十二話
「ついたー!」
あれから半日ほどかけてモトの村につきました。
アルメッテの町から外に行く際の休憩小屋みたいのが立っていた場所なのですが…。
そこに怪我で動けなくなっていたモトさんが住み着き…。
隣町からモトさんを迎えに来た家族が住み着き…。
アルメッテから警備のために何人か移住し…。
さらにどこからかの移住者が増えて現在10人くらい住んでます。
そんな所ですが森から怪しい格好の私が現れれば誰何されます。
『止まれ!地面に伏せて両手を…』
あ、王国語ですね。
んっええと…。
「アルメッテのロカいいます。村さ入ってよかろ?」
「上の町の住人なのか?何で森から出て来るんだ」
「急いて王都まんで行っでこいっつわれましたんで、裏から来ますた」
森から出て来る動物や魔物を監視している人だったようです。
表道から来る場合の方向が違うのと、今の私の格好でさらに怪しんでしまったのでしょう。
森に目を向けて胡散臭げでしたが、書状ケースを見せるとサッと道を明けてくれました。
権力って素晴らしい。
それはいいとして、ええと…村の中央にある少しがっしりした家の…裏にまわって?。
裏に地下室の扉があるのでそこをノックする…っと。
トトトン・トトトン・トン・トトン
これでいいのかな。
この家はアルメッテからの移住者が住んでいるのですが、地下に何人か潜んでます。
アルメッテ様が直々にこうするように言われたのですが何の意味があるのか私にはわかりません。
恐らく私が知らなくて良い事なのでしょう。であれば聞く必要もないのです。
町を出る時にここで旅の準備をするように言われたのですが…カタンカタンと閂が外された音が聞こえるので中にはちゃんと通じてるようですね。失礼します。
…中は結構明るいです。ランプ以外にも外から光を取り入れる天窓のような物もあるからでしょうか。
正面の一番偉そうにしている人に挨拶しときます。
「ロカと申します。王都への準備をこちらで受けるように指示されたので参りました」
「ご苦労。用意するので暫し休まれるが良い」
厳しい口調とは違って手をヒラヒラさせてる男性。よく見りゃミック兄ちゃんか。最近町で見かけないのはこちらに住んでいたからでしたか。
ルシエール様と仲が良かった人なので引き篭もって研究でもしているのかと思ってました。
それはさておき。
先ほどからおそらく私用の装備品だろう物をせっせと用意している女性は誰でしょうか。ミック兄ちゃんとも王国語で話しているのでアルメッテの人じゃないのでしょうが。ここに居ることが気になります。
「ああ、彼女はアリサ。一年くらい前に森と川の境目あたりで怪我してたのを拾って使っている。危なかったんだが、一命は取りとめた代わりに記憶を無くしたらしい」
記憶喪失ってやつですか。
「身元が判るような物を持ってなかったんですね」
「ぼろぼろだったからな…正直、その名前も本当かどうか」
もしかすると家族の名前とかかもな、と。
ふむ…。
◆
毛皮のベストの上にフード付きの皮外套を着て準備完了。季節としては暑くなってきますがこれから山一つ越える必要があるので厚着になります。暑さは脱げば良いだけですが、寒さは着なければ耐えられません。
「アリサの事なんだが…」
脚絆を巻いているとミック兄ちゃんが決まり悪げに話しかけてきました。
なんとなく、言いたい事が想像できます。
「途中町に寄る予定はありませんから、王都で探すくらいしかできませんよ?」
「十分だ。悪いなぁー任務外の事頼んじまって」
はん いいってことよ!
ローザねえちゃんにふられて氷像のようになっていたミック兄ちゃんの新しい春の為に、私も持つ者の余裕で一肌脱ぐつもりです。
巻き脚絆が長時間の旅に向いているかは不明です。




