三十五話
休日明けの訓練日なのですが今日は少し違いました。
人が少ないのです。
ボッシュさんもフェリクスさんも居ません。
「貴族連中が居ないって感じだな」
「いや、教官達も居なかったぞ。なんかあったのか」
「王国府から召集がかかっているという話しは聞いた。予備役は居るようだが隊長達は原隊に戻っているらしい」
十中八九昨日の件でしょうね。
対策か…案外此方から攻め込むとか。
ランディは何か知ってるかな?
「…」
「返事がないべ。唯の屍のようだが」
どうも昨日走らされていたところ、途中から教官が居なくなり気絶するまで止められなかったとか。
恐らくその段階で戦争の情報が入って召集されたのでしょうね。
結局講義は無いまま今日は寮で待機となってしまいました。
ランディは助かったといったような顔してましたが、私は暇なんですよね。
外にも出れませんからいつも通りに走ろうと庭に出たところ
「あんれ?隊長?」
「ロカか。どうした、待機任務中のはずだが」
「外さに出なければいいって聞いたで、走りに来ただが。…隊長が戻って来たってことは詳しい事判ったんだべか」
「おまえは何か知っているのか?」
「何があったかは昨日知っただ。どうしてそうなったかは知らんで」
「…すぐに全員を呼ぶ。だから部屋で大人しくしていろ」
◆
あの後にまた全員教練棟に呼び出されました。
言われたのは昨日ジョイルさんに言われた通りの事です。
つまり魔王軍と戦った帝国の敗戦について。敗因もわかったようです。
ぶっちゃげると昨日の噂は殆ど正解だったわけで
『勇者の力を使い魔王軍を一点突破していたところ、その勇者達と比肩しうる魔族によって進軍を止められ、その伸びた軍の側面を神聖王国に突かれた。神聖王国は国境の帝国貴族の裏切りにより帝国内に進入していた』
ということらしいです。
神聖王国ですか…ランドルト様がそこ経由で帝国へ入ったというのは聞いてますけど、そもそも私は神聖王国という国もよく知りません。
ここはランディ先生に聞いてみましょう。
「神聖王国ってのは正確にはディーパ神聖王国ってな、500年前に魔王を封印した聖人ディーパを崇める国家だ。表通りの大きな教会あるだろ。あれがディーパ教の教会だよ」
「更に加えるならディーパ教徒は帝国と神聖王国に大半が居て、フィンには少ない。魔王の居る土地と国家が接しているせいだとも言われているな。今回はそれが仇となったか」
補足ありがとうコリン。
これでジョイルさんの言っていた次は王国かもしれない、が確実となりましたね。
しかし、ディーパ教…ディーパ?
「静かに!続けるぞ。我が国王陛下はこれを国家の大事と案じ、非常召集を発令。我が国はこれより戦時体制へと移行する。同時にディーパ神聖王国とは国交を断絶、ルダ帝国の救援に向かうこととする。ルダ帝国とは前戦争よりの因縁があるが、魔王という人類の敵に対し国家という枠組みも今は忘れ今は協力する時であると申された」
前戦争の因縁は私にはありませんから別に気になりません。救援するも協力するも従います。
そして神聖王国は人類の枠組みから外れたようです。
まあ…魔族とか魔物とか私も好きになれませんから、それに協力するなら敵認定されるのも仕方ありませんよね。
「諸君等は新兵にも足らない未熟者であるが、軍属の身である以上国軍の指示に従ってもらうことになる。その事を頭に入れて時がくるまでここで訓練に励むように。以上」
やることは変わりませんが場合によっては、ということらしいです。
一応軍属ですからね。
はて?何かひっかかるものがあるのですが何故でしょうか。




