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十九話

 貸与された制服の上にマントらしきものを着け、右手に殴るには小さいステッキを持ってる人が、此方に指を向けている人が堂々たる自己紹介をしてくださいました。

 これは王都流の挨拶だったのでしょうか。


「ご丁寧にどんも。わだくしロカ・アルメッテいいます。よろしゅう」


 挨拶は大事ですね。

 お互い自己紹介を済ませて暖かい雰囲気に…なりません。私がボッシュさんの友人らしき人を伸したのが悪いのですが、なにせ咄嗟だったもので身体が勝手に反応してしまいました。

 こちらを睨まれているのですが謝ったほうがいいでしょうか。


「っ…アルメッテ?知らんな…その野暮ったい面といい賎しい出なのであろう」

「やっぱり知らねですな。田舎なのは間違ってなかですが、こうむざむざと見せ付けられっとやるせねえでがす」

「その制服…貴様プリセスガードの一員だろう?いつ来たのか知らんが私に礼を取らんとは無礼にも程がある!」

「王都きたのは今日なんどすが…誰がおるかなんて知らねで。そもそも全員の自己紹介は入校時にやるんでねが?」

「アレニウス侯爵家を知らんというか!」


 なんだか一人ヒートアップされてます。自分の王国語が通じてるのか不安になってきました。明日は図書室で言葉の勉強しましょう。

 それより、目の前の彼です。

 侯爵家?はははご冗談を。


「バカこくでね。侯爵様の子がなしてこんな…礼儀教育受けに来るわけなか」

「きっ貴様!」


 ああ、思わず口から漏れてしまいました。

 ますます顔を赤くしたボッシュさんがステッキから手を振りぬくと、左手に細剣が握られていました。仕込みだったのですね。


「不敬者に引導をくれてやる」

「はあ…」


 あまり難しい言葉や言い回しはわからないのですが、彼の行動からすると私は今脅迫か戦いを挑まれているのだと思います。

 しかし、彼は気づいてないようですが…


「死ぬがよ…」

「何をしている」


 彼の後ろにいた大きな人が、剣を持った彼の腕を後ろから捻り上げました。

 ボッシュさんは声にならないか細い悲鳴を上げましたが、あの捻り方ならそこまで痛いとも思えません。私の知らない極めが行われているのでしょうか。


「ボッシュ・ザン・アレニウス。待機中の武装は禁止のはずだが?」

「ぎあ…ひっ…き、貴様こそ伯爵家でありながら…アレニウス侯爵家たる私にいいいい…は、離せぇ!」

「ここは国軍施設だ。仮とはいえ国軍に所属した者は貴族といえど階級を絶対とする。その上で貴賎を問うならば、我等の上に立つ方は国王陛下である。貴様は侯爵家の四男でありながら国王陛下より上だとでも言うつもりか?」


 彼は四男なんですね。家名を名乗るので長男だと勘違いしていました。

 キンっと音がして握られていた細剣が落とされます。


「両成敗として今は注意で留めておこう。だが、これ以上下らん事を繰り返すようでは明後日からの訓練が楽しい物になると思え。侯爵家の血を引く者に相応しい特訓をしてやろう」

「くっ…」


 離された腕を摩りながら、ボッシュさんが伸びてるお友達を起こしました。

 まだ少し、フラフラしていますが怪我らしいものはないようです。

 実はお二人とも綺麗に飛びましたから少し心配だったんですよね。


「貴様、覚えていろ」


 細剣を拾うとき此方を見ながらボソとそう言いました。

 失礼な。人の名前を忘れたりしませんよ。ボッシュ・ザン・アキレスさん。


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