじゃないか」


「そうそう」


 いつものことで済まされようとしていることが嫌なんだが。こいつらは所詮他人事だと思って。


「「だって他人事じゃないか」」


 見事なシンクロ・・・じゃなくてっ、


「お前らいつの間に読心術を身につけたんだ」


 二人が俺の知らないところで密かに特訓してきたということか。ならば俺の思っていることはこいつらには筒抜け。これからはこいつらの前では下手なことは考えられんな。気をつけねばっ。


「お前また変なこと考えてるだろ」


「そうそう毎回同じことやってたら分かるし、それに・・・」


「それに?」


「「名雪は顔に出やすい」」


 栄夢と風勇はどこかの名探偵が犯人を指差すように俺にビシッと人差し指を向けてそう言った。


「えいっ」


 俺はそんな掛け声とともに二人の手を叩いた。少し強めに叩いたため栄夢が痛がっているがこの際無視だ。


「人に向けて指を指したらダメだと教わらなかったのか。だから最近の子どもは・・・」


 自分の世界に入ってしまった名雪に栄夢、風勇はお手上げ状態。こうなった名雪は喋らすだけ喋らさないと機嫌が急降下してしまうのだ。それにしても自分も最近の子どもだということに気付いていないのはどうなのだろうか。

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