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異形唄  作者: 侍与利
3/6

第三刻、目が悪いの?

<脩視点>

まず靴を履こう!で持って来たのは登山用のブーツだね、気に入ってるからいいけどさ。次は武器だ武器!よし、武器だな…遂に模擬刀の出番だ。刃がついてないくせに重たいのが嫌だけどテンション上げる為にはやっぱり刀が要るんだよ!ついでに充電満タンのiPodと携帯を胸ポケットに入れておこう。充電器はリュックの小さいスペースに押し込もう。俺はiPodのイヤホンを伸ばして装備した。音量は小さめだから支障は無い…と思いたい。曲をGUMIのモザイクロールに設定すると、今年で一番のテンションに上げながら窓から飛び降りた。少々足が痛くなったけど気にせず走る。ゾンビを避けて包囲網からは抜けたかったから、たったっ3体の包囲網から。だが途中で思った…。この辺りでこいつらの戦闘能力知っといた方が良いんじゃないかと、という事で…手始めに後ろの奴の銅を横に斬ってみたがあまり効いてない様子でノロノロしている。やっぱり頭かな、今度は脳天めがけて振ってみた。すると頭がスイカみたいにブシャーってなった…テンション上がって残りの2体はモザイクロール歌いながら秒殺した。

脩「ごめんね…よく見たら裏に住んでるおじいさんじゃないか。まぁ気にしない方が良いな…いちいち気にしてられないもんな。う~ん、ゾンビには捕まらない限りなんとかなりそうだな。でも無視にかぎるよ、面倒だから。」

長い独り言を言い終えると自分の耳が何かの音を拾った…やっぱり支障無かった。誰かの声?あの服屋の中から聞こえるんだけどなぁ…危険?とか思いながらも音のする方へ歩を進める。店に近づくと声が歌を歌っていることが分かった。店の中に入ってみたが、食料が無いからなのかゾンビはいなかった。慎重に歌声に近づくと声の主にたどり着いた。俺より3つくらい年下の少女が透き通るような歌声で歌っていた。歌と言うより唄と言うべきだろうか?少女は学校の制服を着ている…上は白くてスカートは藍色ってやつだろうか?膝の位置まである裾が少し曲がっていてやや危うい…髪は黒くて肩に届くか届かないかの微妙な長さだ。肌は白く、この状況のせいか天使を思わせた…すぐ前に立っている俺に気づいていないという事は…今見開いている綺麗な瞳はあまり見えない…という事か。多分少しなら見えるだろうがあまり無理はしない方が良い。ふと、靴に名前が書いてあることに気が付いた。二葉澄礼フタバスミレという名前みたいだけど…この辺りの子だろうか?見たことがないし名前も知らない…声をかけてみようか。

脩「二葉澄礼ちゃん…?俺は架仁御脩カシミシュウって言うんだ…一緒に逃げないか?俺はこんな地獄抜け出したいんだけど…。」

イヤホンを取りながら問いかけると、悲しげで弱弱しい声が返ってきた。

澄礼「澄礼?…私?…私…記憶…無い。目、少し見づらい。」

脩「記憶がない?」

澄礼「気づいたら…ここ…上手く話せ…無い。」

脩「今の日本はどうなっているかわかる?例えばゾンビの事とか…」

澄礼「うん…わかる。この目でも…多少の事なら…でも…どうしたらいいのか…何かを知ってる筈…思い出せない。」

脩「無理に思い出さない方がいい、思い出したくない記憶もあるから。」

静かに、それでいて力強く。俺は思う。思い出したくない程の記憶や自分が壊れるほどの事が起こると人は記憶を消そうとする。今の地獄絵図を見ると一層深く思える。

澄礼「一緒に行って…も?ううん…ダメ…足かせに」

返事の代わりにリュックの中を探ってあのカチューシャを渡してあげた。少女の瞳の泉から水が溢れ出して俺の手の甲に滴り落ちた…服を掴んでいる小さな手がガクリそうになるが俺はそれを包んで歩き出す。この子は、死なせない。俺が護るんだ!この時、俺は気づかなかった…澄礼の肩から白く輝く翼が…。


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