新たな出会い
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村が燃えて1日たったころ、この村の領主━━━ケルト伯爵の騎士が燃えた村にたどり着き、悲惨な姿となった村を目の前にした。
このとき領主の娘、アストリアも共にこの村に来ていた。
騎士たちを率いてきた騎士━━━ジャミルはあたりを見回した。
生きている住民は幾人かいるものの全員が意思を喪失していた。
それもそうだろう。昨日まで生きていた人たちはしゃべることのない炭の塊となり、その上駆けつけてきたガイム伯爵の騎士からは黒髪に白髪の混じった少年が火を放ち、幾人かの騎士を殺して逃げた、と伝えられたのだから。
そんなことを知らないジャミルは、先に駆けつけていたガイム伯爵の騎士に事情を聴いた。
騎士から事情を聴いたジャミルは信じられないという思いでいっぱいだった。
そんな時、アストリアが口を開き、聞いた。
「その黒髪の少年を知っているの?」
「えぇ、半年前にこの村に来たことがあったのですが、その時その少年に騎士にならないかと勧誘をしたのです。あの少年がこんなことをするとは思えません。」
「私と同い年で魔物を狩っていたと話していた子よね?」
「そうです、どうやら森に入っていったようです。お嬢様その少年を探しに行くことをお許しください。私は少年に会って真実を確かめたいのです。」
その言葉に周りの騎士たちは驚いた。
いままでジャミルはアストリアのそばを離れることはなかったのだ。
そのジャミルが命令を受けてではなく、自分から。
アストリアは少し考え答えた。
「いいでしょう、許可します。」
「ありがとうございます。お嬢様、おそばを離れる━━━」
「ただし条件があります。」
「じょ、条件でしょうか…?」
「私を連れて行きなさい!」
その言葉に全員が愕然とした。
そんな様子を見てアストリアはもう一度、
「連れて行きなさい!」
「駄目ですよ!ご主人様にお嬢様の安全を第一にしろと言われてるんですよ!?」
「そんなこと知ってるわ。」
「では何故!」
「私が行きたいからよ!」
全員が思った。
めんどくせぇ〜、と。
「あなたたち、今めんどくさいって思ったでしょ。」
「「「「「!?」」」」」
「それ、許してあげるから私を、連れて、行きなさい!」
「はぁ、しょうがないですね。今回も負けましょう。」
「それじゃあ!」
「えぇ、森に行きましょう。」
そうしてアストリアとジャミル率いる騎士たちは森に入っていった。
森に入り1時間ほど、一行は歩みを止め、アストリアは木の根に腰を下ろしていた。
そこはセイスが森に入ったら20分ほどでつく場所であった。
「なんでこんなに魔物がいるのよ」
「知りませんよ」
「もしかして私が魔物を魅了しているのかしら…」
「ハハッ」
「ねぇ、ジャミルなんで今笑ったのかしら」
そんな軽口をたたきながら一行はさらに歩みを進めた。
さらに2時間ほどたったころ、一行は危機に陥っていた。
ありえないだろうという強さをした魔物に囲まれていたのだ。
騎士たちでは勝てないほどに。
「お嬢様、お逃げください」
「あ、あぁぁ…」
「駄目か…だれかお嬢様を連れてにげてくれ!」
「む、無理です…」
「それならば…仕方がない!お前たち!この場を任せる!生きてまた会おうぞ!」
「わかりました!」
ジャミルはアストリアを脇に抱え来た道に向かって走り出そうとした。
だが、新手の魔物が現れ先に進むことを余儀なくされた。
どのくらい走り続けただろうか。
途中アストリアは正気を取り戻した。
「私のせいで…ごめんなさい…」
「今はそんなことを言ってる場合ではありません!」
視界が少し開けた。
そして目の前には幅が10メートルもあろうかという渓谷が現れた。
渓谷の底には川が流れているが、高さが30メートルほどもありそうで川におちても無事ではすまなさそうだ。
後ろには魔物が近づいてきており、悩む時間は与えられなかった。
ジャミルは心を決めて、渓谷へ飛び込んだ。
4メートルを飛んだあたりで段々と下へ落ちていった。
しかし、落ち始める寸前、ジャミルは対岸へ向かってアストリアを投げた。
アストリアはしっかり対岸に着地した。
だがジャミルは川へと落ちていった。
川の流れは速く、瞬く間にジャミルは川に飲み込まれていった。
どのくらいの時間がたっただろうか。
あたりは薄暗くなり、喉は渇き、お腹はすき、意識は朦朧としてきた。
ふと上を見上げると、木に赤い果実が実っていた。
それを見つけると木に登り無我夢中でかぶりついた。
おなかいっぱいになるまで食べて段々と眠くなっていき、木の上で眠ってしまった。
気が付くと朝になっていた。腰にはいつもの剣の感覚。
だがいつもそばにいるジャミルの気配はなかった。
「これからどうしよう…」
見る者が見れば保護したくなるような表情を浮かべ、考えた。
(そういえば、ここには黒髪の少年を探しに来たんだったわね)
ここへ来た理由を思い出し、決心する。
昨日食べた果実を何個か持ち、森のさらに奥へと進んでいった。
そして、周りに食料がなくなりついに倒れた。
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倒れている少女をみつけたセイスは訝しみながら声をかけた。
「だ、大丈夫ですか?」
レイクに見た目を聞いていたとはいえそれが本人であるという確証はなかったが、ガイム伯爵側の人間ではないと信じ口調を改め声をかけた。
だが返事はなかった。
呼吸を確認するためうつ伏せで倒れていた金髪の少女を仰向けにした。
セイスは息をのんだ。
なぜか━━━それは目の前にいた少女が精巧に作られた人形のような美しい見た目をしていたからだ。
手を伸ばして触れてしまうほど美しかったのだ。
だが触れた瞬間、セイスはハッとした。
この少女の体は冷たかったのだ。
セイスは急いで自分の拠点へと少女を連れ帰った。
急いで焚火をつくり、いつも自分が布団として使っている、鳥の魔物からとった羽をガレフの毛皮で包んだものをかぶせて温めた。
30分ほどたったころ、少女は目を覚ました。
「んむぅ…」
かわいらしい声を出しながら少女はあたりを見渡した。
そしてセイスを見つけた。
「あなた…は誰…?」
「…」
セイスは答えなかった。
「もしかして、ジャミルが騎士になりたいっていってた子?」
「!?」
「その反応当たりね。名前教えて頂戴」
「…」
セイスは再び答えなかった。
だがそんなことでは、少女は止まらない。
「なんで教えてくれないのよ!名前くらいいいじゃない!…もしかして私が名乗ってないから?それなら名乗るわ!私の名前は、アストリア・ケルトよ!さぁ、私は名乗ったわ!あなたの名前を教えて頂戴!さぁ!はやく!」
セイスは諦めた。あきらめざるを得なかったのだ。
セイスは深いため息を吐きながら、
「俺の名前はセイスだ」
「セイスっていうのねよろしくね!あなた私よりも強いの?私と試合してくれない?」
セイスは黙りこくった。
なんて押しが強いお嬢様なんだと思いながら、どうしようか考える。
試合をしてもいいが、今は無駄な体力を使いたくない。
セイスは決心したような顔つきをし、話し出した。
「お前を家に戻してやるから静かにしてくれないか?」
これなら静かになるだろうと思った。
セイスは見誤った。
このお嬢様の性格を。
「いやよ!」
「…家に帰ってくれないか?」
「それはもちろん!だけど私はあなたのことが知りたいわ!まず年齢ね!」
セイスは半ばあきらめた様子で答えた。
「6だ」
「私の一個下じゃない。私は7よ!」
「大して変わらんだろう。ほら家に返してやるから帰る準備しな」
「わかったわ!あなた一人で魔物は倒せるの?」
「倒せなきゃここにはいないよ」
「それもそうね!」
そんな会話をしつつ二人は森を出る道を進んでいった。
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