チート能力とアイドル誕生
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ベッドで寝転がる。
「これでいいのか?」
自分に問いかける。自分の名前で呼んでくれる人が母親だけ…虚しくないか?
そうだ、俺には必要なんだ。俺の名前を呼んでくれる誰かが、母親以外の誰か、友達でも、恋人でもいいから…
明日からは友達探しに出掛けてみるか。友達ってどう作るんだ?とりあえず人気者になってみるか。
「誰か助けて!」
不意にそんな言葉が聞こえた…外を見ると空が赤く染まっている。火事か?俺は外へと飛び出した。
人々の喚く声が聞こえる。
兵隊も火をじっと見つめるままだ。消防士もいねぇのかよ。どうなってんだこの国は!平和すぎるのも問題だ。
ふと、旅をしていた頃を思い出す。ある町に雷が落ちて火事になった時に、俺の能力が目覚めて消火したんだっけ…そして俺の能力は…
ーメイクザワールド
世界の創造、そう俺は自然界の何もかもを自由に操作できる。そしてあの時は確か…
「メイクザワールド!雨よ、ここに降り注げ!」
雨雲を呼んで消火したんだ。俺の能力は平和になってからも使うんだなぁ…
不意に嬉しい気持ちに襲われた。俺の存在意義があるんだ。雨雲の隙間から少し太陽が見えた。突然の雨で人々は驚き、戸惑っていたが、すぐに俺への賞賛の渦が巻き起こった。
ありがたい。
雨粒たちは火を恐れずどんどん火の中に入っていく。
約6時間ほどかかり、日は完全に消えた。雨雲たちに礼を言い、空を見上げる。
晴れ渡っている空がさっきとは違う赤色を見せている。夕方である。黄昏色に染まる街には悲しみと、愛が同居していた。聞こえるのは今日2回目の勇者コール。もはやアイドルである。こんなに俺は人気者でいいのだろうか。おっといけない、ナルシストのようなことを口走ってしまった。情けない。勇者たるもの心を落ち着けていつも冷静でいなければいけないのに。いや、俺はもう勇者じゃない。もう良いのか。そうだアイドルになろう!アイドルなんて人気者の塊みたいなもんだ。友達もできるかもしれない。
思い立った俺は、群衆に手を振り、彼らの方へと向かっていく。握手やサインを求める声に快く返事をする。
「でもさ、なあみんな、聞いてくれるか?俺の名は勇者じゃなくてグレイというんだ」みんな初めて聞いたみたいな顔をしている。しかしすぐに戻り、「グレイ!グレイ!」グレイコールが始まった。そしてまた、俺はファンサービスを始める、老人も子供も兵士も農民もみんな笑顔である。そうこれが本当の平和なんだ…
アイドルグレイ誕生の瞬間であった。
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