十六話
麓に小さな村はありました。
動くもの一つない死に絶えた村が。
あちこちに死体や戦闘跡が残っています。
ここ数日の内に襲われたのでしょう。まだ場所によっては火が燻っているところすらあります。
「ひどい…」
先ほどの方達といい、何が起こっているのでしょうか?
いえ、山に残してきた9人はここの村人だったのかもしれません。そう考えるほうが自然でしょう。
小さな遺体を抱き上げながら村の広場に向かいます。
…弔うだけの時間なら作れます。
大きめの穴を掘って、遺体をそこに並べます。
少々雑な作りになった花輪を彼等に抱かせて、崩れていない家に残った油を撒いて着火しました。
せめて死後は聖なる山で喜びを得てください。
◆
山の人達や村の事は心残りですが、私は任務中です。
途中の町や村に行くのをやめて王都へ急いで向かうことにしました。
道しるべのようなものが分かれ道に立っていたのですが、他の町がどれも王都と別方向なのです。
遠目にも見えないので距離は6キル以上といったところでしょう。
2つ目の分かれ道で私は町に寄るより王都へ行くほうが早いと判断したため、一路向かうのでした。
外套の水気を飛ばしながら小さな岩だなを越えたとき、ちょうど森と岩のくぼ地のようなそこに何かの一団がいました。
先日の件もあったため警戒しましたがガチャガチャとうるさい金属音に、統一された鎧装備。
どこかの軍隊…いえ、王都の軍でしょう。大休止か野営準備にでも出くわしたようです。
渡りに船とはこの事です。助けてもらいましょう。
ええと…
「すんませーん」
声をかけるとこちらに気づいた歩哨が槍片手に誰何してきます。
しかし、王都の兵は誰何にいちいち長ったらしい口上をあげるのですね。ぜんぜん聞き取れません。王都と第三兵団だけ理解できました。
「王国府ん要請ばにあわせて王都にむかっとります」
とりあえず書類のケースを見せて怪しい者ではない事を証明しておきましょう。
王印が押されたケースを貴族の印でふさいだ場合は、王国府の人意外で開けるてはダメだそうです。
まあ、それでも十分証明にはなりましたけど。
では山の状況をお知らせしましょう。
「…で、山を下ったどすけど、山麓の村が死んどりました」
「なんてこった…」
皆さん沈痛な面持ちです。
彼等は王都から周辺町村を定期巡回している部隊らしいです。獣や魔物が増えた時に出動していては遅いですからね。
私も森の定期巡回を行っていました。もっとも、戦争中だったので巡回というより偵察に近いものがありましたが。
敵性の発見というより発生を防ぐことが目的でしょう。
それでも今度のように完全に防げるわけではありません。
「山狩りばして村あんなした奴見つけたかったんだども…時間も土地勘もなかったで」
「いやいやいや、一人でそんな危険な事しなかったのは正解だよ。それにその仕事は僕達の仕事だ」
そうですね。どちらにせよ誰かに助けに行ってもらう予定だったんですから彼等にまかせましょう。
村までの距離と山に残した人達の詳しい場所を教えて後をおねがいします。
「これからすぐに向かう事にする。教えてくれてありがとう。本当なら王都まで乗せて行きたいところだが…」
「ええだよ。任務は重要だぁ」
私も私の任務を優先させているのです。
彼方も自分の任務を優先させたからといって、誰も文句言いませんよ。
村の方へ向かう彼等へ手を振って私は王都へ向かいます。
心残りが無くなったことですし、王都まで走りますよ。
次章は月曜からです。




