セイスvs地竜
4/26から一日1000文字を目標として書いてる。
妄想を言葉にするのは難しいけど楽しい。
セイスはとりあえず向かって来た地竜の鼻を蹴った。
しかしそんな蹴りで止まる地竜では無い。
仮にも竜と呼ばれているのだ。
見た目がでかい蜥蜴だったとしても。
「わぁ空が近い」
セイスは上にぶっ飛ばされた。
高さは20mほどだろう。
普通の人間は運が悪ければ死ぬだろうか、死ななくても骨折ぐらいはするか━━━と、セイスは考える。
セイスが落下したとしても骨折するだろう。
だがセイスには再生がある。
折れても10秒ぐらいで治る。
しかし落下地点には地竜が口を開けて待っている。
「食う気満々だな。魔法でも撃っとくか」
とりあえずで爆発する火球をぶち込むセイス。
火球が地竜の舌に触れた瞬間、地竜は肉片と血をまき散らす。
「グォォッ!」
「痛そうだなぁ」
撃ち込んだセイスはどこか他人事のようだ。
セイスは風魔法で減速しながら着地━━━した瞬間に剣を抜き、地竜に足の付け根に切りかかる。
地竜に剣が触れた瞬間ギリギリと金属と金属がこすれるような音がして火花が散る。
「うっそだろおい」
セイスもさすがに動揺を隠しきれない。
剣を見れば刃こぼれをしている。
「手入れを欠かしたことはないんだがなぁ」
昔の木剣ではない。
普通の剣もあったほうがいいだろうと買った鉄の剣だ。
「フシュッー!」
地竜は鼻息を荒くしてこちらを笑うかのように見ている。
セイスが剣を構えると地竜は息を大きく吸い動かなくなる。
その隙にセイスが目に剣を突き刺そうと地竜に近づこうとする。
剣が地竜にあと数メートルで届くというところで地竜が動いた。
大きく口を開け喉の奥から火を吐いた。
「あちっ、服がっ!」
セイスの服に火が付く。
それと同時に森の木々にも火が付く。
セイスは急いで水魔法を使い服を消火する。
木々はめらめらと燃え盛りあっという間に葉っぱが消え見晴らしがよくなる。
「ブレスかよ。おとぎ話に出てきた火竜と同じじゃん……ん?こいつ地竜のくせしてブレスを吐くのか。ととっ、あぶねぇ」
地竜が体を回転させ尾を鞭のように使う。
地竜が止まった時何かがはじけるような音がした。
「あれにあたってたら……下半身と分かれてたかもな……」
地竜は前足を踏み鳴らした。
踏み鳴らした前足から魔法陣が出てきてセイスの足元にいくつもの岩の針が生えてきた。
セイスが空中へ飛ぶと今度は逆の足で地面を踏み鳴らす。
そうすると生えていた岩針が空中へ射出される。
そのうちの一本がセイスの腹をえぐる。
「ぐっ……」
いままで自傷行為をたくさんしてきたといえど腹をえぐられるのはハジメテの経験なので痛い。
まずもって治るかどうかもわからない。
とりあえず着地をする。
10秒ほど立ったが血が止まらない。
段々と体が冷えていく。
そんな様子を地竜は面白そうに見ている。
「意識が……」
セイスの意識が朦朧としていく。
走馬灯のように今までの記憶が蘇る。
アストリアと初めて出会った時。
アストリアと街に遊びに行った時のはなし。
アストリアの誕生日に魔道具を渡した話。
アストリアと……。
(ははっ、アストリアのことしかねぇや)
セイスの脳裏にはアストリアのことしか思い浮かばない。
セイスは無性にアストリアに会いたくなった。
(生きなきゃ)
セイスの生存本能が働き始める。
地竜を殺すため、最大威力の魔法を放つ。
「火風地複合魔法・地雷」
唱えた瞬間地竜の足元にはいくつもの魔法陣が敷かれており、その数は100を超えているようだった。
その魔法陣を警戒して地竜は一歩も動かない。
それを見越してセイスは新たな魔法を組み上げる。
「水風複合魔法・落雷」
セイスは落雷の原理なんか知らない。
だが雷が降るのはいつも雨が降っているときだったから水と風魔法で放とうとしたのだ。
結果として雷を降らすことに成功した。
その雷が目の前に降ってきて、地竜は一歩後ずさりした。
一歩でも動けば魔法陣が起動する、ところで地竜は動いてしまったのだ。
「グガァァァァァァァ!」
「空が近いなぁ」
魔法陣が起動して爆発した。
地竜はところどころ鱗が剥げている。
セイスは空を舞っている。
ぶっつけ本番で使った魔法だったためどのくらいの威力かも知らずに撃った結果、セイスは爆風に巻き込まれ空に飛ばされた。
シュタッ━━━っと華麗に着地したセイスは地竜の状態を確認して剣を抜き、構える。
(鱗が剝がれた場所に切り込めばいけそうだな)
さっき死にかけたというのにセイスはかなり冷静だ。
それに対し地竜は少し焦燥しているような目をしてセイスを睨む。
10秒ほど膠着状態が続いた。
先に動いたのはセイスだった。
セイスは剣先を寸分違わず露出している肉の部分を穿つ。
地竜が動き出す前に剣で貫かれ動くことができなかった━━━が地竜自身を巻き添えに地魔法を放つ。放つはやはり岩針。
しかし地竜の生存本能がそれを強化する。
今度はセイスが貫かれる。それも上下が分かれるように。
セイスの上半身が宙を舞う。
セイスの意識があるのは上半身の方。
「痛い!だがそんなことはあとだ。風魔法・カット」
魔法を唱えた瞬間に地竜も上下別れる。
「グォォォォ!」
「これで俺もお前も終わりか……」
セイスは地面に着く前に魔法を使う余裕はなくべしゃりと落下した。
セイスの体は再生してこない。
血があふれ出していく。
それは地竜も同じだった。
セイスは死なないように治癒魔法を自身にかけ続ける。
かけ続けると同時にこの世界に悔いを残さないように最後の晩餐を食べに這いずる。
食らうは地竜の腹肉。
焼き加減?生で食うにきまっている。
鱗なんてないもののように地竜の肉を食いちぎる。
「あぁ……うまい……」
そうしてセイスの意識は遠のいていった。
セイスの悪癖がついた瞬間であった。
「…それでどうして生きてるの?」
「その言い方は死んでてほしかったのか?」
「違うわよ。下半身と泣き別れしたのに今のセイスには下半身があるじゃない。普通の人間はそこで息絶えて死ぬわよ」
「地竜の肉を食べた後目を覚ましたら下半身があったからわかんない」
「…地竜の肉をどうやって食べたの?焼いたの?」
「……生」
「今すぐ吐き出したほうが良いんじゃない?」
アストリアは即答してきた。
セイスの脊椎らへんをバシバシ叩いている。セイスは痛くも痒くもなさそうだが。
よく見ればアストリアに泣いた跡がある。
「アストリア。何で泣いてたの?」
「!?泣いてなんか…ないわよ?」
「そういえば最近も泣いた跡をみたような……それも1ヶ月以上前から」
「…」
アストリア、黙っちゃった。
そしてみるみるうちに顔が赤くなる。
見られてたことが恥ずかしいらしい。
バシバシと叩く手の力が強くなった。
「やばい。眠くなってきた。土の中で眠りたくない。出してぇ先生ぇ!」
「ふむ…アストリアさん、出せますか?」
「…余裕です」
アストリアは顔が赤くなったまま答える。
セイスを取り出したアストリアはセイスを背負う。
セイスの反応はない。どうやら意識を失ったようだ。
本日2度目の気絶!
アイン等は地竜のことについてまだ話し合っているようだ。
アストリアはひっそりとセイスを自室に連れて行くのであった。
セイスが目を覚ましたら外から鳥の鳴き声がする。そしてここ3ヶ月聞いていなかったアストリアの寝息も。
アストリアの寝息が聞こえてるということはアストリアが隣で寝ているということだ(?)。
「????何でアストリアの部屋?」
セイスは不思議でたまらなかった。
気絶したのは土の中だったはずなのに、起きたら柔らかいベッドの中。
土は一欠片もついておらず、血もついてない。
つまりは誰かが風呂に入れたということ。
しかも着替えさせている。
「もうお嫁に行けない!」
ふざけたことを言いながら体を起こし辺りを見渡す。
アストリア以外誰もいない。
「アストリアが俺を風呂に入れて、着替えさせた…?」
「私じゃないわよ!」
「!?」
横からの声に驚いたセイス。
さっきまで寝ていた少女がいつの間にか目を覚ましたのだ。
アストリアを見れば髪はぼさぼさで寝間着も少し乱れている。
「………婚約者がいるのに他の男と寝ていいの?」
「私ね?婚約者なんかよりセイスのほうが好きよ?」
「え?」
「大体婚約者って言っても向こうが私に「俺と結婚しろ!」って言ってきただけよ?それを周りの大人が真に受けて婚約者って言ってるだけで私は婚約者になるなんて言ってないわ!」
「へー。じゃあ面白いことを一緒にしようか?」
「やる!内容は?」
「前提としては、俺が生きていることだけどね。まぁまず結婚することになってるのはいつ?」
「向こうが15になったらね」
「後6年ぐらい?」
「多分?」
「じゃあ6年後に行われる結婚式で」
「うん」
「アストリアを誘拐する」
「うん?」
「最悪相手を殺す」
「セイス、死の淵まで行っておかしくなったの?殺人は犯罪よ?」
「誘拐したら犯罪者だよ?」
「それもそうね。それからどこに行くの?」
「旅でもしようかなぁーと」
「旅!楽しそうね!」
未来の犯罪計画が8歳と9歳によって立てられていく。
誰も知ることのない計画。相手を知らずに。
後に呼ばれるこの事件の名は邪英雄誘拐事件。
「ところで地竜の死体どうするの?」
「あっ、忘れてた。肉…食べる?」
「生じゃなければ良いわよ」
「え?生がおいしいのに…」
セイスが壊れ始めた。
さっさと着替えて地竜のところに2人は行った。
行く途中、給仕達はセイスがアストリアといっしょにいるところに安堵した様子を見せていた。
地竜のところに行くと、ジャミルとアインが話し合っていた。
「おお、セイスとアリアじゃないか。どうしたんだ?」
「地竜をどうしようか考えに来ました」
「そうか、それにしてもどうやって一刀両断したのだ」
「魔法ですね」
「便利だな魔法」
「えぇ」
そう言いつつセイスは地竜の上半身の断面に行く。
次の瞬間、セイスはずぶりと手を肉に突っ込んだ。
「セイス!?」
アストリア、叫ぶ。
だがセイスは止まることなく右手を突っ込んでいく。
何か見つけたのか、手を引き抜いていく。
そうして取り出したのは黄色い宝玉。
セイスの手はまっかっか。
「なにそれって言いたいところだけど、先に手を洗ったほうが良いんじゃない?」
「その前にさ…」
「肉?駄目よ?」
「なぜ分かったし」
「お腹空いてそうだったから」
セイスは水球を作り出し、その中に手を入れる。
すると水球の中が渦巻いていき、赤く染まる。
赤く染まった水球から出したセイスの手は綺麗になっていた。
その水球に皆が驚いている。
「よし、洗ったしこれの説明をしようか。これは魔玉って言うものらしい」
「らしい?誰かに聞いたの?」
「本に書いてあった。魔物しか持ってないものだよ。魔力を貯めるものらしいよ。それに魔法の効果を強くする。ちなみに1年前?に買った赤い球も同じ物」
「つまりあれって竜の魔玉?」
「そうなる」
「ところでセイスよ」
「なんですか伯爵様」
「アストリアには敬語は使わないのか?」
「( ^ω^)・・・」
「なんだその顔は」
「説明したのでそれでは。地竜の肉以外は好きにしてかまいません」
「おい待て!アストリアもついていくんじゃない!それに地竜の解体も簡単ではないのだぞ!おい!聞いているのか!」
セイス、上司の言葉を無視する。
セイスは既に地竜の肉のことしか頭にない。
ただそれが生であることはアストリア以外知らない。
アストリアはただセイスが生肉を食べるのを阻止するだけだ。
「あ、そうだ。アストリア」
セイスはアストリアの方を向く。
「どうしたの?セイス」
「これをあげるよ。俺が今一番欲しいのは風、天竜の魔玉だからね」
「いいの?」
「いらないならいいけど……それに昨日誕生日だったでしょ?」
「いる!」
「お、おおぅ……」
食いつきがすごい。
「あ、そうだわ!セイスにあげたいものがあるの!」
「あげたいもの?」
「そうよ!3ヶ月前に買ったの!狐って動物の顔に似せたお面らしいわよ!」
「いいねこれ」
「ふふん!そうでしょ!?」
「ありがたくもらうよ」
セイスはアストリアからもらった仮面を早速つけてみる。
目の部分に穴は開いてなかったが、いつもの視界だった。
どうやらどの属性かはわからないが魔法を付与しているらしい。
セイスはアストリアから贈り物をもらったという事実で頬が緩んだ。
アストリアにはセイスの顔は仮面で隠れて表情はわからなかったが、雰囲気から嬉しいということがわかってこちらも頬が緩んでいた。
そしてセイスはつぶやく。
「復讐に必要なものはあらかたそろった。あとは自分自身を強くするのみ」
1年と半年。
セイスの最初の計画が始まり、終わる。
自分の作品読み直して思った。読みにくい。
しゃべってる部分と説明部分が常に1行しか開けてないせいで読みにくい。
次からは2行にしよう。
今回はめんどくさい。
それにしてもやったね!
あと少しで1章終わるよ。
この物語が終わるのは妄想が止まった時!