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banananana

 変な夢を見た。俺のペニスがバナナになっているのだ。皮がむけた状態で生えていた。たまたまがあったかどうかはおぼえていない、ペニスがバナナになっていた衝撃が強すぎたのだろう。

(くだらない下ネタかよ。)などとブラウザを「そっとじ」するのはまだ早い、ここからです、ここから。

 バナナは折れやすい、だから夢の中の俺はズボンはおろかパンツを履くこともできなかった。

 だから俺は全裸でアイドルのコンサートに行くことにした。

 確かに唐突だが何もおかしいことはない、夢の中なんてそんなもんだ。自分の部屋の戸をガラガラスライドすると、そこはもうコンサート会場だった。そしてスポットライトの照らす先に一人の女の子がいた。

「良い子の豚野郎どもーーーーー!!!ふぁっきんなーーーーーーーーwwwwwww!!!!!」

 その可愛らしい姿から想像もできないような汚い挨拶をすると、

「ぶひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

 親が聞いたら泣く返事をするホール一杯のファン一同。

 と、足元にうずくまって本当に泣いている老婆がいた。

 「どうかしたんですか!?息子さんが、職に就かずに親の金を使い込んでアイドルのコンサートに来ている糞息子さんがどこかにいるんですか!?俺でよければ代わりに殴り飛ばしてきますよ!」

 老婆の肩に手を置くと、老婆はふるふると震えながら顔を上げる。

そして、両目が合った瞬間

 「ひょげーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」と奇声を上げて襲いかかってきた。全く意味が分からないが夢だから仕方ない。BBAの右拳が腹に突き刺さる。

「ちょっと待って…!!」

 語りかけを無視してBBAの左拳が顔面に入る。

 「ひょげええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 だめだ!!こいつ言葉が通じない!!馬乗りになったBBAを振りほどき、バナナが折れるのではないかという恐怖と闘いながらアリーナの道を走った。走る俺、揺れるバナナ、追いかけてくるBBA。無我夢中で走っていたらいつの間にかステージの上に上がっていた。ステージの上は、アリーナから見るよりもずっと広く、暗かった。

 あわてて振り返るとBBAはいつの間にか消え、安心してステージにへたり込む。心臓の鼓動と呼吸が落ち着き、そしてバナナを確かめる。大丈夫、折れてない。

 「そこの君。」

 やばい

 バナナから顔を上げると、そこにはさっきまで歌っていたアイドルがいた。目と目が合う、再び心臓の鼓動が加速する。恋とかではない、断言できる。半裸の男がステージに上がったとなれば当然イベントは中止である。俺はtwitterに顔をさらされ、警察に捕まり、出所した後にこのアイドルの信者に殺されることだろう。俺はとりあえず、逃げることにした。

 四つん這いの状態から持ち直し右へ左へ死ぬ気で走った。捕まったら本当に殺されるわけなので。どこを走っているかわけも分からず。

 「うぼぁーーー!!!」これは息をついた声である。空中を見上げて大きく開けた口からは涎がだらだら垂れ、体を濡らした。倒れこむ。仰向けに寝転がると限界を迎えた足の筋肉が熱を帯び謎の達成感を得ていた。こんな気分は久方ぶりかもしれない。

 「君ってば!!」

 聞き覚えのある声に体がビクンと反応する。あのアイドルがいた。広く暗いステージ、観客は不気味に静まり返っており、スポットライトは俺とアイドルを照らしていた。そう、元いた場所に帰ってきていたのだ。彼女は膝を抱えてしゃがむと、

 「立てる?」

 アイドルスマイルで話しかけてきた。この必殺技をやられてしまえば童貞はいちころである。 

 「はいー立てますよーはいー」

 顔が熱くなる、極力彼女の顔をみないように立ち上がる。スッと、とかムクッと、ではなくヒョッと。

これは並んでみて分かったことだが、身長は俺よりも高かった。俺の身長は166あるがそれよりも頭一つ大きい。そして胸は俺の頭一つ分はある。近くで見た方が大きいなんて家族旅行で行った東京タワー以来だ。

 「君はさぁーここがどこか分かる?」

 東京タワーアイドルが右人差し指をくるくると回し、左手に持ったマイクを差し出す。

 「えっ…ステージ…?」

 「そういうことじゃなくてぇ、ほらありえないことばっか起こるでしょ?」

 「あっ!夢か!」

 「ピンポンピンポーン!!」

 アイドルの正解コールとともに静寂に包まれていたオーディエンスが一斉に沸く。

 「なんだぁ…夢だったのか…」

 ほっと息をつきうなだれる俺にもう一度マイクが差し出された。

 「でもぉ、いい夢とは限らないよねっ!」

 オーディエンスが再び静まり返る。 

 アイドルが差し出したそれはマイクではなかった。

 

 バナナだった。


 股間を触った、何もない。

 「うそ…だろ…」

 「あれだけ走り回ればもげちゃうよねぇ、」

 ふふふと笑うアイドル。

 「それにしてもこのバナナ臭くて黒くなっててきったないんだぁ、そんなバナナはね。」

 バナナを手にしたまま大きく振りかぶる。

 「何をする……!?」

 嫌な予感が胸をよぎる。

 「こおしちゃえええええええ!!!!」

 「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 オーディエンスのテンションが最高潮に高まり、アリーナに投げ込まれたバナナはどこからともなく現れたBBAにその場で食べられた。しっかり舐めてから食べられた。

 俺は男の命とそれをBBAの口の中に入れられたショックで意識が朦朧としだし、その場に倒れこんだ。

 「くそぉ…おれのBNNがぁ…BBAめぇ……」

 薄れゆく意識の中、アイドルの言葉が聞こえてくる。

 「こおなったのはぁ、必然のようなー偶然のようなー自然のようなー不自然のような!また会おう!!少年!!じゃ、も一曲いっくよぉーーーーー!!!」

 「ぶひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 アイドルの歌とは思えない不自然な旋律とともに、すぅーと意識が無くなり完全に目の前が暗転した。



 ポコポコポコポコンポコポコポコポコン、シロフォンの音がする。携帯の目覚ましだ。

 バッと勢いよく布団をめくる、シロフォンの音が焦らせる。ズボンを脱ぎ、パンツを脱ぐ。

 「ある!!」

 目の前に広がる風景もいつもの自宅である。汗だくの体を再び布団に落とし、ようやく目覚ましを止めると。ベッドの下に隠されたアダルト雑誌に手を伸ばし所謂「朝抜き」の体制に入った。

 と、いつもと何か違うことに気付く。パラパラと雑誌をめくってもmyバナーナが反応しない。

 (ん?俺も目が肥えたかな)などと間違った大人の階段の登り方に多少の愉悦を感じつつ、さらなる快楽を求め携帯スマホをつける。ブックマークに登録した極上のお宝動画を鑑賞。…反応なし。むしろグロテスクなものを見て気分が悪い気がする。

 (んん???)最後の手段として買い置きしておいた大人のおもちゃに手を出す。ちなみにこれは部屋に堂々と置いてある。知識浅はかな身内が見ても、その洗練されたデザインからインテリアとして認識されるのだ。この蓋をはずし、一度ミサイルの弾頭を吸い付ければあっという間にカチンコチンコになる…はず……。反応なし………。二刀流を試す。反応なし………。

 うそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうさsどうづそうあうsづおdうしだおあsどうそあづおおいそあdkdっさdsじょいいpjhふぉいすぬいs

 いやーな汗が垂れる。

 もしかして俺…

 

 「性欲がなくなったのか?」


 力なく天を仰ぐ

 その背中は、いや、股間は、

 これからの人生に対する絶望に満ちていた。

先にも後にも分からねえ

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