二話
「…になるはずだったんだけどなあ」
仕事も終わって、櫓のハシゴを降りて首をコキコキと鳴らし、っかーやれやれ飯食って寝るかーとか思っていたところで、領主様の奥様であるところのロザリー様に首根っこ捕まれて連行された。
三行くらいでまとめれたかな。
「さっきから何をぶつぶつ言っておる」
ちゃぷん と。
浴槽に背を預けて、ぶどう酒をお召上がりになっているロザリー様の隣で諦めの境地に達した私はせっかくなので身体を洗っていた。
ここは領主の館の専用浴室です。
なぜここに私がロザリー様と一緒に居るかというと…。
『ろ、ロザリー様!私ここ3日ほど警備していたので、湯浴みどころか水浴びすら---』
『はっはっは。私などこの一ヶ月宿にすら泊まってないのだ気にする必要ない』
『せ、せめて身体を拭かせて下さい。すぐにお屋敷に向かいますので!』
『ならば屋敷で湯浴みをすれば良い。そうだ一緒に入れば良い。そうだそうしよう』
『やめてーはなしてー髪くんくんしないでー!』
…いろいろあったんです。
とはいえ、ロザリー様も酔狂で私をここまで連れてきたとも思えません。
湯浴みのお手伝いをして、御髪を整えさせて頂いたところで浴槽でお待ちになっております。
とっとと歯磨きを終わらせて聞くことにしましょう。がらがら。ぺっ
◆
「それで、私をお屋敷に連行…いえ、誘拐…ええと連れてきた件についてですね」
「おまえは本当に残念なくらい素直な子に育ったのう」
この場所がアルメッテの町となってから生まれた人は全員男爵夫妻に抱っこされます。
というか、うちがやんちゃな二人の兄に目を回していた両親に代わって、ロザリー様が私の面倒を見てくださっていたため、私は半分くらい娘の扱いらしいです。
ロザリー様は女の子を産めませんでしたからね。
「しばらく王都に行って貰うことになるやもしれん。いや、行ってもらう事になるじゃろうな」
「え、何故私が?」
「年齢、後は外に興味のあるタイプといったところかの。まあ、詳しい事はこの後、夫から聞けばよい」
「さいですか」
町の外を見たいのは山々だけど、物見遊山で王都に行くわけじゃないだろうな。
ロザリー様の言い方だと、ほぼ私に決定しているらしい。
王都か…王国語会話苦手なのにな。
「…あれ?私にアルメッテ様が御用時があるのはわかったのですが、何故私は風呂に連れられてきたのですか?」
別に一度家に帰ってもよかったんじゃね?
「その用のある者が目の前に居たからじゃの。風呂はついでじゃ」
ただの酔狂でした。




