シグマとの時間
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「よう、シグマ!元気?」
あいつが振り返る。
「わ!久しぶり!」
「お前故郷に帰ったんじゃなかったんか?」
彼の故郷はここからずっと北にある。俺がたまたまそこに通りかかった時、魔法使いだった彼を助けてそこから一緒に旅するようになった。
「いや、この辺に用があってさあ。今はその帰りなんだよ」
「へぇ、最近どうなの?」
「暇を持て余してる感じ」
あいつもか。やはり悩みは一緒らしい。
「これからどうするん?」
「別に?ノープラン」
「じゃあどっかで遊ぼーぜ」
「いいよ、どこ行く?」
「さぁ」
お互い世間知らずだ。遊び場所を知らない。すると目の端に看板が見えた。
「この先100メートル 24時間営業 希望の湯」
希望の湯か…小さい頃ひげじいによく連れて行ってもらっていた。確か自分が小さかったのもあるがすごく広かった気がする。他に行くとこもないし、とりあえずいってみるか。
「温泉か…旅してるときよく行ったよな。」
奇しくもあいつと同じことを考えていたようだ。旅をしていた時がもう過去のことになりつつあることが驚きである。まだ2日しか経ってねぇぞ?
その温泉は記憶通りとても広くて色々な種類の風呂があった。いわゆるスーパー銭湯ってやつだ。シャワーの位置、風呂の種類、全て記憶通りだった。
風呂に入っている間いろんなことを話した。。出会った時のこと、強かった敵のこと、1番良かった銭湯のこと。
風呂から出たら店主がコーヒー牛乳を出してくれた。平和をもたらした俺たちへのお礼だそうだ。断るのもなんなので快く受け取り、休憩所で休みはじめた。
そんなことをしているうちにもう日が暮れかかってきた。シグマも家にそろそろ帰らなければいけないようだ。
「ありがとよ、シグマ。今日は楽しかったぜ」
「おうよ、グレイ。またな、お互い暇つぶし頑張ろうぜ」
彼も俺のことを名前で呼んでくれる数少ない人物の1人だった。やっぱこう呼ばれないとしっくりこないな。
そんなこんなで今日も1日が終わっていく。心なしか今日は1日が短く感じられた。
家に帰ると母がこんなことを言った。
「友達は作れたの?」
あ…すっかり忘れてた。俺の記憶からそんなことはシグマと再開したあたりからすっぽり抜けてしまっていた。まぁよい、明日行けばいいんだ。
他にすることもないので今日も早めに眠りについた。
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