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四十五話


「ヨーコ、無事でよかった。シンイチは…眠っているのか?」


ランドルト様がもこちらに来たようです。

そういえば、勇者と面識あったんですよね。ヨーコ以外はどうでもいいって言ってた気がしますけど。


「コスモがいないようだが…いや、そもそも何があった?」

「…敵にすごく強いのがいて、3人で戦ったのに負けたわ。コスモはそいつを抑えて…わ、私達に逃げろって…ひっ…シンイチが私を連れて……」

「そうか、がんばったな」


ヨーコが途中から泣き始めてしまったので何を言っているのか判りませんが、まあ情報通りの事があったようです。

しかし、わかりません。いくら勇者の力が強くてそれを突破口としていたとしても、そこを抑えられたからといって進軍が止まるでしょうか。

止まったところで伸びた戦列の横合いを神聖王国が突っついたと。

でも包囲することできませんよね、いくら神聖王国とはいえ魔王軍と当たると戦闘に…

………


「なるほどなー」

「ロカ?」


”ディーパ教の聖なる力は弱い魔物を遠ざける”

魔王軍の前衛って殆どその一山いくらな魔物なんでしょうね。

勇者一行と帝国軍の進軍が簡単だったのは勇者達が強いから、ではなくて敵が弱いからだったのでは?

で、後衛の強い魔王軍本隊と当たって進軍が止まった。

そこを神聖王国軍が攻めてくるわけですが、神聖王国の力があれば前衛の魔王軍と戦闘が発生しませんから、協力しなくても共闘できるわけか。


「って感じでねか?予想でしかないだが」

「…確かに、前衛は知能の低い魔物で構成されていた。襲われた町が軒並み壊滅しているのも、そいつらが見境無いせいだろう」

「一山いくらのほうが被害が大きいんだったか」


それから神聖王国がどう動いたのかは分からないですが、攻め入った帝国兵は見境無い魔物の中で半分包囲されたような状態ですね。

捕虜なんて取りそうにないし、勇者共々全滅かな。


「しかし、ヨーコ達だって決して弱くないぞ。帝国騎士やフィン王国の兵とは比べ物にならないくらい強い。そんな3人を抑えられる並大抵ではない魔物がいるのも確かだろう」

「一匹くらいならいいだが、後衛が全部そんなだったらどうするべ」


人類ピンチですよ。



「そんなわきゃねーだろ!サイキョウは俺様ヒトリだけだ」


へ、誰?

帝国兵の中から此方に向かってくる人がいます。

マントかローブに隠れて顔が見えません。

先ほどの声は彼からでしょう。ところどころイントネーションに聞き覚えがあるのですが。


「よーう、ニゲ足は速い勇者のガキ共。テマ取らせやがって」

「な、なんで…コスモが抑えていたはずなのに!」


あ、彼がすごく強い魔族さんですか。

…普通に考えて3人で勝てなかったものが、1人で勝てるはずないでしょうに。


「勇者をオサエロって言われたのにニゲやがるから、こんなところマデ追いかけて来るはめになったじゃねえカ。勇者共をカタヅけたら、気晴らしに皆殺しにしてやるよ」


そう言いつつ、マントを捨てた彼の姿は…



森で見慣れたコボルトだった。

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