ティンダー
「このペースなら午後の早い時間に到着しそうですな」
ダンゴが腕時計を見ながらキリッとした顔で教えてくれたけど言った後に時計を見てウットリしないでよ、若干キモイ。
「もう少しですね、何処の馬の骨かわからない私を受け入れてくれてありがとうございます、こんなに早く街に着けるのはダンゴさん達のおかげです。」
「なんと勿体ないお言葉、ワタクシも新しい商品を目にする事も出来ましたしこんなに素敵な贈り物をいただいてしまい恐縮です、それに砂糖の作り方、あれは腹を満たすだけの食事に大きな影響を及ぼすでしょう、味のバリエーションが増えティンダーが王国一のグルメな街になるかもしれませんな。」
料理の基本はさしすせそだからね。せとそ、醤油と味噌は必ず作らなきゃ、マヨネーズは玉子の衛生管理上後回しでケチャップが先ね、ナポリタンが私は大好物だったんだ、専門店ぺンチョは私の聖地って言うくらい。
次に酒好きとしてはまずこの世界に蒸留を浸透させねば、錬金術があるのに成分を抽出する蒸留が無いのは不思議、工房にはウイスキーやブランデーは無かったから蒸留に対する知識が無いのだろう、工房にはエールはあるけどラガーは無い、発酵法を教えてあげればスッキリとした喉越しのラガーが飲める、ホップは工房にあったから材料はある、酸っぱいビールは嫌なの、まずは試作品からかな~目指せ「夕日スーパーカライ」だね、それには炭酸ガスを作らなきゃ、喉越しを出すなら発酵任せより人工的にガスをぶち込んだ方が確実、確かめっちゃ空気圧縮して分離してめっちゃ冷やすだったかな、あ~思い出せない、ここ異世界だからなんか好都合アイテムないかしら。
食品最優先は醤油、味噌、次がパン、パスタ、うどんの小麦製品、お米はあったから後は産地、嗜好品の酒は主食の後だろうな~酒が出来たら海鮮も食べてみたいなぁ、エビとかカニ大好きなんだよね、海鮮食べながらお酒をキュッとね。
「ヨーコ様何か嬉しい事でもございましたか?顔がニコニコしておりますよ。」
ダンゴが多分気を使ってくれた、明らかに今の私はニコニコじゃなくてニヤニヤかニタニタだったはず、だらしない顔してたんだろうな恥ずかしい。
「ちょっとお酒の事を考えてました、早く飲みたいなって、それとティンダーに滞在中は宿ではなく貸家を借りようかと思ってまして、ダンゴさんが落ち着いたらご紹介いただければと。」
「はい、うちの者に手配させましょう、最優先事項としてです、因みにどの様な貸家をお探しで?」
「そうですね、築は古くても構わないので個別の部屋が六~七程、こちらである程度手を加えても良い物件なら最高です、浴室はあれば言う事なしです、家賃相場がわかりませんが今回私がダンゴさんからいただくお金で払える範囲なら多少高くても構いません。」
ちょっと欲張り過ぎたかな、まぁティンダーに拠点を構えるなら建てても良いんだけど、材質とかイマイチ謎な素材が多いから建てるならもうちょい理解してからかな、古くてもリフォームして良いなら最高なんだけどな。
「ふむ、実は貸家ではなく売り物件に当てはまる建物がございます、お値段も交渉出来ますので確認いたしましょう、唯一難点があるとすれば場所が街外れと言う事くらいでしょうか、築年数は20年程だと記憶しております、元は貴族様の別邸でしたが没落してしまい、今では買い手がつかないと領主様から聞いた事がございます。」
20年か、多分今の話っぷりだとしばらく誰も住んでないんだろうな、全内装リフォーム覚悟で見るのもありかな、貴族の別邸ってことは造りもある程度しっかりしてるんでしょ。
「是非お願いします、支払い方法に分割払いがあれば助かりますが、何せ無一文でしたから、あはは」
「それは砂糖の製法で購入金くらいは賄えると思われますよ、今の領主様はやり手で新しい物が大好きですから、それにこの腕時計1つでポンッと買えるでしょうし、そのくらいまで値は吊り上げるつもりですから。」
おぉやり手商人ダンゴ、素晴らしいよ少し希望が見えたかも、基本工房に籠るのでどんな物件でも良いけど、なるべくなら快適に過ごせる方が良いし自宅は無いと不安だからね。
「嬢ちゃんティンダーが見えてきたぜ、あれが俺達の街だ、デカいだろ」
馬車から顔を出すと中世風の建物が所狭しと建ち並ぶ景色が見える、密集した建物を見た第一印象は戦後の「下町」だった。
「凄い大きな街だね、首都と言っても過言じゃないよ、楽しみ」
ガトーは満足気に笑っていた、まぁお世辞を言えばイタリアっぽいのかな、水路でもあれば雰囲気あるけど無いんだろうな、とりあえず異世界初の街、目一杯楽しむぞ!
と思っていた私がいましたが、街に近付けば近付くほど臭くなってきた、多分下水の匂い、そうだよねこの水準なら上下水なんて発達してないよね、うぅぅぅ街全体を浄化したい。
街に入ると更に驚いた、道の側溝にモンスターがいる、所謂異世界名物スライム、臭いのはアイツらだとすぐにわかったけどなんでだ?
「ダンゴさん、あのスライム達は…なんですか?」
「あぁ、あれはダストスライムと言ってゴミや排泄物を処理するよう改良されたスライムです、某国にはおりませんでしたか?」
「えぇ、少なくとも私の住んでいる場所にはいませんでした」
まじで臭い、ゴミは消化出来ても臭いは無理なんだな、もっとちゃんと改良して欲しい。
「ではどうやってらしたのですか?」
「下水道を使って郊外に下水処理施設があり、処理された処理水は川に流していましたね、もしかしたら処理施設にはスライムが居たのかも知れませんが。」
「ほほぅ下水道ですか、今後の街の発展の為、お時間がある時に教えてくださいませ」
大工事になるだろうけどね、それするくらいならスライムを改良した方が良いかもしれない。
「はい、是非」
それから10分ほど走っただろうか、ダンゴのお店に到着した。
「おかえりなさいませ旦那様」
10人ほどの従業員が出迎えてくれた、ガトー達は野盗をギルドに預けてくると言って街に入ってすぐ別れた、後で迎えに来てくれるらしい。
「ささ、どうぞお疲れでしょう、奥に応接間がございます、そちらでお掛けになってお待ちください。」
従業員の女性に一言二言指示を出しダンゴが2階に上がって行った。
『そんなに臭いなら空気の膜を貼ってあげようか?匂いしなくなるけど』
「お願いしますマーチ様!本当にキッついの。」
『わかったよ』
体の周りに風が吹いたら匂いが気にならなくなったので一息付いた。
「ふぃ~助かったぁコレは早急に消臭剤を作らなきゃ、スライムに食べさせて匂わないようにすればいいんだよ、下水道は何10年ってかかりそうだから、味噌も醤油も後回し、スライムに有効的な消臭剤を作る、緊急クエストだわ!」
1人臭い匂いに立ち向かうと決心しているとダンゴと使用人がやって来た。
「ヨーコ様、先日のお取引の代金をお持ちしました、腕時計が一対で金貨1500枚の10セットで白金貨150枚、その他ポーション類が金貨80枚と大銀貨10枚、ナイフ類が58本で金貨46枚と大銀貨60枚となります、更に例の精製方法は領主様と話し合いを経てお支払いしたいと思っております。」
どれくらいの価値なのかわからないけどとりあえず驚いておいた方がいいのか自然に対応すればいいのかわからん、とりあえずここは素直に。
「すみませんダンゴさん、とても大金だと思うのですがこちらの国の金銭価値がわかりません、教えていただけると嬉しいのですが…」
ダンゴはそりゃそうだと手を叩いてから色々教えてくれた、大銀貨は銀貨10枚分、金貨は大銀貨10枚分、白金貨は金貨100枚分で、今目の前にない大銅貨や銅貨の説明もしてくれた、ティンダーの一番高級な宿屋の代金が銀貨20枚、レストランの食事もコースを頼んで銀貨5枚から10枚、一般的な食堂での食事代は銀貨1枚あれば満腹になるそうだ、あれか銀貨が1000円くらいの価値と思っておけば良いか。
「因みに先程お話しさせていただきました貴族様の別邸は以前白金貨10枚で出されておりました、領主様にお値引きを交渉すれば白金貨1枚くらいは引いてくれるでしょう。」
「思っていたよりも大金ですね、持ち歩くのが怖いくらいです」
「それでしたらギルド口座をお作りになってください、我々商人ギルドには口座がありまして預ける事が出来ます、白金貨100枚までが1日の取り引き最大値ですが大体は事足りると思われます、商人ギルドは街レベルであれば何処にでもございますので、旅をしながら旅先で必要な金額を引き出せます、我々商人の頼みの綱ですな。」
異世界銀行か、ATMが無いのは不便だけど異世界ならそれに足る便利さはあると、なるほどねぇ。
「分かりました、明日商人ギルドに行って口座を作って来ますね、今日1日は持ち歩く事にします、高査定ありがとうございます。」
頭を下げて金貨をリュックに入れた。
「旦那!居るかい?」
ガトーの声が店の方から聞こえた、声でけぇなぁ。
「ちょうどガトーが迎えに来たようですね」
「おうっ!待たせたな、野盗の連中の金が出たぜ、しかも割増し付きだ粘った甲斐があったぜぇ、ほらよ嬢ちゃんの分だ無くすなよ?」
ズッシリと重い金貨の袋、礼を言ってからヒップバッグに入れた。
「ほんじゃ打ち上げ行くか!宿は街一番の宿とったから安心しな、酔い潰れても護衛をつけて送ってやるぜ」
何から何まで世話になりっぱなしだ、顔面犬のクセにガトーはめちゃくちゃ良い奴だ。
「ありがとう、宿代払うね、いくらだったの?」
「気にすんな、割増分で余裕だからよ、嬢ちゃんにゃ世話んなったから奢りだ」
気前の良い奴は嫌いじゃない、職人連中も宵越しの金は持たねぇ精神で気前が良かった。
「んじゃお言葉に甘えちゃうか!ありがとうガトー。」
「おうっ!メルティ達は先に店行ってっからさっさと行こうぜ、旦那っあんたも来るか?」
ダンゴにも声を掛けたが、ギルドに顔出ししたり領主様に面会を頼んだりで忙しいから無理と断られた。
「今から行く店は貴族街の近くで一応庶民店だが高級店だ、料理もそうだが何よりワインの種類がこの街一番だ、俺らも良い仕事の後は必ず行く店だから安心してくれ。」
「ガトーと知り合ってから心配した事ないから大丈夫だよ、安心してる。」
ガトーが照れくさそうに頭をガシガシ掻きむしる、痒いのか?どれ浄化してやろう。
「うわっ!また、もしかして匂ったか?」
「頭掻いてたから痒いのかと思ってね」
「嬢ちゃんいい性格してるぜ、ったくよ。」
ガトーをからかいながら歩いて行くと立派な店構えのレストランが見えてきた。
「あの店だ、なかなかだろ?」
「うん、立派な店構えだね、楽しみだよ。」
店の中に入ると内装はレストランのようにガランとしていて、大きな丸テーブルが並べてある、10人くらいで囲めそうな大きさ、これは相席もありな感じか、クチャラーとか同じテーブルだったらストレス溜まりそう、奥にも席があるようで個室かな、多分あそこはテーブルチャージとか別料金とかなんだろう。
「ガトー、ヨーコこっちこっちぃ~」
奥の個室から魔女っ子メルティが手招きしていた、私は軽く手をあげて個室に向かう。
「待たせたな、ヨーコ嬢ちゃんはとりあえずエールでいいか?」
酸っぱくなきゃ良いけど、まぁ前世でもとりあえず生だったからエールでいいや。
「うん、エールで」
ガトーが店員にエールを注文して料理も頼んでくれた、初の異世界料理は楽しみだ。
「エールは渡ったな、んじゃ護衛任務完了お疲れさん、今回は特別ゲストのヨーコはもちろん色んな事があった、おかげで特別ボーナスが入ったからパーティーの資金は潤沢だ、明日から2日は休養日とする、今日は潰れても送りの依頼を店に出してきた、帰りの事も明日の事も気にせず大いに食って飲んで騒ごうぜっ、乾杯!」
ガトーが乾杯の音頭をとり打ち上げがスタートした、さてまずは一口。
「うん、エールだ、中々美味しいね」
「だろっ!ここは元々職人街のドワーフが始めた酒場でな酒にうるせぇ連中が自分達の騒げる店が欲しいって作った店なんだよ、だからエールは自分達で作ってる、女ドワーフの連中が不味い酒出すわけねぇ、ワインも女ドワーフが色んなぶどうを使って作ってっから種類も味も最高ってんだ、メシも酒に合うのが多くてよその上量が多い、まぁちと他に比べっと高いが今日みてぇな特別な日にはここに来るんだ。」
なるほど、酒蔵直営の居酒屋って感じか、値段が高いのはそれなりにこだわってるって事なのかもね。
「あいよっ、ルーム貝のガーリック炒めとドードーの串焼き、魔牛のステーキに内臓の煮込みだよ、煮込みは熱いから気をつけな、他のはちょっと待っとくれよ。」
ずんぐりむっくりのおばちゃんが料理を運んで来てくれた、あれか女ドワーフって、私アレと同じって思われてたのか、ん~肝っ玉母ちゃんみたいな感じか?若しくは見た目?さすがにあそこまで顔デカくねぇ!まぁデカかったけど。
「どうしたのヨーコ?」
「ううん、なんでもないよ、ちょっと考え事してた。」
空気読まないメルティに心配された、そうだ今は昔のことなんて思い出しても仕方ない、今を楽しまなきゃね。
「この貝の炒め物美味しいね、ワインが欲しくなる、赤でも白でも合いそう、ステーキはちょっと硬いけど肉喰ってるって感じね、塩加減もちょうどいい」
「白って?ワイン?」
ん?白ワイン無いのか?
「白いぶどうを使ったワインなんだけど、ないの?」
工房に白ぶどうはあったよ?私白ワインも作って持ってるし。
「ワインは赤いのしか知らない、白いワインなんてあるんだね、この店に無いって事はドワーフ達も知らないのかもね。」
「ちょいと!今聞こえたんだけどなんだって?白いワイン?そんなもんある訳ないじゃないか、もしあるってんなら見せてごらん、見せてくれたら今日の払いはタダにしてやるよ」
女ドワーフが料理を持って来たついでに会話が聞こえたらしい、ふふっ女ドワーフさんよ、それはフラグってヤツよ盛大にぶち折って差し上げましょう。
「はい、コレ」
透明の瓶に入った白ワイン、試飲した時は赤ワインより発酵が上手くいったのか洋ナシみたいな香りにスッキリとしたフルーティーな味わいで、現在工房で絶賛量産中。
「なんだいこれ、水じゃないか、揶揄うんじゃないよ!まったく」
私はコルクを抜いて脇にあった空のグラスに白ワインを注いだ、透明でフレッシュな香りが個室の中に充満した。
「嗅いだことのない酒の匂い……」
「どうぞ飲んでみてください」
女ドワーフにグラスを渡すと、色を確認、香りを確認、そして口に含んだ。
「………。」
黙って何か悩んでいる、そしてもう一口。
「白ぶどうの味がする、でもなんで濁って無いんだ?発酵法も違うんだね多分、雑味がないし何よりこの香りだ、まるで別の果物みたいな、スッキリとしていて軽い口当たり」
メルティがグラスを手に「私にも~」とおねだりしてきたから注いであげると
「はぁっ、何これワインぽくない、でもちゃんとワインの味がする、美味しいかも。」
うんメルティのコメントに期待はして無かったよ、まぁ作り方も発酵温度も赤ワインとは違うしね、別物って思われても仕方ないかな、女ドワーフは白ぶどうの味を知ってるからワナワナしてるけどメルティは訳わかんなくてわちゃわちゃしてるだけだもんね。
「あ~ヨーコ絶対今私をバカにしてるでしょ!罰としてもう一杯」
いや言いがかり……でもないか、まぁ飲みなよ。
「お客さん、コレまだあんのかい?あんなら売って欲しいんだけど、どこで手に入れたとか言わないでいい、調べるから、私らもさ白ぶどうを使ってワインを作った事があんのさ、でもね不味いんだよ1本金貨2枚払う、そして今日の飲み代は無料にする、だからあるなら頼むよ」
「えぇ構わないですよ、3本ありますから全部お譲りします、お金は結構ですので今いるガトー達がこの店に来た時にはサービスしてあげてください、このお店は「特別な日」にしか来れないので、白ワインの一つ二つで特別を台無しにしたくないので、わかりますね?」
何が言いたいか、せっかくの打ち上げで会話が弾みそうな時に店員が横槍入れてくるとか何考えてんだ?的な意味だよ?
「あっ!あぁ悪かったねぇ、本当に失礼したよ、サービス?もちろんさ、アンタら「灰色の剣」だろ?この街1番の冒険者パーティー、わかったよまたこの店を使う「特別な日」には目一杯サービスさせてもらうよ、今日はゆっくり楽しんでっておくれ。」
わかればよろしい、女ドワーフに白ワインを手渡し追加におすすめの赤ワインを注文した。
「嬢ちゃんなんか悪ぃな、ご馳走するって言ったのに迷惑かけちまったな」
「迷惑なんて思ってないよ、上手く行けばこの店に新しいワインが増えるかもね、さぁ飲み直しましょ、なんたってただ酒ですから!」
グラスを持ってニヤッとする私を見て、それもそうだとニカッと笑うガトー、グイグイッとジョッキを煽ってエールを流し込む。
「はいよっ!コレは今年の自信作だ、ペーリエ産のぶどうを使ってる、気候があったんだろうねかなり良く出来た、ちょっと新酒の割にヘビーな感じだけど肉料理にはピッタリさ」
女ドワーフはボトルを2本ドンと置いて新しいグラスを置いていった。
「ペーリエ産のぶどうって高級品種だよねぇ~高級とか希少とか素敵な響き~早速いただきますぅ」
メルティがコポコポっと自分のグラスにワインを注ぐ、横にいたドムにも注いでさっきの女ドワーフの真似をしてテイスティングっぽい仕草をしてる、まぁグイッと一気に行ってる時点でテイスティングイッなんだけどね。
ガトーと私も一口クイッと口に含む、あぁ確かにこのズンと来る感じ、ヌーヴォーでは無いと感じるけど新酒なのよね、もう何年か寝かせたらもっと凄そう。
「あぁワインを飲んでるって気になるわね、肉料理と一緒なら確かにピッタリ、流石ドワーフね、でもちょっとイタズラしたくなるわね」
「おいおい、止めてやれよアイツらも悪気はねぇんだ、酒の事になって熱くなっただけだからよォ」
「そうね、今日はやめときましょ、それより私野菜が食べたいかも、豆料理でも良いから何かある?」
女ドワーフを呼んでワインの追加と煮込んだ豆料理を注文、ガトーとドムはワインよりエールの方が良いようでエールを追加した。
「ふぅ~ちょっと気持ち良くなって来たなぁ~みんなありがとう、色々聞きたいんだろうけど黙って受け入れてくれて、今日は楽しいなぁ」
現在テーブルの上にはワインの空ボトルが12本、メルティとドムは既に撃沈していてテーブルにキスしてる。
「あぁ、俺ァ最初に見た瞬間魔物の類か魔人かと思ったぜ、近付くほど全身の毛が逆立つ感じがしてよぉ、そのまま振り返って仲間んとこに逃げようと思ったんだぜ、でもなこの目で見たら真っ青で、あぁこいつは悪いヤツじゃねぇってな」
「ガトーがたまに使うその色の表現って何なの?」
「俺の目は昔っから善と悪を色で示してくれんだ、鑑定は種族なんかを調べる時に使うんだがな、この目のおかげで何度も命を救われてる、悪意のあるヤツぁ真っ赤に染まって見えっから距離を置いて様子見して対処すんだ、でも嬢ちゃんは今まで見た事の無い真っ青、まるで赤ん坊みてぇだった。」
なるほどねぇ、だから野盗の時ガトーが赤だと叫んだらメルティが殺さなきゃみたいな殺意のある顔つきになったのね。
「赤ん坊かぁ、あながち間違ってないかもね、かなり世間知らずだからさ、悪い人が近くにいたら教えてね。」
さて2人がダウンしてるからそろそろお開きかな、結構飲んだけど気持ち良い程度、ライカのくれた体は凄いなぁ。
「ぼちぼちお開きにすっかぁ、おーいドム起きろ、メルティ生きてっかぁ、おうっ悪ぃ女将コイツらの家まで頼めるか?」
「あいよっ、任しときな、アンタらは大丈夫かい?結構飲んでたみたいだけど」
「大丈夫だ、嬢ちゃんの宿はこの3軒左だ歩けっかぁ?俺の名前で部屋取ってっから受付に名前だしてくれ、それじゃぁよまたな!」
「ありがとう、ガトーご馳走様でした。」
ガトーは振り返らずに手をヒラヒラとさせて帰って行った。
「あ、女将さん、送る前にコレを2人に飲ませてあげてください、二日酔いのお薬です、あとこのお店はお昼はやってるんですか?」
「あいよっ、口開いて強引にでも飲ましとくよ、昼は生憎営業はしてないけど誰かしら居るから用がある時は声かけとくれ。」
ドワーフ女将に会釈して宿屋に向かった。宿屋もすぐに見つかりチェックインもすませたので部屋に入ってすぐに工房へ移動した。
「オクトお待たせ~すぐに準備するね。」
そう、今日はオクトのホムンクルスが仕上がる日だ、オクトからしたら待ちに待った受肉?の日。
「さぁ早速やっちゃおう」
培養器のデータを確認して各臓器の動きをチェック、心臓は魔石だから鼓動はしないけど胃や腸、膵臓肝臓胆嚢膀胱に至るまで他の臓器は人と変わりなく、もちろん男性器もあるけど生殖機能は無い。
「大丈夫そうだね」
チェックが終わり培養器内の液を抜く、仰向けに横たわる体を見てふよふよしているオクト、その様子を近くでマーチ達が見ている。
『ヨーコもう良いのか?』
『待ってオクト、今思い出した!体に入ったら精霊体と違って工房に出入り出来なくなるから、少し待った方がいい、せめてヨーコが冒険者登録を済ませて最初のクエストくらいまで』
マーチからストップがかかった、どうやら精霊体だと工房に入れるが受肉すると工房には入れないようだ、思わぬ所で待ったがかかったが当のオクトは理解したようで今入るのを止めた。
「オクト明日朝イチで登録してくるからちょっと待ってね、でもそうなるとジューンやメイちゃんも同じタイミングで良いのかしら」
『先日メルティって人に仲間が合流する話をしたから纏めての方が都合が良いかもね』
確か焚き火でワイン出した時かな、そんな話をした記憶もある。
「みんなもマーチの意見に賛成でいいの?」
『平気よ』
代表してジューンが返事をしてくれた、そうなると明日は朝イチ冒険者ギルドに行ってその足で商人ギルドで口座を作ってからなんか適当なクエスト選んで外に出てみんなを受肉させる、選ぶクエストも重要ね、泊まりじゃなくて日帰り案件ですぐに終わるもの探さなきゃ、早く終わったら3人の冒険者登録をしておきたい。
「結構過密スケジュールだけど何とかなりそうね、じゃぁシャワー浴びてから向こうに戻って準備しなきゃ、あっその前に……」
今日はお酒も入っているのでものづくりはせず、宿屋に戻って寝る事にした。




