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海の馬は天へ

作者: HORA

僕の名前は(ばく)。小学2年生。寝ている時に夢を見ててさぁ。起きる直前の状況と夢がリンクしてる時ってない?カレーライスを食べてる夢を見てて、起きたら台所から良いカレーの匂いがしていた…とかそういう話じゃないよ。

長い長い夢の中にいてね。階段を上がって上がって、建物の高層に来てね。その階には大きな窓枠があるんだけど、なぜか窓はハマってないんだ。簡単に落ちちゃえる。

「危ないなぁ。何て怖い作りなんだろう。」

って考えつつもなぜか、その窓枠の(きわ)まで来て下を覗き込むんだ。

ビュゥゥゥー!!

高層階では強い風が吹いていて、下に見える車や人は米粒のような小ささ。

ガラガラガラ

なぜか突然足場が崩れる

心臓が跳ねる

高層階から落下しちゃう!って認識した瞬間に

ベッドからまさに落ちようとしていた瞬間だった…

とかの話。


これ、、、夢って長いと感じていても目覚める0.1秒前ぐらいから開始して、

落下すると言う結末に合わせてエピソードを作ってる可能性がある。なーんて聞いたんだけど、

僕は実際はそうじゃないと思うんだ。


これは記憶の改竄。


本当は元々は違う夢を見てたんだ。その見てた夢を、ベッドから落ちるというシナリオが通るように高層ビルに昇る内容に上書きしたんだよ。


例えば君がある派手なアクションの漫画を読み進めていたとするね。じゃ10巻まで読んだとしようか。で次の巻はどうなるのかな?ってワクワクしてたんだけど、作者が11巻から展開を大幅に変えて恋愛の内容にしたかったとするよ。でもそうすると10巻までと11巻からが繋がらなくなるよね。だから作者は1巻~10巻の内容全部を恋愛ものにすげ替えるんだ。

でも不思議なことにこれまで読んでいた10巻までがすげ替えられたところに僕が気が付かないところなんだよね。夢だから何でもありなのかな?内容も時間も記憶も…。

じゃぁ元の1巻~10巻のエピソードはどこ行ったんだろうね。もう絶対思い出すことはできないのかな…?

でもしばらく日数が経ってからの夢の中で、あれ?前に見たことのある夢だって思い出せることある事も不思議。

そういえば僕…、、、夏休みの宿題がまだ全然進めてないな~。お盆にお爺ちゃんとお婆ちゃんのいる田舎に帰るまでにはやっておいてねってお母さんに言われてたけど、、ふわ~眠いな…。


って、あははは。また僕は夢を見てるよ。今回は絶対夢だってわかる。

海の中を泳いでるんだもん。何だろう?何だか不思議な生き物が僕の周りを沢山泳いでる。これは僕の子供達かな?こんなへんな魚は初めて見たよ。それにしても凄く綺麗で透き通った海だなぁ。珊瑚がカラフル!魚達があちらこちら群れを成して泳いでる。何だか幸せな気分だなぁ…。夢なのは分かってるけど目覚めたくないなぁ。でもそろそろ起きないといけない時間かな。学校…は無いけど夏休みの間はラジオ体操に行ってハンコもらわなきゃ…。



…あれ?ここはどこなんだろう。まだ寝ぼけてるのかな?昨日の夜は確か自宅で寝たはずなんだけど、何だか狭い見た事の無い部屋…。うわっ。身体の大きな大人の人3人が鉄格子ごしに棒を持ってこっちを見下ろしてる。え?僕、誘拐されて監禁されてるのかな?お母さん、お父さん、、どこ?怖いよ。助けてよ。ううっ。


看守A「なぁ、、こいつ何だかおかしくないか?」

看守B「あぁ。死刑宣告を受けてから心身喪失を狙っても遅いのになぁ。」

看守C「いや。一昨日(おとつい)か。警察病院で精神科医が診断したらしいんだが完全に8歳児になってるらしいぞ。」

看守A「は!?あり得ないだろう。」

看守C「2重人格…とかじゃなく、MRIで確認したら元の人格の脳領域はもう無くなってて、完全に別人の小学生になってるらしい。」

看守B「それは幼児退行してるって話か?」

看守C「いや。全くこいつの生い立ちとは関係ない別人の記憶らしい。」

看守A「一体何なんだ…!?人格を崩壊させられたのはこいつに殺された人達の遺族の(ほう)だろうがよっ!」

看守C「こいつは死刑宣告を受けた衝撃だとか、アルツハイマーだとかで、脳細胞が変性して、海馬もダメージを負ったそうだ。新たな記憶ができずに(ばく)って名前の小学生として、これからもここがどこだか分からない状態で目覚め続けるんだってよ。昨日もこんな感じだったよ。」

看守B「うへー。」

看守A「80歳近い爺ぃに対してどう扱えばいいんだよ。」

看守C「精神科医が言うには小学生として扱った方が良い、、らしいんだけどな。あと犯罪者として扱うのも辞めた方が良いとか。」

看守B「うーん…まぁ心神喪失とか、心神耗弱(こうじゃく)で罪が軽くなったり無罪になったりするってことは、つまり法は人格を犯罪の凶器としてるんだな。」

看守A「じゃ今のあの爺ぃは別の無罪の人間として扱うのか。」

看守C「そういう方針らしいぞ。」


「絞首刑には処すけどな」





国が死刑に処したのは有罪の連続殺人犯なのか、冤罪の小学2年生なのか。

意見は分かれ、議論を巻き起こし多くの人の記憶に残ることとなった。

だが被害者達も、加害者の老人も、出自不明の小学2年生も

もうこの世にはいない。


海馬(たつのおとしご)は雄が妊娠する不思議な生態

脳内にある形状の似た2匹の海馬は記憶に関係しています

脳内にある2匹の海馬が妊娠して子供を生み出した話(欄外)

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