四十六話
体中に貴金属っぽいアクセサリをつけた二足で立つ狼。
毛糸の帽子のようなもので耳が隠れて見えませんが顔は明らかにコボルト。
カイリーアさんに目を向けると彼女も驚いたようだが頷き返してくれる。
「こ、コスモはどこ…」
「あ~シラネえよ。今頃喰われてるカモしらねえけど、俺が張っ倒した時は動いてたゼ」
でも、実にどうでもよさそうに答えるコボルトの姿に違和感を覚える。
なんというか、コボルトなのに殺る気がない。
私の知るコボルトは強者には好意を持って戦いで示し、弱者には見向きもしない人達です。
森のコボルトではない?
「ヨーコは下がって」
ランドルト様がヨーコの前に出る。
剣を腰を少し捻るようにしながら肩に担いで臨戦態勢です。
「何者かは知らんが、たった一人の魔族が生きて帰れると思うな」
「ハっ 弱い奴等が粋がってんジャネエ。こっちはパシリやらされてムカついてんだ。アソンデやるから全員でかかってコイよ」
「ヨーコ、出来そうであればシンイチを起こして援護を………ハァッ!」
剣を肩に担いだまま一気にコボルトに近寄り振り下ろします。片手で剣を扱っているために首と腰で力を与えているみたいですね。
左手無いとバランス悪くて大変だろうになんで剣使ってるんだろう。
コボルトはランドルト様に任せてカイリーアさんを少し下がらせましょう。
『ところで、カイリーアさん。森の外に出た人っていました?』
『聞いたことないけど…でもあの尾の二本筋はラインハートかオルレアに見えるわ』
私には見分けつきませんがカイリーアさんはさすがにわかるようです。
ラインハートかオルレア。カイリーアさんがオルレアで知らない事はないでしょうから、消去法でラインハートか。
その割には戦い方に洗練さがありません。力任せというか。
ラインハートの戦闘方法は流れるような連続攻撃にあります。一対多でも一対一でも対応可能な厄介な技の使い手ですが、それっぽさがぜんぜんありません。
単純に手数でランドルト様を押しているだけですね。
『ロカ、ランドルトに加勢してよ。あなたなら戦えるでしょ』
『カイリーアさんを守る事が今の仕事ですよ』
とかやってたらこっちに吹っ飛ばされてきました。
当たると危ないですから受け止めてあげましょう。
足で。
「ぐはぁっ!」
「あ」
軽く受け止めるはずが目測を誤り、カウンター気味に蹴りが決まりました。
カイリーアさんからの目が痛いです。
判りましたよ、代わりに私が戦いますかーー。
「らっ!ランドルト様を連れて下がってもっらっえっまっすっだか」
「ハっハっハー 今度はオマエか、イカした飾りのネエちゃんよ」
戦うのには向かない武器しか持ってませんので、左手にナイフだけ持って襲いくるコボルトの爪を弾いていなします。
攻撃が単純ですね。駄々っ子が腕を振るっているだけのようです。
しばらくは相手をしてましたが、もういいか。
横なぎの爪にそのまま加速を加えてあげると、コボルトがバランスを崩しました。
「うおっとっと」
転ばないように無理な体勢で耐えたコボルトの目の前に腕を突き出し、思いっきり手を叩いた。
ーパンー
一瞬コボルトの動きが全て止まる。
その隙にずっと後ろにいた黒いのに向けて合図を出し、私はその場に大の字になって伏せた。




