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四十三話

 帝国兵に混じって魔王がいたようです。

 しかし、間抜けですね。大声で名乗りを上げるとは、いい的です。

 体に二発、頭に一発しかと命中しました。


「ひ、ひたい…にゃりをふるんは…」


 む、生きている。

 周りの兵士に当たってもいいように、粉塵弾だったので威力が弱かったのでしょう。

 間抜けでも魔王か。なればここは鋼芯弾を…


「ロカ!ストップ!ステイ、ステイ!」

「カイリーアさんは私の後ろに、あの魔王はここで仕留めるだ」

「違う!あれは勇者の一人よ!仕留めちゃダメ!」


 は?

 あれが勇者?

 そういや先ほど勇者として召喚がうんたら言ってたような。召喚前が魔王だったってことですか。

 隣にいた変わった服の方が、爆発と同じような奇妙な魔術…いえ、魔法で回復させています。

 あれも勇者か。話では3人いたと思いますが、黒いの、変わったのの二人しかそれらしいのが見当たりません。


「一人足りないだな。死んだんだべか」

「コスモがいないわね。ヨーコ、こっちよ」


 カイリーアさんが変わった服の方に呼びかけると、黒いのを引っ張るようにこちらにに来ました。

 …そこそこダメージ与えたはずなのに回復魔法とやらは即効性があるのようです。


「ヨーコ、大変だったようだけど無事で逃げてこれてよかったわ。シンイチも変わりないわね。…コスモが見当たらないようだけど」

「………彼は逃げる時に、魔物の強い奴を止めるのに残って…それで…」

「そう…」


 この変わった服の女性がヨーコというカイリーアさんを変化させた魔法を使う人らしいですね。

 黒いのがシンイチ。


「逃げて来たはいいだが、王国にケンカ売ってきたのはなんでだべ。あんなでかい穴あけられたら壁が役に立たんだよ」

「難民や兵士が入るのにあんな小さな扉じゃ埒が明かん。壁を破壊して道を作ったほうが避難がスムーズになるだろう」

「バカか貴様」


 キリっと黒いのが自論を言ったところで、フェリクスさんはキレたようです。

 そりゃそうですよね。

 穴からは避難した人も兵もどんどん入ってきてます。スムーズどころか決壊しそうですよ。

 それに彼等は我々の国の人ではありませんし、そんな彼等にこれから魔王軍と戦う場合の重要な防衛点を破壊されてはキレもします。


「勇者だかなんだか知らんが、貴様等は自分が逃げるためになら、我々の王国を危機に晒すつもりか!」

「に、逃げるわけではない。今までは帝国が抑えていたが、二方面相手では分が悪いので撤退し王国と共闘を…と、それにこのような人間の危機に国の垣根は必要ないだろう!」


 意識的には必要ないが、物理的には必要ですよ。


「黙れ!敗者が調子の良いことを!最初に協力を拒み、傭兵まで帰して負けたのは帝国のほうだろうが!国王陛下の温情が無ければ全員なで斬りにしているところだ」


 更に燃え上がり、黒いのの首を掴んでガクガク揺するフェリクスさん。

 黒いのも黙ってればいいのに、あれこれそれらしい言い訳を捏ねては火に油を注ぎ続けています。



 …饒舌なフェリクスさんを見ていたいという気がしないでもないですが、そんな場合じゃないと思うんで…黒いの、少し寝てくれ。


居ない勇者の名前は光王子とか書くタイプです

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