騎士になり…
分かりにくいと思ったらコメントしてくださればできる限り直します。
目が覚めた。
だが布団からでたくない。
そう、今は冬だから仕方がないのだ!
何者であろうと布団の魔力には抗えない!
そう!たとえ神であろうとも!
そんな平穏をかみしめながらぬくぬくしていると、誰か来た。
いや、わかってる。
誰が来るかなんてわかりきっている。
(どーせアストリアなんだろうな)
扉が勢いよく開いた。
その瞬間セイスはさらに布団にくるまった。
「さぁ、セイス!試合をしましょう!」
「いやだ」
「何でよ!これは命令よ!」
「はぁーーーーー」
命令は従わなければならないので、仕方なく布団から出て服を着替え始める。
服は4着もらっていた。
1つは寝間着だ。
もう1つは軍服のような見た目をしている。
あと2つは騎士が着るような服で、風通しがよく動きやすい服だ。
今セイスは寝間着を着ている。
脱ごうとした時声がかかった。
「なななな、何で私がいるのに着替えようとしてるのよ!?」
アストリアは頬を赤らめこちらをチラチラ見ている。
むっつりのようだ。
そんなアストリアの様子が面白かったが、着替えるために声をかけた。
「着替えるんで出てってくれ」
「い、言われなくてもそうするわよ!」
そう言い急いで出ていった。
セイスは急いで着替えて、騎士たちが訓練している訓練所に向かった。
既にアストリアは訓練所に来ていた。
ちなみに頬はまだうっすらと赤かった。
ほかにも騎士がいるので口調を改め、
「お嬢様、準備が整いましたら試合の方を始めましょう」
「う、うん。わかったわ!」
アストリアはセイスを見ると頬を少し赤くした。
アストリアは壁際に置かれている木剣を一つ取り訓練所の中央に向かった。
セイスはすでに何か長いものを持っていた。
「何それ」
セイスの手にあるものを見て言った。
ほかの騎士たちもセイスの手にあるものを見ている。
セイスは、
「見てわからないんですか?お嬢様。これは森で拾える木の棒ですよ」
セイスの手には剣のような形をした木の棒があった。
柄の部分は木の棒のままだが、刃の部分は剣の形をしている。
「それで私とやるつもりなの?正気?」
「もちろん。それでははじめましょうか。だれか始めの合図をお願いします」
若そうな騎士が前に出てきて、「そ、それでは試合開始!」と告げた。
アストリアは開始直後に前に飛び出し木剣を突き出した。
皆がそれで終わると思っていた。
だが、そうはいかなかった。
セイスは余裕がなさそうな表情をして防いでいた。
アストリアは防がれたと同時にバックステップで距離をとった。
騎士たちはセイスがアストリアの剣を苦しそうな表情をしながらも止めたことに驚いた。
今この場には、ジャミルを除き、アストリアの剣を防げるものはいない。
「私の剣を余裕そうにとめたわね?」
騎士たちはアストリアの言葉を理解できなかった。
セイスは苦しそうな表情をしているのに、余裕そう?
騎士たちはおろかジャミルも理解できなかった。
「僕、苦しそうな表情してると思うのですが?」
「目で余裕って言ってるわ!」
「僕はお嬢様が怖いです」
「今度はあなたから着て頂戴!」
「では行かせていただきます」
そう言いセイスはアストリアの視界から消えた。
次の瞬間アストリアは地面に横たわっていた。
「?????なにしたの?」
「地面に横にしました」
騎士たちはあんぐりした。ジャミルも。
苦しそうな表情をしていた少年が一瞬で自分達より強い少女を倒したのだ。
騎士たちはセイスへの認識を改めざるを得なかった。
「もしかしたらと思ってたけど、まさか本当に勝てないとは思わなかったわ」
「そうですか」
「何でそんな興味なさそうなのよ。年上にほめられたのよ!誇りなさいよ!」
「年…上…?」
「そうよ!私は7歳!あなたは6歳じゃない!」
セイスは自分の誕生日がもうそろそろ来ることを言わずに黙った。
その様子を恥ずかしがってると捉えたアストリアは、
「恥ずかしがることないじゃない!」
と元気を出しなさいといった。
そこにジャミルが、
「セイスはもしかしたら私よりも強いかもしれないな」
「そんなことはあるはずがないでしょう?僕はまだまだ”6歳”ですよ」
ジャミルは正確な日は知らないが誕生日がそろそろだろうと知っていたので、少し根に持ってるなぁ、と思いながらセイスに提案した。
「お嬢様の…護衛騎士にならないか?」
「僕が…?何を言ってるんですか。第一伯爵様がお許しになるはずありませんよ」
「私との試合をご主人様に見せれば納得してくださるだろう。さぁ、そうと決まればご主人様に提案しに行くぞ」
「私も行くわ!お父様にお願いしたいこともあるしね!」
そうして三人はアインがいる執務室に足を運んだ。
「失礼します。ご主人様にご提案があってきました」
「なんだ?セイスがらみのことか?」
「えぇ。セイスをお嬢様の護衛にと思いまして」
「アリアの…護衛…?ジャミル、騎士をやめるのか…?」
「違います。私はご主人様の近くに常にいるようになる、ということです」
「そうか、セイスが護衛になることは賛成だ。だがセイス、アリアに何かあったらただじゃ済まさんぞ」
「僕に拒否権はないんですか?」
「アリアを守る価値がないというのか貴様ぁ!」
セイスは感じた。アストリアと同じようなめんどくささを。
そして諦めた。
「お嬢様の護衛となる命、お受けいたします」
少しめんどくさそうに言った。
アストリアはセイスが護衛になることにうれしそうであった。
「アリア、お前も来たということは何か用事があるのだろう?」
「お父様!私、魔法を習いたいです!」
「急にか、わかった魔法の講師を呼んでおこう。」
「「「それでは失礼します」」」
「セイスは残ってくれ」
「え?はい」
護衛となるの当たって何か言われるのだろうと思った。
だが違った。
「セイス、お前は何をしようと思ってる?」
その言葉にセイスは虚をつかれたような気持になった。
まさか、と内心で思ったがないと確信し、アインに聞き返した。
「何をとは何でしょうか?」
「決まってるだろう?お前が計画していることだ」
「け、計画?何を言っているのでしょう?」
「私に隠そうとはいい度胸だな。ガイム伯爵に復讐しようとしているのだろう?」
「…」
セイスは黙らされた。
まさかばれてるとは思わなかった。
ここにきて来てからまだ1日とちょっとしかたっていないのだ。
セイスはアインを見つめ、何を考えているのか探る。
だが、さすがは貴族。
考えていることがわかりそうでわからない。
互いを見つめあうという気まずい雰囲気になった。
先にアインが口を開いた。
「いや、邪魔する気はないんだ。ただいつ実行に移すのかを聞きたくてな」
「………そうですか。実行するのは僕が10歳になった時の予定です」
「そうか。じゃああと3年はここで暮らすのか」
「そうなりますね」
「わかった。答えてくれて感謝する。アリアのところに戻ってくれ」
「それでは失礼します」
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「お父様と何を話してたの?」
「秘密だ」
今ここには二人しかいない。
アストリアは執務室から出てきたセイスの異様な雰囲気をが気になり、声をかけた。
セイスが何かしようとしていることは知っている。
セイスがそれを隠していることも。
それでも気になるには気になるのだ。
「いいじゃない!別に減るものじゃないんだし!」
「俺の心の中にあるものが減る」
「教えてくれないのね!?ケチね。じゃあ代わりに明日はどこにでもついてきてね!」
「まぁ、いいか…」
そうしてその日はアストリアと剣を交え続け、部屋に戻った。
セイスは今後の計画を考えながら眠りに落ちた。
次の日もアストリアは部屋に来ていた。
今日はたたき起こしてきた。
「ほら、セイス!起きて!町に行くわよ!」
「あ、朝から…?」
「そうよ!ほら早く!」
仕方がなく起き上がり、先にアストリアを外に出して着替える。
セイスは学習する男なのだ!たとえ昨日の反応をもう一度見たいと思っていてもだ!
着替え終わったあと部屋の外にアストリアとジャミルがいた。
「なんでジャミル様が?」
「セイスに小遣いを渡そうと思ってな!」
「いいんですか?」
「あぁ、迷惑料とでも思っててくれ」
「ちょっと!ジャミル、迷惑って何よ!」
「それじゃあセイス、楽しんで来い!」
「え、無視?セイスからも何か言ってよ!」
「それでは行ってきます、ジャミル様」
「セイスも!?」
そうしてセイスとアストリアは屋敷を出た。
街は屋敷を囲むようにしてつくられている。
街で友達と買い物をする、アストリアがしたかったことだ。
街ではアストリアは人気だ。
見た目もさることながら、性格もよい。
街に出るたびに声を掛けられる。
「アストリア様!うちの果物、買っていきませんか?」
「アストリア様、新刊が入りましたよ!買っていきませんか?」
アストリアはすべてに丁寧に声を返していく。
アストリアは楽しそうに道を進んでいく。
ふいに足が止まる。どうやら目的の店に着いたようだ。
見上げると看板がありそこには”鍛冶屋フェム”と書かれていた。
「どうしてここに?俺剣はあるんだけど?」
「それ木でしょ?ちゃんとした剣のほうがいいじゃない。それに私の剣もメンテナンスしなきゃだし」
「この木の剣で十分だけど?」
「まぁまぁ、そういわずに!」
背中を無理やり押され、店に入った。
筋骨隆々な身長が2メートルもあろうかという大男がいた。
その男の視線は自分で作ったであろう剣に向けられている。
男の視線がこちらに向いた。
「アストリアサマ、今日はメンテナンス……か?」
「それとこっちのセイスの剣を見繕ってほしいの!」
「………アストリアサマ、ちょっとこっちきてくれねぇか?」
「何かあるの?」
「えぇ、ちょっと」
「セイス待ってて!」
男の冷たい視線がセイスに刺さる
セイスは飾られている剣を見ることにした。
突然奥からアストリアの大声が響く。
セイスは何だろうと思いながらも、アストリアのことだと思い視線を剣に戻す。
戻ってきたアストリアの頬は少し赤かった。
「おかえり」
「え、えぇ」
「俺、買うならこの剣かな」
「何の変哲もない鉄の剣じゃない」
「そうだけど?」
「つまらない!ダレン、セイスに合う剣はない?」
「そうだな。ん?坊主、その腰にあるもん見せてもらってもいいか?」
「坊主って俺のことです?」
「他に誰がいると」
「たしかに。じゃあどうぞ」
セイスは持ってきていた木の剣をダレンに渡した。
その剣を持った瞬間ダレンは驚いた。大人が使うような剣の大きさであったこともだが、それよりも木の剣のすさまじさに驚いたのだ。
「こ、この剣をどこで……?」
「作った」
「作ったぁ!?」
「そんなに驚くほどのものなの?」
「あぁ。鍛冶の極致にたどり着いたものしか作れんような完璧というほかないものだ」
「セイス、どうやって作ったの!?」
「秘密」
「秘密が多いわね」
「まぁ、聞くべきじゃないのはわかるぜ。坊主にはこれ以外の剣いらないんじゃないか?」
「いやさっきの剣をください」
「それまたどうして」
「……予備ですよ」
「そうか。いいものを見せてもらったし安くしておいてやるよ!」
「ありがとうございます」
セイスは剣を受け取りアストリアとともに店を出た。
セイスはアストリアが次はどこに行くのか楽しみになっていた。
静かに、見守るようにアストリアの後ろについていく。
再び足が止まった。
今度は魔道具が売られている店のようだ。
真実の瞳や火をつけるもの、小さな雷を出すものなんかがあった。
セイスはあたりを見回しているとアストリアから、
「珍しいのでもあった?」
「すべてが珍しいよ」
「楽しそうね」
「こんなところ見たことがなかったからね」
すこし楽しそうな様子のセイスをみてアストリアも楽しそうに笑う。
奥から店主と思しき男が出てきた。
髪は白髪が多くなっている男だ。
「ようこそ、お嬢様。それとどちらで?」
「えぇ。この子はセイスよ!私の友達よ!」
アストリアが胸を張って答えた。
男はそんなアストリアの様子を見て微笑ましそうにセイスに声をかけた。
「なにか欲しいものはございますか?お嬢様のあのような姿は初めて見ましたよ。見せてくれたお礼に何か差し上げましょう。」
「いえ、ちゃんと買いますよ。……そうですねあちらの赤い球をお願いします」
「なぁにそれ?」
「実はあまり使い道がわかってないものなのですがよろしいのですか?」
「はい。見た目がきれいなのでこれにします」
セイスは代金を渡して赤い球を受け取った。
「セイスはこれの使い方わかるの?」
「いったでしょ?きれいだからって」
実のところセイスはこれの使い方を知っていた。
だが、これは計画に必要なものなのでアストリアに説明することはできなかった。
そんな時、アストリアの方からぐぅぅ~~という音が鳴った。
今回は5000字です!
どんどん文字数を増やしていくつもりなのですが、時間がかかりすぎる!