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四十四話

 至近距離から粘土弾を耳の上あたりに喰らわせると、黒いのは静かになった。

 フェリクスには自分の仕事に向かってもらい、変わった服のヨーコには私が確認することがある。


「ヨーコ?だったか。カイリーアさんのことで聞きたいことがあるだが」

「…」


 ヨーコはカイリーアさんの後ろに隠れながらこちら睨んでますが、どうみても警戒されてますね。

 間抜けとはいえ仲間の勇者を二回も張っ倒してしまったので当然かもしれませんが、仲良くする必要もありませんから、聞きたいことだけ聞いてしまおう。


「ヨーコ、ロカは粗野で粗暴なところはあるけど私の妹のような存在で、悪い子じゃないわ。噛み付かないから話を聞いてあげて」


 ありがとう、カイリーアさん。

 私の認識について後で少しお話しがあります。


「妹…えっ?女?」


 そっちに反応するか。

 うぬ等まとめて説教じゃ。


               ◆


「ぶっちゃげると、カイリーアさんば元に戻せるかってことだべ」

「え?獣の姿だと…その、交…尾できないから人間にしたのに、戻してもいいの?」


 コービとはなんなのか聞きたいところですが、そうではありません。

 子供が生まれた後に元に戻せるか聞きたいのです。

 人間のまま森に帰るのはいろいろマズイので。


「戻すだけなら問題なくできると思う。ただ、産まれる頃まで私達がここにいるかわからないわよ」

「どいういうこったべ」

「魔王を倒すと私達は元の世界に戻るのよ。だから…」


 なるほど。約一年後までこの世界にいるかわからないってことか。

 それで色々おかしな点がわかってきましたが、更に聞きたい事も増えましたよ。


「魔王の元まで行けなかっただが、それで帰れるだか?」

「…だからこうして王国に協力してもらいにきたのよ」

「協力はともかく、魔王に勝ったとして、帰れるんだか?というか、どうやって帰るんだべ?」

「え?」

「帰る方法って誰が知ってるだ?」


 そもそも召喚方法を知ってたことが気になるんですが、おいときます。

 順当に考えるなら召喚した人が召還する方法も知ってそうなものですが、知っているとできるは違うと思うのです。

 それに、そう簡単に行ったり来たりできるのでしょうか。

 行きが出来ても帰りはダメとかあるかもしれないですしね。私は簡単に滝から落ちて山を下りましたけど、滝を登るのは至難なんですよ。


「私達を召喚したカトゥー公爵だけど…」

「その人はどこに?」

「…戦場に出てないから領地にいると思う」


 今頃領地に”いた”になっているかもしれません。

 それにしても、自分は戦わずに攫ってきた勇者にまかせるとか、ロクデモナイ人にしか思えないのですが、なんでそんな人の下で戦おうと思えるのかな?


「魔法っちゅう無制限の力を行使できるんだば、そんで泣くまで公爵を殴り続ければ、とっとと帰れたんでないか?」

「そんな酷いことできないわよっ!」


 無理やり攫ってきた人を脅迫して無茶な仕事させるのは酷いことじゃないのだろうか。

 …この勇者達、もし魔王倒せてたりしたら帰る事を条件に、今度は王国か神聖王国への尖兵になってたような気がする。どこそこに帰る手立てがあるとか言いくるめられて。



 …うん。

 彼等はたぶん魔王倒したところで帰れないな。これ。

 カイリーアさんには安心して子供生んでもらおう。

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