四十九話
本来であればカイリーアさんの護衛を勤めているだけのはずが、何を間違ったか反攻作戦の切り込み隊長ですよ。
原因はわかってます。例の勇者もてこずるコボルト相手に打ち合いを演じてしまいましたからね。
即戦力と見られたようです。
もちろん断ろうと思いましたが、傭兵団の副団長でもあるカイリーアさん直々の推薦をもらってしまいまして、断れなくなってしまいました。
代わりといってはなんですが、お腹の子供に何かあっても困るので王都に下がってもらい、場合によってはアルメッテに逃げるように言ってあります。
まあ…
切り込み隊長かどうかは別として、魔王軍に一番に攻め入ることができるのは私にとって願っても無いことです。
あのコボルトを真っ先に屠れるということですからね。
どこに居るかは知りませんが、魔王の首取ってやればいくらなんでも出て来るでしょう。
逸る気持ちを抑えて、旅装に着替えて武器を確認。
町で拾った薪割り斧を背中に背負い、狩猟道具屋で解体用のナイフを数本買って腰に下げ、山の急な斜面に上るときに使うらしい小さなツルハシのようなもの右手に持って準備完了。
一足先に国境へ向かう事にしました。
◆
「ここから見ても魔物は見当たらない。前線はかなり後方にあるんだろう」
国境の壊れた塀の上に立ってフェリクスと帝国本土を眺めます。
切り込み隊には彼女も志願していたようですが、まだ正規軍人ではなかったために治安維持にまわされたそうです。
どちらかといえば、公爵がフェリクスを失うのを嫌がった気がしますが。
なんせ、この反攻戦の参加者全員、遺書を書くことが義務付けられましたし。
全滅前提で賭けのつもりみたいですね。死ぬ気はありませんが。
「神聖王国側のほうが厄介だ。既に前線から軍の集結が確認できているらしい」
でも攻めてきてないと。一ヶ月立ったのに。
最近の状況に考えを改めたのですが、神聖王国って国境に兵を置いていれば自主的には動かないと思いますよ。
それどころか魔王軍が劣勢になったら魔王軍に攻め入るんじゃないかな。
だから、あちら側はそう気にする必要ありません。
「むしろ…魔王軍のほうが予想より面倒そうですね」
帝国側国境の何も無い所に速射をすると、青緑の血しぶきが上がって何体かのトカゲが倒れた。
にがすっぱそうだな。あのトカゲ。
「ど、何処に居た?私の目には何も見えなかったぞ?」
「見えないように擬態してこちらを探っているみたい。前線は遠くても偵察は行っているところを見ると、帝都にいるっていう情報もあながちバカにできないかな」
見える範囲に速射を食らわせ続けて、8体目が倒れたあたりでトカゲは逃げ出した。
「とりあえず帝都を目指しましょう。魔王が居るなら第一の目標には丁度いいでしょう」
第二の目標は魔王の首。
第三の目標はあのコボルトの首。
最初の反攻作戦、フィン王国軍のお披露目だ。
諸君、派手に行こう。




