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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
9/49

色々付けちゃる!

 さて領主であるエリック邸から宿までダンゴに送って貰った私、帰ってくる間もダンゴから質問攻めにあったけど今度ゆっくりねって躱して逃げるように部屋に入った、3人はまだ戻って居らず今頃は豚野郎の討伐も終わってギルドで飲んでいるのだろう。


 私はエリックに頼まれた腕時計の制作に取り掛かる、王族の腕時計はシトリンやヘリオドール、クリソベリル辺りをミスリルと合わせてみよう、純金とダイヤも合わせてみるか、錬金釜に素材の色を強く出すウェッジトレントの樹液を混ぜてまじぇまじぇ、何種類か作ったけど、金とダイヤの合金が1番色が鮮やかだ、ってか鮮やか過ぎて眩しい、これにミスリル混ぜて硬化させてみるか、うん、ちょうどいいんじゃないかな?強度もミスリルが入って魔力が魔石から流れたら硬くなるし、良いんじゃないだろうか?


 文字盤には12時15時18時21時に大きめダイヤ、その他に小さいダイヤをはめ込む、時計の針も同色の合金、王妃のは王様の小さいバージョン。


 王子のは文字盤のダイヤをブラックダイヤにして少しだけ見た目を変えてみた、後はガラスに王家の紋章を細工して暗闇で紋章がガラスに浮かび上がる仕様にした、王族の腕時計には毒無効の魔法陣と聖属性の癒し効果のある魔法陣、これは疲労回復に役立つ、裏機能として王妃には若々しく肌ツヤが良くなる魔法陣と王様には魅力アップの魔法陣を仕込んでおいた、魅力的なイケおじになるだろう。


 未来ある王子の物は害意関知の魔法陣を仕込んだ、これは王子を利用しようとか、暗殺しようとか害意のある人間が近付くと紋章が浮かび上がりビリビリの刑にする、王子の周りでビリビリしたら害意があったと判断出来る、だがこれには裏があり、民を苦しめるような圧政を敷こうとすれば自分がビリビリの刑にあう、頑張れ王太子。


 王族のは仕上がった、次は四公爵、こっちは簡単だサファイア、アメジスト、エメラルド、ルビーをミスリルに合わせる、ウェッジトレントの樹液を混ぜて色を強く出し、文字盤もそれぞれの宝石を嵌め込んだ、一応毒無効は高級モデルのデフォにしたよ、後はそれぞれの魔法の威力アップと危険感知を魔法陣で組み込んだ。


 後で言われると面倒だから一応公爵家の跡取り分としてメンズモデルを各1つ、毒無効と危険感知の魔法陣を付与、公爵ともなれば王族の近くにいるからね、危険感知は害意関知と違ってビリビリは無い仕様、紋章は浮かばないけど代わりに本人にしか聞こえないアラームが鳴る、自分で対策しろって事。


 害意感知は装着者に絞った物だから有効範囲が狭い、遠距離の武器や広範囲の魔法には対応出来ない弱点がある、危険感知は有効範囲が広い代わりに反撃とかは出来ない、危険のある方角まではわかるが距離はわからないと一長一短だ、準備出来るだけ有難いと思って貰うしかない。


 ついでのついでだ、エリックモデルも作ろう、これはガッチガチにしてやる、ミスリルとオリハルコンの合金にダイヤを混ぜた1番硬質な素材で銀色を鮮やかに出すためウェッジトレントの樹液はマスト、エリックの家紋も暗闇光る仕様にしてここまではだいたい同じ、次からが本番で


【魅力アップ、視力アップ、聴力アップ、魔力アップ、体力アップ、筋力アップ、スピードアップ、閃きアップ、運気アップ】のオールバフ付き。


  害意関知、毒無効、隠密と唱えれば認識阻害の魔法陣が発動してエリックの姿が消える、消える時間は10分と短い。尚且つ暫くはエリックと別人に姿が変わる、所謂奥の手。


 常時発動しているとかなり魔力を食うから、通常時は毒無効と害意関知だけ発動させた方が良い、オールバフはエリック仕様に付けたベゼルを回せばオールバフが発動、その状態で「隠密」を唱えれば認識阻害と姿が消える。


 どの時計にも1つ共通点がある、私に無理やり何かをやらせようとするか嫌がらせと私が判断すると魔法陣に拘束されて魔力切れまで魔力を吸い尽くし、その魔力で死ぬ程怖い幻影魔法を見せられるトラウマ必至のジョーカーモード付き、えへっ。


 思いの外早く終わった、そろそろみんな帰って来たかな、マーチも居ない、初めてかもボッチ、なんだろちょっと寂しくなっできたぞ。


 寂しくて工房の外に出た私、こういう時に遠距離通話出来るアイテムって必要だよな、人恋しいなんて何年ぶりだろう、こういう時は……酒だ!


 1番近いのは~アナの店だけど1人で行くにはちょっとアレだ、前にガトーがちょっと落ち着いたバーが市場の先にあるって言ってたから行ってみようかな。


 そそくさと着替え、縛っていた髪も下ろして突っ張った頭皮をマッサージ、はぁ楽になった、ヨシッ飲むぞ!


 市場の先だから市場を抜けるのが1番だシャレじゃないよ、元々市場には興味があったからね、食材自体は困ってないけど味や調理法が見たいのと市場調査だ、まだ金銭の感覚がイマイチで銀貨1枚あれば食事が出来る程度しか分かってない、アナの店は高級店らしいからあそこの値段は当てにならないからね、ポイポイと道の脇に居るスライムに錠剤を投げつつ市場に向かう。


 やはり色んな人から見られている、慣れないなぁこの感覚、それ考えたらアイドルとか芸能人って凄いと感じたよ、常に見られているのだから。


 段々とすれ違う人が多くなってきた、市場が近くなったのか、葦で作ったような籠を持った人が多くなってきた、こういう雰囲気好きだなぁ、台湾に旅行行った時を思い出す。


「バチンッ!ぎゃっ!!」


 真後ろでそんな音と声がしたので振り向くと、小汚い少年が痺れて動けなくなっていた。


「あ~このバックを開けようとしたのね、罰が当たったね、これは私以外が開けようとすると電気が走って痺れるんだよ、子供のうちからそういう事しちゃダメよ?」


 スリ対策で仕込んだ魔法陣が発動したみたいで動けない少年にちょっとお小言を言うと建物の影から女の子が割って入って両手を広げた。


「お兄ちゃんに酷いことしないでっ!」


 周りの人が一斉にこっちを見る、あちゃぁ、これ見た目私が悪者じゃん、しかし露店の店主から助け舟。


「その小僧がお嬢さんのバックをひったくろうとしたんだろ、後ろから近付くの見てたからな、自業自得だ。」


 それを聞いて通行人は関心を無くしたのか歩き出した。


「さて、どうしたもんかな~まだ小さいガキんちょだし、衛兵に突き出しても丁寧な扱いはされないだろうし。」


 しゃがんで悩む私、目の前にはまだ両手を広げて涙目の女の子と倒れて動けない少年、しばらくにらめっこしていると後ろから声を掛けられた。


「ヨーコ?何してんのそんなと……あ~スリか、スラムの子供だね、まぁ生きるためかもだけど相手が悪かったね」


「メルティこんにちは、まぁスリ対策が発動しちゃってさ~」


 パンパンとヒップバッグを叩くと


「そのバックヤバいやつなんだね、その子達を衛兵に突き出したら奴隷行きだね、ろくな買い手もつかないだろうし野垂れ死ぬのが関の山だよ。」


 ん~どうしよう。


「おじさんその串焼き10本ちょうだい、メルティも食べる?」


「はい?えっ?このタイミングで串焼き買うとは思わなかったけど食べる。」


「おじさん追加で10本」


「そんなに食べれないよ!?」


 メルティから視線を女の子達に戻して


「お腹減ってんでしょ?空腹になるとロクな事考えなくなるから、私達は1本あれば良いからさ、残りは君達が食べてくれる?ねぇメルティ、どっか座れるところある?」


 メルティはやれやれと呆れ顔、だって仕方ないじゃんちょっと同情しちゃうもん。


 メルティに案内されたのはちょっとした広場、私は動けない少年を小脇に抱えて女の子と移動した。


「そろそろ動けるんじゃない?」


 少年は片膝をついてこっちを睨む


「そんなに睨んだって怖くないわよ、糞ガキ!悪い事したって自覚はある?」


 糞ガキの所で殺気を込めたらメルティがビクッとしていたがアンタがビビんなよ、少年と女の子はガタガタと震え始め涙目だ。


「反省した?」


 コクコクと頷いて私を見る2人。


「女の子に守られてんじゃないよ!ったく、ほらこれ食べなよ私の気が変わらないうちに」


 葉の包みごと串焼きを渡すと、結構な勢いで2人が食べ始めた。


「ねぇメルティ、スラムにはこんな子いっぱいいるの?」


「ん~いるって言えばいる、でもだいたいスリしたり物を盗んで捕まって奴隷になるか、捕まった時に殴り殺されるから数は減ってると思う。」


 あちゃぁ思っていたよりヘビーな返答、かと言って私に何か出来る訳でも無く積極的にしてやる気も無く、あ、そうだ。


「ねぇ少年、スラムにあなたくらいの子供ってどれくらいいるの?」


「30人くらいです、俺より大きいヤツ入れたら50人くらいです、大きいヤツらはだいたい冒険者の荷物持ちとかやってるけど俺たちはまだ出来ないから。」


 30人か、足りるかな。


「よし、その場しのぎかも知れないけどあなた達に仕事を依頼します。」


「ちょっとヨーコ?」


 メルティが止めるのもわかる、でもさ私の目に入っちゃったんだよ、偽善だって

 わかってるし解決にならない事も知ってる。


「明日の朝その子供達全員集めなさい、心配はいらない、ちゃんと報酬も出すわ、簡単なお仕事だけど体力がいるかもしれないから食事としてパンを1人2個出すわ、報酬は大銅貨1枚と銅貨5枚、要するに銀貨1枚ねサボったらわかるからそのつもりで、条件を飲むなら今日の事は許します。」


「本当に!?やる!やりたい!」


 女の子の方が食い付いた。


「えぇ、本当よ、誰から見てもわかるようにお揃いの服も支給するから大切にするのよ?それで少年はどうするの?やるのやらないの?」


「信じていいんですか?本当に。」

 

 そりゃごもっとも。


「えぇ、今の危ない生活を出たいなら信じなさい」


「わかりました、全員に声掛けます、明日の朝ここで集合で良いですか?」


「それで良いわ、もう一度言っておくけどサボったらわかるからね、仲間にもサボったら2回目は無いと必ず伝えなさい、少年あなたをリーダーにします、名前は?」


「カイト」


「わかったわカイト、疑ってる子は無理に集めなくて良いわよ、カイト達が変わっていけばその子達も仲間に入りたがるでしょ?そうしたらちゃんと仲間に入れてあげなさい、もしもお金が脅されたりして取られたら、すぐに私に言いなさい、取ったやつには後悔させてやるから。」


「怖っわ、ヨーコ超怖いんだけど」


「頑張って働いたお金を横取りされたら嫌でしょ?そりゃ怒るわよ、相手が誰でも私には関係ないし、それじゃカイト頼んだわね。」


 カイトと女の子は小走りで去っていった。


「ヨーコあの子達に何させるの?犯罪はダメだよ?」


「そんな事しないよ、私ねこの街は少ししか知らないけど、第一印象が臭かったの、メルティも気にならない?」


「あ~ダストスライム臭か、確かに遠征後に帰って来ると気になるね、でも仕方ないかって思ってる。」


「私、その臭い匂いを消す薬を作ったの、でも有効期限やスライムの観察なんて1人じゃ出来ないじゃない?かと言ってギルドに依頼を出すには楽な仕事過ぎるし、それならあの子達にやってもらえば良いってね。」


 メルティはクエスチョンマークで頭を傾げていた、カイト達と別れた私は市場を見て周る、何故かメルティがくっついて来ているがガイドとして役に立ってくれるから感謝しかない、途中にあったパン屋でコッペパンみたいなパンを100個注文した、明日の朝には取りに来ると伝えお代を支払う、大銀貨1枚で100個買えるって事は1個銅貨1枚か。


「メルティ、生地が売ってるところ知らない?そんなに良い生地じゃなくて良いから」

 

「あ、うち、実家が服屋だよ、生地も沢山扱ってるから多分大丈夫。」


 なんとメルティの実家は洋服屋さんだった、なら何故メルティは冒険者に?まぁ色々あるんだろうから聞かないでおこう。


「私が家の仕事じゃなくてなんで冒険者やってるかと思ってる?」


 エスパーかよ!その通りです!


「センスが壊滅的なのよ、私が生地を触ると糸になる。」


 ブフッ!センス以前に妙な才能だからそれ。


「あ~色々あるよね、うん。」


「ちょっとヨーコ!今めんどくさいとか思って適当だったでしょ!」


「ソンナコトナイヨ」


「ありありじゃん!全くもう。」


 そんなかんなでメルティの実家に到着、結構デカい店だな、上が住居かな?


「ただいま~お客さん連れて来た~」


「あらメルティがお客様を?珍しい、初めましてメルティの母でマルティです、今日はどんな物をお探しで?」


「ヨーコと申します、買いたいのは洋服ではなく生地を大量に欲しくて、未成年の服が50人分作れるくらい、単一色で同じものを……ありますか?」


 マルティは少し悩んで


「今あるのだと単一色なら2種類ね、でも両方とも50人分には少し足りないかも知れない、この濃い青と薄い黄色の生地かしらねぇ。」


 本当は同一が良かったんだけど、男女で分けるか、青が男の子で黄色が女の子っ感じで。


「それじゃそれを両方ください、後ワッペンとかの注文は可能ですか?デザインは今書きますので。」


「えぇ大丈夫ですよ、量にもよりますが仕上がりは10日から15日も頂ければ」


 ちょっとかかりすぎな感じもするけどまぁ何とかなるでしょ、最初はちょっと暑いかもだけど帽子無しで頑張ってもらってワッペンが仕上がったら帽子にワッペン着けてあげれば大丈夫かな。


「はい、お願いします、数は50で今デザイン画を描きますね」


 そして描いたデザインはスライムに花が着いた物。


「こちらですね、あら変わったデザインね、でも手間がそんなにかからないから50なら10日で仕上げますね。」


「ありがとうございます、お代はおいくらですか?」


「生地が大銀貨6枚とワッペンが大銀貨2枚です、メルティのお友達なので端数は切らせていただきました。」


 ナイス友達価格、まぁそうは言っても相場が分からないからさ、とりあえず感謝しておこう。


「助かります、ありがとうございます、生地は持ち帰りますのでそのままで結構です。」


 ヒップバッグからリュックを取り出しリュックに生地を収納した。


「相変わらずデタラメよねその鞄、あぁ私もダンジョンでゲットするんだそれ!」


 メルティの意気込みを聞いてマルティが呆れ顔をしていた。


「メルティはこの後どうするの?」


「特にやる事ないかな、元々お腹が減ったからちょっと市場を覗いたらヨーコを発見しただけだし」


「それじゃ飲み行こ、市場の様子も見たいし」


「良いけど市場で良いの?お酒はあんまり良いの置いてないよ?」


「最悪私が出すよ!」


 ヒップバッグをパンパン叩く。


「んじゃ行く~」


 市場に向かう私達、行く先々でメルティが声を掛けられる、地元っ子だもんね、なんか羨ましい。


「だいたい市場で飲む時はあそこのテーブルに陣取って料理を買ってきて飲むの、適当におすすめ案内するね」


 メルティに案内され5~6店舗は回った、屋台村みたいで楽しいし何より安い、メルティがお腹空いてるって言ってたから結構な量を買ってきたけど銀貨3枚でお釣りがきた、一店舗平均銅貨5枚、日本円で500円のおつまみシリーズ、色々あって楽しい。


「エール買ってきたよ、多分1番まともなエールだと思う」


「ありがとう、んじゃ乾杯しようか、乾杯!」


 あぁ、なるほど、アナの店が高級店て意味がわかった、気が抜けたエール所謂ション〇ンビールって親方が言ってたやつだ、確かに美味しくないし温い、でもこれも勉強!すぐに飲むのを止めた。


「ワインだすね。」


「だから言ったじゃん、まだ白いのある?私あれ飲みたい。」


「白ねわかった。」


 木で作ったワイングラス風の容器を出して白ワインを注ぐ、フレッシュな香りが先程のエールの嫌な思い出を忘れさせる。


「やっぱこれだね」


 ロッチのお菓子のフレーズだよメルティ


「喜んでもらえて嬉しいよ、さておつまみ食べるよ、これから行こうかな。」


 手にしたのはナスのような野菜とトマトみたいな野菜の串焼きにチーズがかかった物、チーズに癖があるけど中々の味、スパイスが効いてる……ほりなし?っぽい、そう感じたら美味しくなってきた、トマト風野菜の酸味とチーズにほりなしのスパイス、合わないわけがない、ワインが進む、チーズでまったりした口をワインでリセット、次はモツ煮込みね。


「赤も出すね、飲めるでしょ?」


「飲む飲む~」


 モツ煮込みは色んな部位が入ってるっぽい、牛もつっぽい食感、あぁこれにさっきのほりなしのスパイスかけたい、スパイス無しでも美味しいけど、赤ワインをキュッと一口、もつの脂を胃に流し込む。


 次は蒸した芋にやっぱりチーズが乗っている、赤ワインが無くなる奴だ、芋を割ってチーズを絡める、じゃがいもだね、まさにそれ、ちょっとパンチが欲しいからヒップバッグから胡椒を取り出す。


「うわっ!胡椒じゃん、お金持ち~私にもちょうだい。」


 芋に胡椒をかけたら絶品に変わった、この癖のあるチーズは香辛料にピッタリハマる、ワインが進む~


 メルティも同じ事感じたんだろう、じゃがチーズを追加で買いに立ち上がる、その間に私は別のつまみをつっつく、次は普通の串焼き、何の肉だろうと一口食べて悩んでるとメルティが帰って来た。


「オーク肉の串焼きだよ、今日ギルドに入ったみたいでさ、市場のおっちゃんが喜んでたよ」


 オーク肉美味い!豚と牛の間かな、脂は少しモタっとするけどバラ肉なんてそんなもん、バラ肉かは不明だけどね、柔らかいのに肉の歯応えはちゃんとある、これにも胡椒をフリフリ、うまーし!!ちょっとモタついた脂がスッキリ、赤ワインが空になったので追加を出す、白ワインはメルティが抱えちゃって独り占め、大丈夫だよまだあるし。


「ヨーコと知り合って私の幸福度が上がったよ、胡椒をこんなに贅沢に使えるなんて、ワインも絶品だし食べ飽きた「いもちー」も別物になるんだもん。」


「ふふっ、んじゃそれあげるよ、まだあるから、胡椒は結構持って出て来たんだ。」


「本当に~ヨーコにちゅーしたい!ありがとう~」


 やめなさい、可愛いけど本当にして来そうだったから、胡椒付きのオーク肉を近付けて池の鯉みたいな口にポイッと投げ込んだら手で口を押さえてビックリ顔、すぐに手元のオーク肉に貰った胡椒をフリフリしてパクっと行った。


「オーク肉がやっべぇ!おかわりしなきゃ!ヨーコは?」


「食べる!」


 小走りでオーク肉の屋台に行くメルティ、本当にポンコツじゃなきゃ可愛いのに。


「はい、お待ちっ!なんちゃって、そう言えば知ってる?今日すっごい綺麗でカッコイイ人が歩いてたんだって、金髪でスラッとしていて、黒の上下の見た事ないけどカッコイイ服きてダンゴっちの店に入ってったんだって、ギルドでも話題になってて「黒の令嬢」とか言われてたよ、受付の子が見たんだって~私も見たかったなぁ」


「それ、多分私。」


 いや、多分じゃなくてそれ私だろ。


「やっぱりか!私ね絶対ヨーコだと思ってたの、なんか顔につけてた?すっごい綺麗な色した唇してたって。」


「ちょっと偉い人に会う予定があったから化粧しただけだよ、メルティだって可愛いんだから化粧したらいいのに。」


 メルティは首を斜めにして。


「化粧って何?」

「マジかおいっ!」


「ちょっとガチ?」

「うん、知らない。」


 私はヒップバッグから化粧水や下地とかファンデ、コンシーラ、アイライナー、口紅を取り出した、メルティ初の御化粧タイム!


「こういうの見た事ない?」

「うん、初めて見た。」


 ちょっと心配なのは肌に合うかどうかだけど……


「してあげても良いけど痒かったりヒリヒリしたら教えてね、洗い流すから。」

「うん、やってやって!」


 本当は洗顔してからにしたいけ……浄化すれば良くね?


「ちょっと浄化するね、毛穴の汚れも取れるからさ。」

「出た~私が欲しい便利アイテム!」


 はしゃぐメルティに浄化してから化粧水を馴染ませて、下地を塗り待機中にワインを一口、ファンデを塗って気付いた、この子コンシーラ要らなくね?まぁ私も作りものの顔だから使わなかったけど肌が元々綺麗なんだよね、ちょっと日焼けを隠してあげる程度かな。


 パウダーもちょっと軽くキラキラするやつをつけちゃえ、はぁ~可愛いわぁこの子、目の周りどうしよ童顔だから眉毛ブロウのあとしっかり目元だけ大人っぽくしちゃうか、シャドウ入れて~目を開けんな目潰しみたいになんだろ!ウインク出来ない子供かよ!


 待ってこの子ビューラーすら要らなくね?まつ毛なっが、このぱっちりお目目にライナー入れてマスカラを~


 やべぇくっそ可愛くなった!口紅……唇ぷるっぷるじゃん!天然素材羨ましいわ!ワイン飲まなきゃ、酒の力がないと叫ぶわ、可愛いって、でも悔しいから言ってあげねぇ!


「はい、出来た、ヒリヒリしない?」

「うん、大丈夫、でも自分の顔見れないや~残念。」


「はい鏡どうぞ」


「うぇっ!何この綺麗な鏡、そして中に写る可愛い子だれ?」

「あんだだよ……それ天然で言ってんなら小悪魔確定でどっかの星出身でしょ、嫌われるからやめなさい主に同性に。」


「わぁ~別人みたいだ、ちょっと市場のおばちゃんに見せてくる~」


 お構い無しかよ、見せるのは構わないけどワインのボトル持ち歩いてる時点でマイナスだよ、どこの飲兵衛だよ。


 しかし化粧品ってないのか、これ商売になっちゃうけど化粧の仕方説明しなきゃいけないしめんどくさいから後回しだね、それに化粧品錬金術で作ったからちょっと当てずっぽうな感じだし、まぁ鉛塗るような馬鹿はしないけどさ。


「あ~ちやほやされてる、こっち見んな!おばちゃん来ちゃうだろ。」


 手元のワインをグイッの飲み干しかわりを注ぐ、冷めたオーク肉もまた美味し、あれしばらく帰って来ねぇな。


 帰ったらメイちゃんとかにしてあげようかな、しかしクレオパトラの時代から化粧はあったって言われてたのにこの世界どうなってんの?スッピンで勝負できるなんて前世じゃ小学校3年生くらいまでだよ、私が前世でスッピンなんてしたら厄災って言われるよ?顔を小さく見せようとファンデで陰影つけたら舗装工事並に厚塗りになるよ?パリパリで粉吹き芋になるよ、言ってて悲しくなるよ……。


「でもまぁ、可愛い女の子を作るのは嫌いじゃない、化粧を落とすその時までは自分を飾れるんだから、スッピンが良いなんて言う男はカスで童貞、スッピンも良いねって言われる方が嬉しいよ、女の子は綺麗に見せたいんだから。」


「たっだいまぁ~」


「おかえり美人さん、どうだった反応は」


「3回プロポーズされたから来世でねって言ってきたぁ」


 来世の相手も予約出来る化粧の力まじパネェ。


「はぁ~幸せだぁちやほやされて満足じゃ、この顔どうすれば良い?」


「お母さんに見せたらこれ使って落としなよ、お父さんに見せたら泣かれるからやめなさい、そのくらい可愛いから。」


 結婚してしまうって思われるからね、そんなに可愛きゃ誰も彼もプロポーズして来るわ。


「浄化の魔道具?いつもと違うやつだね、貸してくれるの?」


「良いもの見れたからあげるよ、大切にしてね。」


 あげるよと言ったら抱きついてきた、コラ化粧が落ちるだろ、どさくさに紛れて胸揉むな、そして落ち込むな!


「意外とある……負けた……」


 ほら~化粧崩れてんじゃんよ~


「はぁ、スッキリした、ヨーコありがとう、って本当に貰って良いの?私お菓子のお礼も返せてないよ?」


「良いの、友達でしょ?またこうやって一緒に遊んでくれたらそれがお礼だから」


 今日は人恋しくて出て来たから一緒にいてくれるだけで助かったのさ。


「ヨーコが男だったら良かったのに~すぐに既成事実作って押したおじゃなくて押しかけたのに。」


「言い直しても肉食には変わんないからね、猛獣かよ。」


 ガオーとか言わなくてよろしい、崩れた化粧を落として飲み直しリスタート。


「はぁ~今日もたくさん飲んだねぇ」


「飲んだねぇ、帰り送って行くよお姫様」


「わーいありがとう、ヨーコが男だったら今夜は帰りたくないって言えたのに~」


「いいからそう言うの、次の出会いにとっておきなさい、そう思ってずっと取り置きしていた人を過去に1人知ってるけど」


 前世の私でっす!取り置きどころか封印されて忘れ去られたよね。


「そうだねぇ、そろそろそういうのも考えないとかな~」


「年取るとそう言うのを考えるのも面倒くさくなるのよ、美味しいものは美味しいうちに食べてもらいなさい。」


「ヨーコとそんなに歳変わんないじゃんおばちゃんみたいな事言ってる~」


 いや、実際おばちゃんだったんだよ!


「あはは、気をつけなきゃ、さぁ着いた、ゆっくり休んでね、おやすみまたね~」


 両手をフリフリ飛び跳ねて見送ってくれたメルティ、たまにはこういうのも良いね。

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