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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
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初めまして。

「知らない天井だ……。」


 とりあえず一度は言ってみたいセリフを言ってみた、特に何かある訳でもなく言ってみた、そして全く意味が無い事を知った。


「さぁて、今日は忙しくなるわね、まずは冒険者ギルドか~」


 ベッドの上で大きく背伸びして軽いストレッチ、宿の部屋にはお風呂はないけど洗面用の水桶があったので顔を洗ってから身支度を整え1階の食堂スペースへ向かった。


 今日は冒険者の登録なので、腰にはナイフ2本とショートソードを下げヒップバッグの軽装で向かう、服装も上着は真シルクとキングスパイダーという魔物の糸で作ったジャケットを羽織り、ドラゴンレザーで作ったパンツスタイル、靴もドラゴンレザーの編み上げブーツでソールは安定のスライム合成素材、髪の毛は後ろに縛ってみた。


 食堂に降りて朝食を注文、テーブルに座って食事が来るのを待っている……すっごい周りの人の視線を感じる、なんか変なのかな、自分の姿を確認していると給仕の女性が朝食を持ってやってきた、恥を覚悟で聞いてみよう。


「ちょっと伺ってもいいかしら、あの私なんか変ですか?やたらと視線を感じるので気になって。」


 給仕の女の子はじっと私を見つめて


「個人的な感想でしかないのですが…多分皆さんお客様に見とれているだけかと、美しいお顔に透き通るような白い肌、サラサラの金髪に長い手足、均整の取れた体型、女の私でもうっとりしてしまいます。」


 あ~そう、そういうの初体験なんですみません、なるほどねぇ美人ってこういう感覚なんだ、みんなの視線を集めるとかあんまり気持ちよくないな、むしろ気持ち悪い。


 朝食を早々に済ませてフロントに向かう、今日から10日間5人泊まれる大部屋を予約した、1泊金貨3枚と中々のお値段だが精霊達がホムンクルスに受肉したら4人で止まる事になるからね、追加で冒険者ギルドまでの道も聞いた、どうやら一直線らしいから迷う方が難しい。


 さぁやって来ました冒険者ギルド、門構えや造りを確認してしまうのは職業病で、この世界の建物を見た感想としては大きな地震が来たら一発で潰れるだ、マーチに聞くと地震自体は数百年に一度くらいしか起きないらしい、そりゃあんな梁の数じゃ屋根落ちるだろとかサネじゃなくてそのまま床材の板を張り付けた隙間だらけで凸凹の床だったりと、技術的にも環境的にも事故がないから発展しないのだろう。


「レンガ造りにしても全部長手を同じ目でただ積んでるだけ、イギリス積みとか教えてやりたいわ、こんなの横揺れしたら崩れちゃうよ」


 ブツブツとギルド前で文句を言ってから中に入った、中は中央が吹き抜けの二階建て、正面に受付嬢らしき人を見つけたので声を掛けた。


「冒険者登録したいのですがコチラで良かったですか?」


「はい、私が承ります、初めての登録で間違いないでしょうか?」


「はい、初めてです。」


「それではこちらに記入と登録料が銀貨3枚となります、記入用紙にはなるべく詳細にお願いします。」


 書類を受け取り記入し始める、年齢……いくつにしようか、見た感じ20代前半なんだよね、若い方が良いはずだから21歳、罪悪感……でもここ異世界だから!職業?錬金術師でいっか、さすがに大工はわからないでしょ、得意武器は、片手剣とナイフにしとこう。


「書き終わりました」


「それでは確認師による鑑定を行います、少々お待ちください。」


 やばい年齢バレちゃうかも!


『細工しておいたから大丈夫だよ、安心して。』


 マーチモーンありがとう!大好き。そうこうしているうちに目の前にインテリ眼鏡のお兄さんが来て書類片手に一睨みされた、受付嬢に「問題ない」とだけ告げて奥に引っ込んで行った。


「はい、これで登録は完了しました、ギルドカードを発行するので少々お待ちください」


 カードを待ってる間にマーチが手頃なクエストを見つけてくれた、ここから東に1時間くらい行ったところで薬草の採取らしい、お手軽な仕事だけに報酬は少ないけどみんなを迎え入れるためのクエストだから関係ない。


「お待たせしました、こちらがヨーコさんのギルドカードになります、現在はFランクですが努力次第でランクはアップするので頑張ってください」


「ありがとうございます、早速今日からクエストは受けれますか?先程チラッと薬草採取の依頼を見かけたので、今から行こうかと思い」


「はい、大丈夫ですよ、薬草採取であればこれですかね、キラリ草の20本採取ですね、それではこちらを素材と一緒にお持ちください。」


 受付嬢から手配書とカードを受け取りギルドを出る、次は商人ギルドだ。


 商人ギルドは冒険者ギルドの斜向かいにあったのですぐに入って口座の開設をした、ダンゴの勧めで来ましたと言ったらすぐに手配してくれた、一先ず白金貨を全部預けて金貨はそのまま持ち歩くことにした。


「ふぅ、今日街で出来ることはこんなもんかな、オクト達を待たせるの可哀想だから急いで行きますか~」


 ~~~~~~~


 ティンダーを出てからひたすら東に歩いて1時間、ようやく採取場所の小さな森の入口に到着、マーチに周辺の感知してもらったけど誰も居ない、早速工房にGO。


「オクト!お待たせ、ホムンクルスに洋服着せるからちょっと待ってね」


 自分も外に出た時素っ裸だったのでそこは勉強した、何かあった時のため剣も背中に背負い込ませてある。


「オッケー、オクトいいよ!」


 私の号令後すぐにオクトがホムンクルスに入り込んだ、そして「シュッ」と音をたてて目の前から消えた。工房を出て確認すると何故か体育座りで景色を眺めているオクトがいた。


「どう?感覚変じゃない?」


「おうっ!大丈夫だぜ、ちょっとビックリしただけだ、ジューン達も早くやってくれ、俺一人で素振りでもしとくから。」


 大丈夫そうなので工房に戻った私はすぐに女子部屋に向かいジューン達の体をチェックする、オクトと同じ作り方だったので問題はないはず、培養機の液を抜いて2人の体を拭き下着を着けて洋服を着せる。


「2人ともお待たせ、受肉の方法は大丈夫?」


『えぇオクトのを見ていたし平気よ、私が先に入ってメイに見せるから、メイ、怖がらなくていいからね、私と同じようになさい。』


『ジューンわかった!』


 ジューンがスゥッとホムンクルスに入ってシュッと消えた、すぐにメイちゃんも飛び込みシュッ、これでマーチ以外は受肉した。


「マーチってもしかして私の為に受肉しないでいるの?」


『そんな事ないよっ、ボクもそのうちね』


 異世界初心者の私を何度もマーチ劇場で助けてくれている、野盗の時も助けてくれた、精霊体じゃないと出来ない事があるから多分そうなんだろう。


「ありがとうマーチ、それじゃぁみんなの所に戻ろうか。」


 工房を出るとオクトしかいなかった、私はビックリしたが2人は身体の感覚を試しにキラリ草の採取をしてくれているらしい、オクトに続いて森に入るとメイちゃんか飛び跳ねて近寄ってきた。


「お姉ちゃんしゅごいよ!触れるのっ!感じるの、匂いがするの!ありがとうお姉ちゃん、はいコレ」


 両手いっぱいに持ったキラリ草、既に依頼の倍以上あるんじゃないかって思えるくらい、私はそれを受け取り工房で作った麻袋に入れた、ジューンも採取してくれたので合わせて入れて森の外に出た。


「ねぇ、もう依頼終わっちゃったからお昼の小腹満たしでお茶とお菓子なんてどう?」


「「「賛成!」」」


 私はアウトドアテーブルと椅子を取り出し魔石コンロでお湯を沸かす、お湯が沸くまでの間にクッキーやドーナツをテーブルに並べ、お湯が沸いた頃に体を動かしていた3人を呼ぶ。


「はいどうぞ、熱いからお茶飲む時はは気をつけてね。」


 そう言ってる矢先にオクトがアチチと叫ぶ、まぁ一度やったら気をつけるだろうし、メイちゃんはふぅふぅとちゃんと冷まして飲んでいる、ジューンはドーナツをパクリとして食べる感覚を確認しているようだ。


「お姉ちゃん私まだ美味しいってわかんないけど幸せな感じだよ、これ好き。」


 クッキーの味がわからない、確かに生まれたての赤ちゃんと同じだもん、味はわからないよね、そのうち好き嫌いが出て来ていつか注意するようになるのかな。


「メイ、これは美味いぞ!前の身体の時にも食った事がない、幸せイコール美味いだ。」


「そうね、私も味はまだわからないけどメイと同じように幸せの感情はあるわ、この感情が美味しいに変わるのね、興味深いわぁ」


 オクトは前に受肉して酒も飲んでる、2人よりも先輩だからね、表現が精霊っぽくて不思議な感じだけどしばらく私といたら俗っぽくなっちゃうんだろうな。


「これからもよろしくねみんな。私もこの世界の常識をしっかり覚えてマーチに早く安心してもらわなきゃ、マーチの体のイメージはもう出来てるんだ~」


『ふふっそのうちね、今はボクに出来ない事をオクト達が、精霊体じゃないと出来ない事をボクがするって分担しているから、もうしばらくはこの状態が良いかもね。』


 少し残念だけどマーチがそう決めたのだろう、4人の中ではマーチが1番だからね。


「さて、身体を動かしておかしな所がなかったら街に戻るけど、帰ったら3人も一応冒険者登録しておいて、そうしたら私が工房に籠っていても冒険者として活動できるでし、いっぱい感じていっぱい食べて楽しい事たくさん出来るでしょ、あとこれは約束ではないのだけれどなるべく人に危害は加えないで、もちろん嫌な事されたら言い返してやり返しても良いけど、人の世界で暮らすなら我慢する事も覚えなきゃだからね、その辺は先輩のオクトが2人に教えてあげてね。」


 若干の不安はあるけど、オクトは口が荒いけどある程度の常識はあると思いたい、1番怖いのはジューン、冷静に見えて手加減とか出来なそうだし、メイちゃんは無邪気な反面抑えが効かなそうな一面もあるし、今ちゃんと言っておかないとトラブルになりそうだからね。


「それじゃぁ片付けて街に戻りますか。」


 3人は三者三葉の格好で、オクトは身長190センチくらいで筋骨隆々、背中には前にも使っていた両手持ちの大剣、ドラゴンレザーの革鎧に金属製の肩パット、ガントレットで肘から先を防御してある、靴は今私が履いている編み上げブーツの先に鉄板を仕込んた安全靴仕様、いかにもな傭兵スタイル。


 ジューンは白と青の色合いのローブで胸には水の女神様のマークを刺繍してあり中には軽量化したミスリル合金の鎖帷子を着ている、背中には空間拡張したリュックを背負いブーツは私と同じ編み上げブーツ、左手には大きな盾を持っている、もちろん軽量化の魔法陣を仕込んで盾の内側にはゴツめのメイスが嵌め込んである、武器は杖が良いか聞いたら基本物理で行きたいとの事だったのでメイスにした、ちょっと怖い。


 メイちゃんは私同様軽装でドラゴンレザーの革鎧とグローブ、ニーハイソックスにドラゴンレザーのハーフパンツ、靴は「クイック」の魔法陣を仕込んた編み上げブーツ、武器はクロスボウとショートソード、クロスボウはリュックのサイドに留め具を着けたので右側にクロスボウ、左側にボルトを収納出来るようにした、シーフをイメージしたんだけど狩人みたいになっちゃった。


 今後はオクトのリュック作成と通信機能を付与した何かを作りたい、魔法陣に「遠話」と言うのがあってそれを使うと離れている者と会話が出来る、ロストテクノロジーである魔法陣は便利だけどあまり大っぴらに露出するのはタイミングを見計らってからだろう、みんな拠点はティンダーで行動は縛らないつもり、離れていても会話出来ないと不便だからね。


 ティンダーに近付くとまずジューンが顔を顰めた、次にメイちゃんも嫌な顔になったのでマーチに言って風の膜を張ってもらった、オクトは「こんなもんだろ」とあまり気にした様子はない、スゲェなオクト。


 街に到着したら門番に止められた、ギルドカードがないと入場料銀貨2枚取られるようだ、前回は誰かが払ってくれたのだろう、私が銀貨6枚門番に渡して通過した。


 メイちゃんが周りをキョロキョロしていて可愛い、ずっと見ていたいがまずはギルドに行かなくては、冒険者登録が済んだらダンゴの店に行こう、みんなを紹介しなきゃ不審がられそうだ。


「すみません、この3人は私の仲間で冒険者登録をしたいのですが、お願いできますか?」


 大銀貨1枚取り出し受付嬢に渡すと快く担当してくれた、私は隣のカウンターにキラリ草と依頼書を提出してクエスト料を待っていた。


「おっ!嬢ちゃんじゃねーか、昨日はあんがとよ!今日は登録後初のクエストか?」


「ガトー、ちょうど良かった、後で探そうと思ってたの、私の仲間が合流してね、1人はまだ向こうにいるんだけど同じアレ踏んで近くまで来てくれたの、街に入る前に偶然ばったり合流出来たから仲間も登録しに来たのよ、登録が終わったら紹介するわね、時間ある?」


 ガトーは隣りのカウンターを見て「うおっ!」と短く声をあげた。


「おいおい嬢ちゃんの仲間やべぇな、全員かなりの実力者だろ、装備もやばいしあの僧侶の姉ちゃん物理かよ、ドムから物理僧侶は戦士よりやべぇって聞いた事がある、それにしてもみんな美男美女だな、変なのに絡まれんなよ?」


「絡まれても何とかなるでしょ」


「違ぇねぇな、嬢ちゃん達に絡むのぁ余程の馬鹿だろうなガハハ!」


 実際ギルドに入ってからも視線は感じるけど、良くも悪くも遠巻きに見られている分には気にしない様にした、直接来たら内容によってはシバき回して私達は危険だと印象付けるよう仕向ける、最初が肝心だがその最初がまだ無いのだ。


「終わったみたいだね、みんなこっち!」


 3人がこっちにやって来た、ガトーの事は知ってるのか抵抗なく自己紹介していた、自己紹介の途中で私はカウンターに呼ばれたがガトーの笑い声がしてるから話が弾んでいるのかな、ガトーは粗忽者に見えるが大人だ、気を使ってくれているのだろう。


「お待たせしました、コチラが今回の報酬大銀貨2枚です、本数も然る事ながら全て状態が良かったので報酬を上乗せさせていただきました、今後もよろしくお願いします。」


 日本円で2万円か、メイちゃんのおかげで状態が良かったのだろう。


「はい、依頼完了したよ。」


「嬢ちゃん達はギルドでメシ食ってくのか?」


「今日はこの後ダンゴさんの店に行くつもりだから、食事はその後かな、また一緒に食べましょ」


「おう、わかった、旦那によろしく言っといてくれ。」


 ギルドを出てダンゴの店に向かう、すれ違う人々が二度見してくるが仕方ない、ガトーが言ってたように明らかに美男美女なのだから、それに今はオクトが居るからか好奇な視線はあまり感じない、ジューンもかなり綺麗でスタイル抜群だけど一瞬見て装備を見てすぐに目を伏せる、昔の物理僧侶何した?


「こんにちは~」


 ダンゴの店に入るとリク君が近寄ってきた。


「いらっしゃいませヨーコ様、旦那様に御用ですか?」


「離れていた仲間が合流したのでご挨拶にね」


「かしこまりました、先程旦那様が戻られたので奥の応接室でお待ちください。」


 リク君しっかりしてるわぁ、そのリク君より少し小さな女の子が応接室に案内してくれた。


「あの……兄がお世話になりました、リクの妹でナキと申します、そのお菓子とても美味しくいただきました、私の一生の思い出にさせてもらいます。」


「ご丁寧にありがとう、もう少ししたらこの街でもたくさんお菓子が食べれるようになるわ、期待していてね。」


 砂糖が流通すれば必ずお菓子もリーズナブルになるはず、ナキちゃんにお菓子作りとか教えてあげたいわ~


「おぉ~ヨーコ様、それとお仲間様ようこそいらっしゃいました、良かったですねぇ合流出来て、ワタクシ自分の事のように喜んでおります。」


「あはは、それはどうもありがとうございます、早速紹介しますね、大きい男性が前衛のオクト、隣りの僧侶がジューン、私の隣にいるのがシーフ兼狩人のメイです、まだこの街に不慣れだと思うので見かけた時はお声がけ頂けたらと思いこちらに参りました。」


「それはそれはご丁寧にありがとうございます、このダンゴに出来ることがあれば何なりとお申し付けください、あっ、ちょうど良かった、先日お話しさせて頂いた物件ですがまだ空いておりまして、領主様に伺いましたら白金貨8枚でお譲りしたいと承っております、明日にはうちの者をつけてご案内出来ると思いますがご都合はいかがでしょう」


 んげっ!宿屋抑えちゃったよ、でも引っ越しとか家具揃えたりとか考えたらちょうどいいか。


「お早い対応ありがとうございます、明日でしたらまだ予定を入れておりませんので大丈夫です、お願い出来ますか?」


「はい、かしこまりました、それと例の製法なんですが領主様が深く関心を持たれておりまして、もしかしたら一度お顔出ししていただくかもしれませんが大丈夫でしょうか?一応それとなくヨーコ様のお立場に関しては伝えてありますので不快な思いはさせないと思っているのですが……どうでしょうか。」


 まぁ想定範囲内だし、それを含んでの値引きなんだろうな、ダンゴの顔を潰すのも悪いしここは我慢して。


「はい、前もって連絡頂ければ対応いたします、行くのは私だけでよろしいですか?」


「はい、ヨーコ様だけで構いません。」


「わかりました、それでは連絡をお待ちしております、宿はクイーンスプーンに部屋を取りました10日間程はそちらにいますので不在の時はフロントにでもお伝え下さい。」


 その後は少し雑談してダンゴの店を出た、外に出ると既に夕焼けが空を染めていて足速に帰る人達が見えた。


「みんなこのまま食事に行こうか、って言っても昨日行った店しか知らないけど、金貨1枚もあればお腹いっぱいになるでしょ、どうかな」


「俺はヨーコに従うぜ、ちょうど腹も減ってきた、楽しみだった酒もあるみたいだしな」


「私達も味を知るためには回数をこなさなければならないので賛成です。」


 と言うことでやって来ましたドワーフの店、店に入ると女ドワーフが駆け寄って来て個室に案内された、個室に入ると昨日の女将ドワーフが来て


「昨日は悪かったねぇうちのが、アンタの白ワイン飲んでみたよ、あれは絶品だねぇ一応昨日のうちに白ぶどうを仕入れて明日から酒造りに取り掛かるつもりさ、味だけを頼りにやろうと思ったけどちょっとだけヒントが欲しいのさ、どうだい?ダメかい?」


 女将の気持ちもわかるから私はオッケーを出したいがとりあえずみんながお預け状態は可哀想だから。


「女将さん忙しいかも知れないけど一緒に飲まない?ほら、仲間が楽しみにして来たから先に注文して飲みながら話しましょうよ。」


「ありゃりゃこりゃ悪かった、こっちの事ばっかりで、すぐに用意するよ、でも久しぶりだねぇ一緒に飲もうなんて言われたのは、みんなエールで良いかい?そこのお嬢ちゃんは酒大丈夫かい?」


 お嬢ちゃんとはメイちゃんだ、私より4歳年下設定だから未成年だけど、ここは異世界だから大丈夫、大人の階段一気に登りましょ。


「えぇ、エールより少し軽めの物があればお願いします。」


「んじゃ蜜酒だね、キラービーの蜜酒なら薄めて飲めるだろ?」


 私もそれ飲んでみたい!とは言えずジューンとメイちゃんには蜜酒、私とオクトはエールを注文した。


「はいお待ちっ、料理もすぐ来るから待ってておくれ。」


「んじゃみんな乾杯」


 オクトとジューンはクイッとメイちゃんは恐る恐るチビッとそれぞれが酒を口に流し込む、オクトはぷはぁといい表情でジューンもメイちゃんも悪くない印象、一口飲んだあとのメイちゃんのピッチが早いので少し飲み方を説明した。


「あいよっ、今日は魔豚と香草の炒め物にドードーの内臓と豆の煮物、フォレストバイパーの塩焼きに、珍しく魚が入ったから香草焼きにしてみたよ、まだまだ出るからしっかりお食べ。」


 ここの良いのは料理が美味いのと量が多い、基本炒める煮るしかないけど揚げる料理はないのかな?フライドポテトとか絶対売れるのに。


「それじゃぁ私もいただこうかね、乾杯!」


 杯を高くあげてそのまま口に流し込む、昨日ガトーが教えてくれたドワーフのスタイル、私も真似してグイッと行った。


「それじゃぁ白ワインの話しをするわね、まず聞きたいのは赤ワインの作り方は普通にぶどうを潰して種も皮も一緒に発酵させて濾過して終了かしら」


「まぁ全部じゃないが大体そんな感じさ」


 まぁザックリとした説明だからね、白はちょっと違うんだ。


「白ワインはね、主に果汁だけを発酵させるの、だから作業工程の順番が違うのまず果汁を絞ったら果汁を少し放置して不純物を取り除く、果汁が綺麗になったら発酵させるんだけど赤ワインは皮に着いた菌で勝手に発酵するけど白ワインの場合酵母菌を使うの酵母菌って言うのはぶどうの皮や他の果物なんかの表面に付いている菌で目に見えない生き物その子達がぶどうの甘み、糖分ね、それを食べてお酒にするの、だからまず作るのは酵母最優先、今回は間に合わないだろうから私が用意してあげる」


 最初は興味深く聞いていたが酵母菌の辺りでクエスチョンマーク。


「それじゃ続けるね、酵母菌を入れたら発酵が始まるの、発酵が終わると役目を終えた酵母菌や不純物が下に溜まるから上澄みを取り出して残った滓も取り除く、滓をとっても私の持ってきた白ワインの透明度は出ないから濁りを吸着させるためにゼラチンを私は使ったわ、ゼラチンは色々使えるから覚えておいて損はしないよ、魔牛?からも取れるんじゃないかしら。」


 女将降参、幼稚園児がアフリカの原住民の言葉で昔話聞かされてるような表情をしている。


「これは一度見せた方が早そうね……」


「アンタの言ってる発酵とか酵母菌ってのから全くわからないんだ、アタシゃ酒の事ならなんでも知ったつもりだったけど、愚かだねぇ」


「そんな事ないっ!今からだって学べるよ、私だって途中から方向変換して大人になってから勉強したんだもの、女将さんなら出来るわよ。」


 女将が眉毛を八の字にして困り顔、白ワインが難し過ぎたかな、なら蒸留に興味を持ってもらおう。


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