二十五話
何やらすすけた様子のランディをひっぱって目的の店に着きました。
看板にはアルメッテで使っていた文字で”鍋つかみの目薬”と書かれていました。
…意味がさっぱりわかりません。不安になってきました。
ドアベルを響かせて中に入ると、簡素なカウンターがあるだけ。お店というより何かの受付みたいな部屋です。
「おーい、パシェ。客を連れてきたぞ」
ランディの気軽げな声にカウンターの奥から女性の返事が聞こえ、ラフな格好をしたショートヘアの女性が出て来ました。
む、重そうな物を胸に付けていますね。もいであげましょうか。
「ランディ!?なんであんたがここに居るのよ。あんた近衛の募集受けに行く…って何この子カワイイー!欲しい!何私へのプレゼントなの?違う?拾った?迷子?」
は、速い!
一足飛びにカウンターを越えてきた女性が何かわめきつつ私を抱きしめます。
私には無いふかふかとしたもので顔を押しつぶされて呼吸ができません。
認めよう。今この瞬間からこの方は今の私の敵です。
早くランディどうにかしてください。
「お、落ち着けパシェ。それは客だ。仕事の依頼人だ」
「お客さまかー。ねーキミなんてお名前なのかなー。お姉さんに教えてくれる?」
「………ロカいいます」
「ロカちゃんか。んーカワイイー!すぐお父さんかお母さんを見つけてあげるからねー。それまでお姉ちゃんと遊んでいようか?」
「…ランディ。この娘殴っていいだか?」
「お、落ち着けロカ。それは店員だ。この店の娘だ」
「ふーん 人探しね。そりゃお父さんの仕事だわ」
パシェさんという私の敵っぽい人から引き離されて、ようやく本題に移れます。
依頼表に日付や依頼内容を書いていると彼女は裏に引っ込んでしまいました。
「慌しい娘だべ」
「その…彼女はパシェール。親父達が昔戦友だったとかで昔からつき合いあってな。ガサツだが可愛いところもあるんだぜ」
ランディは何やらフォローなんだか惚気なんだか判らないこと言ってますが…そうですか、そのような関係の方でしたか。
いえ、別に私は怒っている訳じゃないですよ。ただちょっとこっちは恋人を置いて出て来ているのに目の前で惚気やがってこんちくしょうとかは思ってたり思ってなかったりしますが。
筆圧が少し強くなってしまいましたが、見やすくていいですよね。
「もうすぐお父さんが起きてくるから。詳しい内容はそっちに言ってね。ほら、ランディちょっとつき合いなさい」
「うえっちょ…待てって!ロカーすぐ戻るからそこにぃ……」
戻ってきたパシェさんはランディの腕を取るとそのまま外へ行ってしまいました。
そうですか、そのような力関係の方でしたか。
一人残れてお父さんとやらを待たせてもらいます。こんなんで大丈夫なんでしょうかこのお店。
「おいパシェール?おい?どこ行ったんだあいつは」
「ランディとどっか行っちまっただよ」
奥から男性が出て来ました。この方がパシェさんのお父さんでしょうね。
右足を引きずるような歩き方をしていますが、怪我でもされているのでしょうか。
「あいつは…ったく客に茶一つ出さねえで。嬢ちゃんちょいと待ってな…うわっ」
「お構いなく」
一発で私を女と言った好ましい人になら何時間待たされても許しますよ。
「あちゃ…くそっ。奥がいなくなってからどこに何があるかわかりゃしねえ」
「奥さんおらんだか?」
お茶を探していたらしいお父さんがピタっと固まってりました。
しまった…
「あー聞いたらマズイ事だっただべか」
「ハハっ…うちの奥も行方不明でなぁ。探してはみたんだが、中々なあ…」
私この店に人探しを依頼に来たんですが早まったかもしれません!
「無茶な仕事だったんだが断れなくてな…一年前くらいか」
カウンターに伏せられていた写真立てを憂いを含んだ表情で眺めてます。
私も横からそれを覗かせてもらいました。
どう見てもアリサさんです。本当にありがとうございました。
ファンタジーの写真の扱い方は少し困りますね




