王宮でのこと
ご覧いただきありがとうございます!モチベになります!
王宮にはそれはそれは色々な人がいた。
化粧が濃い中年の女性。
見窄らしい姿の行商人。
おそらく結構偉い兵隊。
そんな人々が「あっ」と言う顔で俺を見るのにはなんとも言えない嬉しさがあった。
そうだ。俺は有名人なのだ。
ようやく俺の凄さを実感してきた。やはり俺が魔王を倒したのも夢ではなかったらしい。そう、英雄になって地位も名誉も全て手に入れたはずなのだ。
しかし満たされない。この気持ちはなんだろう。
前から派手な服を着た髭の長い老人が近づいてきた。あの人は見覚えがある。小さい頃お世話になったひげじいさんだ。
長生きで物知りな彼への敬意を込めて皆そう呼ぶ。
俺は小さい頃彼のところによく遊びに行って勉強したりご飯を食べたりしていた。
「坊、帰ってきたか。待ってたぞい」
ひげじいが言う。
「ただいま」
温かい声だ。彼が好かれる所以であろう。
「ん?どうした?顔色が悪いが。」
ひげじいにも見透かされた。そんなに顔に出ているのだろうか。そんなことを考えていることも見透かされそうで、正直に話す。
「贅沢な悩みじゃ」
その通りだ。しかしこっちは真剣に悩んでいるんだ。それはないだろう。
「もっと自分に向き合え、旅に出ている間どんな理由で生きたいと思ってたんじゃ?自分が楽しいと思うことを見つけなさい」
一瞬じーんと来た。しかし一瞬のことである。それができないから困ってるんだ。まんまと言いくるめられそうになった。恐ろしい人だ。
そのことを言うと、
「黙れい!根性じゃ根性!自分のことくらい自分でできなくてどうするんじゃ!仮にも勇者なのだろう?」
時代遅れな人だ。根性論なんてもう流行りじゃないのに。ひげじいは物知りなのにこうゆうところがあるからな。そういうところが魅力なのだが。
とにかくこれ以上の会話は無理そうだったので今日のところは大人しく退却する。
ー根性…か…
やはり俺には根性が足りないのだろう。最近本当に思う。
空を見上げるとやはり燕が飛んでいる。たしか子供を育てるためにあんなにせっせと働くそうだ。幼い頃ひげじいから聞いた。
俺にもそうやって夢中になれる何かがあればこの白い紙のような時間を明るく塗れるのかなぁ。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!気に入っていただけたなら光栄です!