三十三話
あの後侯爵様からは今回の件について口止めされましたが、ボッシュさん等への罰については私にやってもらいたいと言われました。
侯爵から直接罰を与えると面倒だから私が罰を与えて有耶無耶にしてくれという声が聞こえないこともないですが…まあいいでしょう。
でもなー…
「殺しちゃダメだか?」
首を切る仕草をすると侯爵は引きつりボッシュさんは怯えた。
まあランディが言うには彼等は此方を殺す気が無かった…というか普段からあちこちに家の名前で因縁をつけて悦に入っていただけのようで。引き際を間違ったというか私が引き下がらなかったのでむこうも引けなくなっただけらしいです。
そう考えると私に原因が無いともいいきれないような。初見で殲滅していればこうはならなかったでしょうから。
んー
「じゃあ…この講義に通わせ続けるってのはどうだべ?」
「それで罰となるかな?」
「ならなければなるようにするだけだ」
あれだけ大勢の前で恥かいたら大人しくするしかないでしょ。
ね? と彼等に指を向けて”バン”と悪戯に言ってみると、三人はしめやかに失神した。
◆
そんな感じで訓練やらは順調なのですが、ランドルト様探しがあれから進展ありません。
戦争中の帝国の情報がわからないのは当然かもしれませんが、焦れますね。
「神聖王国経由だとどうしても時間がかかるからな。見つけたとしても入れ違いになってたりするかもしれん。それに戦争に参加していたら、な」
「死んでたらそれなりの証拠が欲しいだな」
「…俺から振っといてなんだが随分ドライだな。それとも心配してないだけか?」
「連れて帰れと言われたが生死については言われてなかっただ」
心配もしてませんけど。
ここは”鍋つかみの目薬”です。やることもない私は休みになるたびにここに来てジョイルさんとカード等に勤しんでおります。
ランディが来たがるから一緒に付いて来ているともいえますがね。
「で、その戦争ってどうなってるだ?一般で知られてる程度なら知ってるだが」
「その情報だってタダじゃねえんだが…嬢ちゃんならいいか」
カードの負けから払ってください。
「ええと、新年の辺りだと押され気味だったんだが帝国がうちらの国境沿い他から兵をかき集めて応戦。これで膠着状態となったんだが、さらに決定的な戦果を上げるために召喚された異世界からの勇者3人を投入した…とこんなところだ。因みに傭兵については後方支援や撤退支援が主な任務らしい」
「勇者ってなんだべ?」
「勇者は勇者だろ。物語に出て来るような奴じゃねえのか?」
人攫いならぬ姫攫いの事ですよね。
大抵は理由無く力を振るうのを否定して、更に強大な力で捻じ伏せる人の物語です。
物語を聞かせてくれたエリシアさんに言わせると、悲劇の美姫とそれを守るカッコイイ勇者に感動する話しだったらしいですが、生憎私の勇者様は毛深い上に私は守られるだけの足手まといは嫌なんで。
それはともかく、戦争に3人投入して決定的な戦果となると化け物のような人なんでしょうね。剣の一振りで100人以上殺せるとか単発魔術のみで80万人以上殺すとか。
「案外早く終わるのかもな。そうすればアイン探すのだって楽になる。来年の春にはリサのパインサラダにありつけそうだ」
「なんだべ…今寒気が…」
この時私が何を予感したのかは覚えてないが…。
崩壊は思いのほか早かったのである。




