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挿話 ある少女の邂逅・前

 私の義父は私の父だ。


 昔公爵家の別荘にてメイドをしていた母は、父と恋仲となり私を身篭った。

 父はまだ公爵を継ぐ前であり、さらに結婚前で平民との間に子を設けた事は十分な醜聞となる。自身と私の命の危険を感じた母は、暇を願い公爵家より距離を置いた。


 7年の月日が経ち、苦労を重ねた母は流行り病に倒れ、そのまま帰らぬ人となった。

 悲しむ間もなく、その日の夜に尋ねてきた何者かによって馬車に押し込められた私は、人知れず連れ去られ父の元へと連れて行かれた。


 そこで父と会い。私に父が居ることを初めて知ったのだった。

 すでに公爵となっていた父は私を養子にすると言い、血の繋がりのない子として育てられることになる。

 侯爵家に養子とくれば問題も出そうだが、既に正妻に3人の男子がいた上に最初から継承と関係のない者として育てられたため特に咎める者もなく。むしろ、3人の子に姉のように懐かれる結果となった。


               ◆


「…クス…フェリクス」

「は、はい?なんでしょうリリア様」

「もう、やっぱり疲れているのでしょう。今は何の時間だったのかしら?」

「あ…ごめん、リリア」


 そして今は第三王女であるリリアーヌ様の友人兼護衛となっている。

 ベルンハルト公爵家は王家との繋がりが強いようで、たまにやってくる王女や王妃等も自然と知る中となってしまった。

 その中でも一番年齢の近いリリアーヌ様とは親友と呼べる仲だ。


「確かにハーケン隊長の訓練は厳しいって聞いていたけど、今はまだ走っているだけで…そこまで疲れたりは」

「そうならいいけど…周りが男だらけの仲で一人女なんだから、身体が疲れてなくても気持ちが疲れることもあるのよ」


 そうなるとベルンハルトでありながらベルンハルトではない(とされている)私の事が気に入らない連中もいるわけで、ずいぶん煙たがられた。

 私を排除しつつリリアーヌ様を狙う愚か者達から有形無形の嫌がらせを受け、それを排除してきた。

 できた渾名が王女の盾である。実際は虫除けに近いが。


「女王近衛隊なんて偉そうな名前ついてても、結局貴族のボンボンが箔付けに入る騎士隊なんだから」

「リリア…一応リリア達の身辺を護るための部隊なんだからそういう言い方は」


 一度直接的にリリアーヌを狙った者がいた。

 幸いにも私が公爵家で義弟にまじり教育や訓練を受けていたために食い止めることができたが、逆にこの件で愚か者達は調子づいた。


『素人が王女の護衛を勤めるのは問題である。専門の部隊設置を』


 事実、私は公爵家に居て王女の友人でもあったが一切においてただの素人の娘でもある。

 こうして多くの貴族からの進言で女王近衛隊(プリンセスガード)が設置と相成った。

 貴族共からすれば王女にお近づきになれる近衛の設置は歓迎できるものであったようだ。試験導入第一期に応募された全員、貴族の子であった。

 教育する者も侯爵の息のかかったものであり、構成人員からしてまともな組織になりそうにないと踏んだ王国府は、半数に近衛や騎士爵の子をねじ込み教育者を第一軍の教導隊から派遣した。

 その結果現在の妙なプリンセスガード一期生ができたのだ。


「おじ様もおじ様よ。義理の娘をそんな巣窟に入れて平気なのかしら」

「だが、これで私も素人呼ばわりされることがなくなる。リリアの側に居て文句を言う奴だっていなくなるだろう」

「どーだか」



 そして、”性別を限定していなかった”という募集要項の不備を突き私がその一員になったのだった。

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