三十八話
集結地に近づいたせいか、すれ違う馬車が増えて来ました。
皆さんバラバラな装備をしていますがいかにも戦闘を生業にしている感じの人だらけです。
「すれ違う中に混ざってたらお笑いだべ」
「結構な大所帯のはずだからそんなことは無いと思うが。それより聞いていいか?」
なんですかいきなり。スリーサイズは教えませんよ。
「んなもんはどうでもいい。隻腕のアインの事なんだが…いきなり行方不明になったってわけじゃないんだろう。なんで町を出てったんだ?」
心が張り裂けそうです。
…ランドルト様の出てった理由ですか、言っていいのかな。本人に聞いてもらいたいんだけど。
「あー…詳しい事は本人に聞いてほしいだが、噂で”恋人の呪いを解くために旅をしている”ってあったべ?半分正解で呪いつーか、病気を治すためだべ。神聖王国に行ったのはその辺だと思うだが」
そうなると、帝国に足を伸ばした理由がわからないんですよね。
コボルトと子供を作る方法の手がかりが帝国にあったとか。
魔王領に接してるからありえなくないのかな。
「恋人ってのは今も町に居るのか」
「動けない病気でないだ、一緒にいるはず…」
…
一緒に…他人に姿を見せずに一緒に…傭兵団は結構な大所帯で…
果たしてそんな事が可能なのでしょうか。
◆
ジョエルさんがアイン傭兵団がどこに居るかか聞きに行ってたのですが、人を連れて帰ってきました。
「アイン傭兵団の団員だと。訳を話したら連れて行ってくれるってよ」
「アイン団長の同郷の友人ってあんたか?あ、俺はケニスって言うんだ」
「ロカだ。ラン…アインは元気だか?恋人と仲良くやってるべか」
ちゃんと一緒に居ますよね?
「副長の事か。それがどうも身篭ったらしくて、戦場よりそっちのほうが大変だったよ。なんせ男所帯なもんだからさー何をしていいやら判らなくて全員右往左往してたんだぜ」
…反応に困った私を許して欲しい。
ちゃんと居て良かったと喜ぶべきか、出来たのかよと驚くべきか。
何にせよ恐らくコボルトの女性初の人間の子供です。ここは喜びましょう。
それにしてもカイリーアさんが副長か。ランドルト様が隊長でその恋人だからなんだろうか。
いや、コボルトの女性だから私など足元に及ばない危険察知ができたはず。
仲間に一人いると心強そうだ。
「あそこだ。ああ、団長がいる。おーい、アイン団長!故郷の友人が訪ねて来てるぜ」
ケニスさんが声をかけた一団に此方を見る二人がいる。
ダークブラウンの短く刈った髪にヒスイ色の目をした男性。服の左袖が風に揺れている。
そしてその男性の右腕に寄りかかる女性。
銀の髪に浅黒い肌をした女性。
気温が高めの季節なのに厚いローブを着た女性。
お腹に手を当てて幸せそうな顔をしている女性。
人間の女性
『だれですかそのひとは-----




