三十四話
「こんちはー」
今日もまたジョイルさんの店に来ました。
あ、ランディは昨日朝遅刻したために罰として今も走ってるので私一人です。
それはともかく人のいる気配がありません。鍵が開いているのに無用心ですね。
「しばらく留守番でもしてあげ…帰って来ただな」
裏口ではなく表のドアを開けて帰って来たのはパシェさんでした。
私が居るのに気がつくと表情を明るくしましたが、入ってきた時は困惑というか不安そうな表情をしておりました。
「ロカちゃん、来てたんだ?
「…なにかあったべか?」
「え?あ…うん。お父さんが帰ってこないとなんとも言えないけどね」
パシェさんはお茶を入れてくれると隣に座って私を抱きしめました。何が不安なのでしょうか。
今はなにも聞かずに頭を撫でてあげましょう。
◆
「パシェール!っと嬢ちゃん来てたのか」
「おかえり。パシェさんは寝てるべ」
「そうか…何があったかは聞いてるか?」
だまって首を振ります。パシェさんからはジョイルさんから話しを聞くようなことを言ってましたから何も聞きませんでした。
撫でてたら寝てしまいましたしね。
「で、何があっただ?」
「明日には知れる事だろうし、嬢ちゃんは軍に関わるから話していいだろう」
ジョイルさんは寝ているパシェさんの頭を撫でながら、少し考え込んでいましたが言葉を選ぶように話し始めました。
「帝国が負けた。魔王軍との戦争で負けたそうだ」
「なして?こないだは化けもんみたいな3人を入れた戦争するだとか言ってたべ」
「その一大反攻作戦で大敗をしたそうだ。それは確実らしいんだが、それ以上がわからん。情報が交錯しててな」
やれ、帝国に裏切り者が居ただの。
やれ、魔王にも勇者が現れただの。
やれ、神聖王国に攻められただの。
やれ、魔王が大魔術を使っただの。
どれも本当か嘘かわからないそうです。
はーそりゃたいへんですね。
「嬢ちゃんえらい落ち着いてるな」
「私には関係ないだよ。むしろランドルト様が見っかりやすくなんでねか?」
「帝国の次はうちの王国かもしれないってのが判ってないのか?」
「そんときはそんときだべ。ここで戦うだかアルメッテ様んとこで戦うだけだべな」
「…最近の娘ってのはわからん」
あなたの最近の娘はその最近の娘を抱きしめて眠ってますけどね。
しかし、戦争ですか。
情報が無いのではどうなるかわかりませんが…こちらに火の粉が来るのであれば戻ったほうが良さそうですよね。
死ぬなら皆と一緒に前のめりで。それが幸せってもんでしょうから。
どちらにせよ私にとって重要なのはただ一つだけ。
ランドルト様どうなったんでしょうか。




