十一話
音楽が聞こえました。
怒号 悲鳴 剣戟
私もその中にあり音楽を奏でる。
左手に持った短剣で爪を弾いて、右手の手斧を敵の首に打ちつける。
骨に食い込んで取れなくなったので手を離し、顎を蹴り上げ距離を開け、右前方でシーアおばさんに喰らいつこうとしていたでかい一匹に向け左手の短剣を投げつけた。
目に当たる寸前で手で払われたが、どうせ当たるとも思ってなかったからいい。
その隙に、小さい体を低くして懐にもぐりこみ、肩から押し込むようにしてぶち当てた。
「後ろに」
おばさんに声をかけた瞬間に油断があったのだろう。完全に見えない場所から背中を切り裂かれた。
爪で切られたのに頭を殴られたように痛く。冷たくて。辛くて。苦い…。
◆
「ぐはぁ!」
口の中いっぱいに辛くて苦い味が広がります。
「ぶはぁ!」
鼻に水入った!頭が半分水に浸かったまま呼吸してしまった。
今気がつきましたよ。私は滝に飛び込んで山道をショートカットしたんです。それでしばらく気を失っていたようですね。
気つけ薬が溶け出すのは100数える位の時間なのでそんなに経ってないはずです。
とりあえず口の中の酷い味をすすぎましょう。これ身体には大変良いらしいですけど酷い味なので普段は使い道のない薬なのです。がらがら ぺっ
そして全身を確認。
滝壷から流された時に頭を軽くぶつけたのか少しズキズキします。
そこ以外は異常なし。それでも川の水に浸かっているので身体が冷えてきました。
火を焚いて乾かしたいところですが、時間も無いので少し水気を飛ばすだけにしておきます。
それにしても…。
あれは5、6年前の夢でしょうか。
小規模なぶつかり合いだったのですが、私が死にかけた時の夢でした。
本来私のような年齢であれば、一人に二人掛りが基本なのですが無茶したもんです。
ちなみにあの後、シーアおばさんは私を切りつけたコボルトを一閃して、私を引きずって後退しました。
「ロカちゃんに助けられたわ~」
などとはしゃいでおりましたが、せめて止血してから可愛がってくだされば、私も死にかけること無かったと思うのですよ。
ちなみにあの時に短剣を投げつけた相手がクロービスだったので初めての出会いの思い出でした。ぽっ
その後何度かデートを重ねて、つき合い始めたのですが…。
今思えば運命の相手だったんですよね。きっとそうよ。ふひひひ
…へっくし
おっといけない。思い出よりも長く冷水に浸っていたので風邪引いてしまう。
私は適当に生えているツタと木の皮を剥いで足に縛り、川に沿って山を下りました。




