五十三話
「行かせる訳にはいかん!」
対峙した勇者コスモは此方をターゲットにしたようです。
丁度いいのでハンドサインを出して、前衛五人に後ろに回らせます。
あとは、ぐるりと首を回して周囲を確認。
ふむ…2、3、4
「クラッド、城の案内を頼みます」
「はい、隊長」
指を地面に向けて魔法を使う。一度土の魔術で地面を砕いたほうが良いかと思ったが、石畳が適度にもろくなってあちこち土が見えているので空圧の魔術だけで良さそうだ。
魔術で巻き上げた土煙が一瞬で辺りを覆う。
目を閉じながら先ほど確認した位置へ速射、弾頭は小さめで散弾で。
命中は確認しないまま、クラッドの手を取り勇者の横を駆け抜け、最短ルート…というよりただ真直ぐに王城を目指した。
◆
「隊長、本当に魔王がここに居るのでしょうか」
城に入ってから少し警戒しつつ進んでいると、クラッドが心配そうな声をかけてきた。
「どういうこと?」
「戦闘の跡は見えるのですが…少々静かすぎます」
我々を分断させるのが目的では…と感じたようです。
それには及びません。
「私達を分断、という意味なら既に達成されていると思いますよ。切り込み隊の分断という意味ではなく王国軍としての分断という意味でね。帝国領に入ってからこっち大した戦闘もなく帝都までたどり着けたでしょ。散発的な戦闘と監視はあったけど私達を足止めする気もなかった。恐らく私達を引き離して王都を襲う予定なんでしょう。今頃フィン王国は魔物と神聖王国と戦っているんじゃないかしら」
「そ、そんな!」
だから途中で戻ることも視野には入れてましたが、そうするとジリ貧なんですよね。
勝つならここで魔王の首を取るくらいしか手立てがありません。
私としては、髪飾りさえ取り戻せばどっちでも良かったのですが、目的が一致したので協力したまでです。
「私達で勝てるのでしょうか」
「私で…かな。案内が終わったら彼方は下がりなさい。場合にもよるけど…足手まといになるわ」
「そう、ですね。力及ばずに隊長…いや、ロカのような少女に任せるのは大人として情けないことこの上ないが、頼む。さ、ここだ」
城に入って一度も戦闘することなく王の間へたどり着いてしまいました。
荘厳な装飾が施された両開きの扉、本来なら近衛の一人でも居そうなものですが、そこには誰も居ません。
見ていても仕方有りませんから、静かに扉を開きます。
――ギギィ――
「ようこそ、王国の勇者よ。そして誇るが」
――ぱたん――
静かに扉を閉めました。
「…」
「いや、閉めてどうするんですか」
「や、だってさ」
あの勇者め、適当言いやがって。
魔王一人しか居ないじゃないか。




