バレたぁ~
執爺の馬車に乗りエリック邸に着くと熱烈歓迎された、主にマリアンヌから、めっちゃ顔が近い、男装のこの姿が逆に気を引いてしまったみたい、失敗したぁ!
「ヨーコさんは美しいわね、それにその姿も素敵ね、肌も張り艶があって羨ましいわ」
「マリアンヌ様、今からでも遅くありませんよ、手入れをすれば肌も回復致します、肌年齢自体はどうしても年齢と共に重なってしまいますが、そのスピードをゆっくりにするのは可能ですから、それも大事なんですがお嬢様はどちらに?」
私の言葉に、はっ!としたのか、お嬢様を呼ぶように使用人に声を掛けていた。
全く主役はお嬢様だろ?これじゃどっちがついでなのか分かったもんじゃない。
そして本日の主役の登場、パッと見はエリックに似ていて美人顔、身長は低めだからAラインとかのドレスが良いだろう、まだ顔も若いからお姫様ラインなんかも可愛いな、スタイルも……ん?おいおい、ちょっと待とうか、年齢の割に随分と腫れてんな、なんだか分厚い装甲を持ってやがりますね!もしかして虫にでも刺されたか?なんてある訳ねぇ!天然物のロリ巨乳かマリアンヌの血じゃないなエリックの家系だな?
「エステア、こちらがヨーコさんよ、ちゃんと自己紹介なさい」
「エッ!エステアです、ヨーコさんよろしくお願いします……」
ちょっと引っ込み思案な子なのかな?モジモジしながらの自己紹介に私も
「初めまして、長谷川洋子です、私の事はヨーコと呼んで下さい、エステア様」
「ごめんなさいねヨーコさん、エステアは少しコンプレックスがあるの、不愉快な思いをしたなら謝るわ」
思春期だからね、コンプレックスの一つや二つ誰でもあるさ、多分見た感じ胸か低身長とかの悩みなんだろう。
「私は平気です、気になさらないでください、因みにどんなお悩みですか?話せる範囲で構いません、教えていただければ今日の参考にもなりますし、克服するきっかけも出来るかも知れません」
私の提案に少しだけ安堵の表情を浮かべたエステア、そして語り出した。
「あの、私、他の方よりも少し成長が早くて、男性はみんな私の胸ばかり見て、お母様は魅力的で良い事だと言うのですが、私は恥ずかしくて……いつも目立たないように背を丸めてしまうんです、それもあって作法の先生からは注意をいつも受けていて……」
なるほどなぁ、無いものには分からない悩みだ、確かにジロジロそこばかり見られたら恥ずかしくなるわ、男はデカいのが好きな奴が多いから。
「わかりました、ですが大きくなったものを小さくする事は出来ません、まずは下着でお胸を支えて、形を保ちましょう、身体が成長すれば身長も伸びますし、今よりは目立たなくなるでしょう、姿勢も意識していけば修正出来るはずです」
実際大きくなったのは小さく出来ないのは本当だし、まずは採寸しないとな。
「マリアンヌ様、お嬢様の採寸をしたいのですが、このお部屋に男性は入って来ないですね?」
「えぇ、入って来ませんわ、安心して下さって結構よ」
早速エステアの採寸をする、トップ、アンダー、ウエスト、腰周り、ヒップ、座高や股下、首周りに至るまで、少し恥ずかしそうにしていたが、この数値なら大丈夫だ。
「エステア様、サイズを測ったところ、確かに同世代よりは大きいかと思われますが、Dカップというサイズでゆとりがあるくらいでしょう、成人女性ですと平均的より少し大きいくらいです、ちょっとお待ちくださいね」
私は荷物の中からDカップのブラを取り出しあてがう、まだ年齢的にもアンダーが細いため大きく見えるが、身体が成熟していけばアンダーも一回り大きくなるから、今だとDの65とかCの65だね、ジャストはCかな、成長を考えるとDも用意しといて、でもコンプレックスって言ってるんだからCにしとくか。
「どうですか?どこかキツイと感じる所はありますか?」
「いっいえ、大丈夫です、今着けていただいてるので丁度良いです、とにかく楽です」
あぁ~楽って意味は凄くわかる、だって今まで支えが無かったんだもんね、そりゃ動けばブルンバルンするし、胸が動いてりゃ、猫じゃらし追いかける猫みたいに男も目で追いかけるわ。
「はい、それじゃ背筋を伸ばしてください、違和感はありますか?」
「全然ないです、安心感があります!」
とりあえずブラは3種類くらい置いておくか、今のCの65と70に生理前には胸が張るだろうからDの65も予備で、少なくともこれだけあればデビュタントまでは平気だろう、ついでに下もセットでサイズに合うものを渡す。
「下はご自分で履けますか?使用人の方をお呼びしますか?もし恥ずかしければ私は壁の方を向いてますよ?」
「お気遣いありがとう存じます、大丈夫です自分で出来ますので」
壁の方を向き、しばらく待っていると
「こんなに伸びるのですね、フィットしているのに嫌じゃないです」
「それは良かった、すぐは無理でしょうが、安心して背筋を伸ばせるので作法の先生に指摘される事も減るでしょう」
いつまでも下着姿って訳にもいかないから、使用人さんにお願いをして、入って来た時に着ていたワンピースを着せてもらった。
次は靴だ、身長が140センチ無いからヒールで少し高さを出したいけど、ダンスなんかもするんだよね?そうなるとあまり高いのは履けないかな。
「靴なんですが、今日持って来ているのが9センチと7センチのハイヒール、5センチ、3センチのヒールを持って来ています、エステア様の足のサイズが22センチなので、この辺りですかね、革製なので最初はキツく感じるかも知れませんが、どうですか?」
今履いてもらったのは5センチのヒール、先端は丸くしているので可愛らしく、下品さは出ない丁度良い高さだと思う。
「はい、サイズはちょうど良いかと、少し歩きづらいですが、このくらいなら何とか」
全部試しに履かせてみたが、やはり5センチ高のヒールが1番綺麗に見える、ダンスとかはヒールが低い方が楽だろうけど、その辺は彼女の努力次第かな、ピンヒールじゃないし平気でしょ。
「ドレスに合わせて靴は決めましょうか、色などもありますし、多分ホワイト系ですよね?今回はホワイト5種、ベージュ、クリーム各1色の生地をご用意しました、デザイン画を参考にして生地を決めていただければこちらで作製致します」
「白だけでも5種類も?」
マリアンヌが驚いているが、「あんなぁ白って200種類以上あんねん!」って有名なセリフを心の中で叫んでやったぜ!
「そうですね、私はこの光に少し反射する白がおすすめですね」
「綺麗ですねぇ、肌触りもすべすべで、この素材は?」
あぁ~魔物素材ですって言って良いのか?嫌がらないかな~
「スパイダーシルクです、少し魔力を纏っているので光が反射します、この辺りでは手に入らない素材ですがエステア様の為にご用意しました」
「まぁ!!」
「お母様?」
マリアンヌが口を両手でおおって驚きの声を上げた。
「とんでもなく希少な生地よ、ヨーコさん貴女こんな物まで手に入るの?」
「今回はたまたま入りました、運が良かったですね」
スパイダーシルクの価値が分かんねぇ!適当に運が良かったってしたけど平気?
「エステア、スパイダーシルクのドレスで御屋敷が何軒も建つのよ、王妃様が挙式で着ていたウェディングドレスがスパイダーシルクで白金貨1000枚の価値と言われていたわ」
ワナワナ震える母娘に私は一言。
「今回は予算は気にしないでください、お金はいただきません、一生に一度の事ですから、エリック様にはお世話になっておりますので」
「ちょっと!ヨーコさん?それはいけないわ、エリックからちゃんとお代はいただいてね」
みなまで言うな、世話になったエリックにサービスだ、その代わり口止めするよ?
「因みに今着けてる下着も同じ素材ですよ、肌に直接着ける物ですから良い物を着けるのは当たり前です、内緒ですよ?今から市販される物はせいぜい真シルクですから、素敵な下着は素敵な女性を演出しますから」
「良いなぁ……じゃないですわ、あのヨーコさん?それは私がお願いしても、その無理よね?」
大丈夫だよ、ちゃんとあんたのも用意して来たよ、色もエッチぃのから純白まで!
「既にご用意してますよマリアンヌ様、ご安心ください、後ほど採寸させていただきますね」
「まぁぁぁぁ!!ヨーコさん!!素敵!!私、惚れてしまいそうですわ~」
惚れんでいいから、とりあえず娘のドレス決めようや、時間ねぇんだから。
私が体型から合いそうなスタイルのドレスをピックアップして、その中から選んで貰うようにした、アクセサリーもホワイトパールのネックレスを着けると言ったら、マリアンヌ母ちゃんまた大騒ぎ、だから同じのやるよって言ってやったわ。
「それではこちらでお願いします、お母様、ヨーコさんに成人式のドレスもお願いしてはダメでしょうか?」
「さすがに間に合わないでしょう、あまり無理を言ってはダメよ?」
と言いつつ2人してチラチラこっち見んな、わかったよ作りゃ良いんだろ?作りゃ
「色と生地、ドレスのデザインを選んでいただければ、最短で2日後にはお届け出来ますよ?」
作ってやるから早くしろ、成人式はカラードレスでも良いのかな?
「先程迷っていたこちらのドレスを、色は淡い水色などがあると、私は水の女神様であるアクア様を信仰しておりますので、ございますか?」
水色か、確かそんなにないけど……ありゃりゃ一種類しか今無いや、スカイブルーの生地しかない、しかもこれアクア様のドレスと一緒の色だ、どうするかな~
「水色は今この生地しかありませんね、淡いと言うより鮮やかなって言った方が良いかも知れません、因みにエマール国のアクア様像も同じ色のドレスだったかと」
これは真実です!だって作者私だもん!
「わぁ~素敵な色です、これも希少な生地なんでしょうか……」
染め方は希少かな、水の魔石使って錬金術で色を出してっから、生地は真シルクだからスパイダーシルクよりは安価だけど、ぶっちゃけ価値がわからん。
「生地は真シルクですので、染めるのに特殊な技法を使っていると聞いております、価値自体は分かりませんが手には入りにくいかと」
エステアも一々価値とか聞かなくて良いから、チャッチャと決めちゃおうぜ?って決まってんのか、水色のドレスは良いけど靴どうすんだ?
「履物はどうされますか?合わせるなら黒かシルバーもしくはネイビー等の同色系の濃い色ですかね、ドレスの長さで足元は隠れますが、見られて恥ずかしくない色が良いかと」
水色ドレスって言ったら私はアリスを思い出すけど、アリスは水色に黒のストラップシューズだった気がする、ってかあれドレスじゃなくてワンピースだな、こっちの世界のスタンダードがわかんないや、前世だと結婚式の水色ってサムシングブルーって言ってなんか意味があった気がする、純潔で清らかとかそんなんだったかな?今回は結婚式じゃねーけど、純潔と清らかなら良いイメージだと思うよ?間違ってたらごめん。
「シルバーの靴なんてあるのですか?」
「ん~無ければ作るしかないですね、シルバーにしてみますか?」
「はい!可能であればお願い致します」
不可能を可能にするそれが異世界の私だ!まぁチートと工房頼みだけど。
「エステア様の方は以上になりますか?もし急遽変更がある場合はエリック様にコールしてもらって下さい」
「はい、わかりました、よろしくお願い致します!」
ふぅ、半分終わったな、んじゃマリアンヌのもパッパと終わら……もう脱いでるし、準備万端かよ、まぁ早いに越した事は無いけどさ、貴女貴族のご婦人でしょ?恥じらいってないの?
マリアンヌのサイズに合う下着を出す、前の目視で当たりをつけて作って来たけどサイズ的にはバッチリだった、エステアと違ってマリアンヌの場合は補正下着も用意しておいたから説明してから着せてみる、本人も持ち上がる感じのショーツが気に入ったのか、持って来た色を全色購入したいと言ってきた、とりあえずこっちはお金を貰うことにする、全部タダだと向こうもやりづらいだろうからね。
下着類が終わったので後片付けしようとしたら、やっぱり母ちゃんからもドレスをオネダリされたよ、娘のデビュタントに合わせるドレスってどんなんが良いんだろうか?
やっぱりご婦人だからエンパイアとかエレガントスリムとかかな、ドレス着るパーティーとか前世でも結婚式くらいだったし体型の問題があったから基本的に行かなかったし……。
とりあえずマリアンヌはスレンダーだから、スリムタイプのドレスで良いんじゃないかな?あまり露出しないでさ、娘がお姫様ラインのドレスを着るんだから同系統は御法度だろうし、その歳だとプリンセスって言うよりタルンデルって感じ……一文字しか合ってねぇ。
いや、マリアンヌは本当に頑張ってる方だ、彼女は体型維持の努力してると思う、多分産後に骨盤が戻らなかったんだろう、腰周りとおしりだけが大きいから、さっきのは私の表現が悪い、努力してるのに茶化してごめんなさい!
謝罪の意を込めて、ガーターコルセットをプレゼントしよう、こんなんSMの女王くらいしか着けないだろっ!って感じのエッロエロなやつ、革製だから尚更雰囲気出てるでしょ?なんなら鞭と仮面舞踏会みたいなマスクも付けようか?ってすみません調子に乗りました。
マリアンヌもドレスがやっと決まったようだ、色はクリーム色にしたみたい、常識のある人で良かった、それなら娘より目立つ事は無いと思うよ。
それじゃぁ次はいよいよ
「最後にメイクの指導を致します、簡単なパッチテストしますのでちょっと腕を失礼しますね、本来なら1日~3日くらい実施するのですが、今回は強い拒否反応が無いかだけ見ますね、万が一肌に異常があったらすぐに落としますのでご安心ください。あと当日担当する使用人の方を全員集めてもらえますか?」
今日の本丸はここ、この2人が広告塔になる事で、当日参加する貴族達の目には2人の劇的な肌の変化が映るだろう、侯爵夫人のマリアンヌの事だからそれを上手く利用してくれるはず、もし化粧の事を聞かれたら、さり気なく錬金術師会の開発する化粧品だと言ってもらえば後は流れに乗るだけ、商品を出せば出すだけ広がるはずだ。
「それでは今からメイクの説明を致します、これは現在開発中の為、すぐには出てこないでしょう、ですが近い将来必ず広まり女性にとってのスタンダードになるはずです、早い段階で知識を入れておく事は、皆さんにとってもプラスになると思います」
そう言ってから説明をする、先日準備しておいたテキストも配ったので、それを見ながら順番や塗り方伸ばし方、最終的な落とし方までの説明をした、実際2人にメイクを部分的に施したら歓声が湧き上がったほどだ、パッチテストの重要性もしつこいくらい説明したので、全員理解してくれていると思う。
「あまり厚塗りしないように気を付けてくださいね、特にエステア様は若くて肌が綺麗ですので、それを生かしたナチュラルなメイクが良いでしょう、口紅はくどくないこの色なんかは健康的に見えてよろしいかと思います、はい完成しました、どうですか?」
エステアのメイクはビックリする様な変化を求めた物ではなく、ほんのり他とは違う様に見せたナチュラルメイク、元の素材を壊さないように気を使うので難しい。
それとは逆に肌の老化があるマリアンヌはそれを隠していくメイク、ファンデーションやコンシーラでシワを目立たなくしたり、血色をよく見せたり、口紅の上にはプルンと艶やかに見せるためのグロスを塗る、とてもセクシーで若々しいメイクに仕上がった。
「これがメイクの力です、どうですか?これが近い将来広まります、試供品を置いて行きますので手に取って効果を確認してください、勿論マリアンヌ様とエステア様の分は別にございますのでご安心を」
マリアンヌは手鏡の中に映る自分を見てはぁ~っと溜息をつく、全然違うからね、今回は私のチート化粧品だから色合いも鮮やかでしょ?そのままエリックに見せると良い、もしかしたら今日は熱い夜になるかも知れないよ?
使用人の皆さんにも洗顔料、化粧水や乳液、ハンドクリーム、リップクリームをプレゼント、興味があれば使ってみるだろう。
「ヨーコさん、この技術はすぐに広めるの?」
「そうですね、すぐになるかはまだ未定ですが広める事は間違いないです」
「わかったわ、広める時には私も一枚噛んでも良いかしら?」
最初からそのつもりですが?
「えっと、最初からマリアンヌ様には協力して頂こうと思っておりました、ご迷惑でなければですが」
「んまぁ!本当に?」
「えぇ、貴族であるマリアンヌ様のコネクションは私には作れませんからね、万が一断られても大丈夫な様に準備はしていましたけど、私個人としてはマリアンヌ様にお願いしたいと思っております」
マリアンヌの顔がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「優先的にメイク用品を回して貰えると判断しても良いのかしら?」
「はい、勿論です」
「わかりました、どんな協力でも致しましょう、さっきの説明通りなら、まずは基礎化粧品を広めてから、本格的なメイク用品を広めるで間違いないかしら?」
今現状は基礎化粧品しか錬金術師会では作れてないし、肌を清潔にケアする事は大切だから。
「概ねその通りです、基礎化粧品はその名の通り基礎ですから、皆様には肌の状態を良くしてもらって、更なる美を提供したいと思っております」
「更なる美とはこのメイクの事かしら?」
「メイク以外も考えておりますよ、血の流れを良くするマッサージから、産後の体型を戻す運動まで、マリアンヌ様にお渡しした補正下着もその1つです、美しい女性としての寿命を長くする、何歳になっても女であり続ける、それが私の最終的な目標ですから」
建築に例えるなら、今はまだ下地工事の段階、これから幾つもの工程を経て完成する、でも最初が1番大事だからさ。
「これよりも先があると?」
「えぇ、メイクって悪い言い方をすれば偽っている訳ですから、メイクを落とした素肌が荒れていてはせっかく綺麗に見せても本当の美しさではありませんからね」
「それならば寝る時もメイクをして眠れば良いのでは?」
まぁ何も知らなきゃその発想に辿り着くわな。
「マリアンヌ様、素肌というのは呼吸をしております、メイクはその呼吸を妨げる事もございます、ずっと呼吸が出来ない肌はどんどん弱り荒れていき、回復力の低下に繋がります、基本はお出かけ前にメイクをし、帰って来たらメイクを落とす、寝る前に基礎化粧品で素肌の回復の補助をしてあげる、この繰り返しになります、メイクは万能ではありません、いつまでも若々しく美しい女性を作るアイテムです、決して若返る事は無いのです、本来なら基礎化粧品だけで良いんですよ?」
「毒にも薬にもなると言う事ね、良く理解したわ、美しく見せる事は出来ても本来の美しさでは無いと、それでも人前に出る時は美しく見られたいもの、それが偽りだとしても……女の性よね」
時刻が昼を過ぎた辺りで大体の用事は終わった、帰ろうとしたらマリアンヌが腕をガシッと掴みお茶休憩、こういう所でお茶やお菓子をいただくと、普段私達が良い物を食べてるって事がよく分かる、そんなのは顔には絶対に出さないけどね、多分良い物を出してもらっているんだと思う、エステアはニコニコしながら菓子を口に入れているから、この辺も砂糖が本格的に流通すれば解消される問題だろう。
あぁ、そういやまだ帰れないや、エリックにも用事があったんだ、例の厄介アイテムを押し付けるって用事が。
「マリアンヌ様、本日エリック様にもお話があるのですが、御屋敷にいらっしゃいますか?」
「爺、主人は今どちらに?」
マリアンヌとの打ち合わせも終わっているので、執爺の案内でエリックの執務室に通された。
「ヨーコすまんな、色々としてくれたらしいな、感謝している、それで私に用とはなんだ?」
「えっと、ダンジョンでちょっと厄介なアイテムを手に入れちゃって、処理に困るから持ってきたの」
エリックがめちゃくちゃ嫌な顔をした。
「ヨーコが厄介な物って事は余程だな、ふぅ、最近は平和だったのだが」
「何よ?今は平和じゃないみたいな言い方じゃない、でもこのアイテム使いようによっちゃエリックに有利になるよ?」
「有利だと?私は別に不利な事は無いのだが?まぁ良い見せてみろ」
復活の指輪を取りだし、エリックに説明と使い方を教える。
「はぁ、なんてものを……どう使えと言うのだこんなもの」
「最初は王様に献上しようかと思ったんだけど、エリックにワンクッション置いた方が良いかな?って思って」
「あぁ、それだけが救いだ、そうだな……然るべき時には確かに役立つかも知れん、だがよく考えて使わねばな、クールタイムが長すぎる、むぅぅ」
唸るように腕組みをして悩み始めるエリック、でもこれマーチの話だと初回特典の可能性もあるって言ってた、それだけ貴重なアイテムだって。
「わかった、一先ず預かっておく、次に王都に行く時までに考えをまとめておこう、もうマリアンヌ達の用事は済んだのだな?私もヨーコに話がある」
「はい、なんでしょうか」
「ヨーコはそのあれだ……想いを寄せている相手はいるのか?」
何よ?口説いてんの?全く奥さんいるのに貴族ってやつは……
「エリックは良い人だけど、タイプじゃないのでごめんなさい!!!」
「バカ、私では無い!こっちもお断りだ!ルビー公爵がヨーコに興味を持っていてな、多分ご子息の妻にとでもお考えなのだろう、勿論好いてる者や既に婚約などしていれば断って構わぬ」
ルビー公爵?グランドマスターにドラゴンキラー渡した時に聞いた名前だ、でもさぁ
「つい先日ホーク殿下の求婚をお断りしたんですが、流石に殿下を断ってるのに公爵家と結婚って訳にはいきませんよね?」
「初耳だぞ?ホーク殿下がヨーコに求婚だと?殿下には共和国の姫という婚約者がいるのだぞ?嘘をつくな」
「嘘じゃないもん!本当だもん!グランドマスターのいる前で求婚されたもんもんもんっ!!」
久しぶりに私必死だわ!嘘じゃないもんっ!って可愛く言ってみたけど、声はイラッとしたから可愛くないかも……
「わかったわかった、そういう事にしといてやる、ホーク殿下が血迷ったのだ、本気にするなよ?国際問題になる」
「あの野郎……次会ったら絞めてやる、私の乙女心を弄びやがりましたね!」
イライラした私はシャドウをしながらホークを絞める事しか考えていなかった。
「ヨーコ……俺は何も見ていない、だから早く元に戻せ」
「え?何を?」
エリックの変な言い方に、てっきり動き過ぎて乳でも飛び出たかと思ったけど、飛び出る程の逸品は持って無かったぜ!うっさいわ!と1人コントをしながら執務室にある鏡を見たら……
「あはは~、はぁやっちまった……」
「大丈夫だ、私は何も見ておらん、だから安心しろ」
興奮して動いたせいか、外れちゃってました、認識阻害のアクセサリー、今まで戦闘でも外れた事なんて無かったから油断したわ、鏡に映るエメラルドグリーンの瞳、後ろに結んでいた髪はくすんだ色から、光が透き通る鮮やかな金髪に、そして最大の特徴である尖った耳は丸見えだった、誰この美人?なんて冗談も言えずに溜息をつきながらアクセサリーを付け直す。
「ありがとう、エリックごめんね?」
「何がだ?」
「なんでもない」
バレちゃった、あ~あ、どうしようかな、ティンダー気に入ってたんだけどな、人間関係も上手く構築出来てたのに、王国にはいれなくなっちゃうかな……
「ヨーコ、1つだけ聞きたい、私にまだ言ってない事はあるか?」
「うん、話した方がいい?」
「いや、聞くつもりは無い、今までと対応を変えるつもりも一切無い、ヨーコは私の友人だ、前にも言ったが困った事があったらすぐに言え、力になる。例え国を敵に回しても私はお前の友人であり続けるだろう、だから変な考えはするなよ?今まで通りだ、何も変わらない」
良い奴だなぁ、なんで独身じゃないんだろ、少しマリアンヌが羨ましいよ、エリックとなら良い家庭を築けたかもな~
「うん、ありがとう、私も同じだよ、エリックが窮地に立つような事があったら全力で助ける、これは本心だよ」
「ふっ、そうならん様にするつもりだ、ヨーコに守られる様なヘマはせん」
それもそうだね、じゃぁ私はエリックの家族を守ってあげる、この身に代えてもね、今は口に出さないけど。
「んじゃ私はマリアンヌ様とエステア様のドレス作らなきゃいけないから帰るよ」
「うむ、すまんが頼むぞ、拗らせるとウチの女どもは面倒臭いからな、わはははっ!」
エリックが執爺を呼んで私を屋敷まで送るように指示を出してくれた、私はエリックに礼を言って部屋を出た。
エリックの好感度は現在も上昇中、勿論友人としてね、頼もしい友人に感謝して、彼の大切な家族のために素晴らしいドレスを作ってやろうと決心したよ。
マーチ達には一応報告しとかないとな、エリックのあの言い方だと私の正体が外部に漏れる事は無いと思う、例えバレても希少生物で~す!って開き直ってやろうかな。
私さ、もしエリックに問い詰められたら、実は異世界人ですって話そうとしていた、なんか隠して嘘をついてるのが嫌になってね、エリックなら受け止めてくれそうに感じたから。
これも全てあの腐れ女ったらしのホークが悪いんだ!あんの野郎、アリエルとも良い感じなんだよね?なんか前にグランドマスターがそんな事言ってた気がする、共和国の姫と婚約してるくせに私は第二夫人って事?いや、アリエルとも良い感じならアリエルが身分的には第二夫人か、んじゃ私は妾か?断固拒否だわマジで、あの歩く生殖器め!イチモツもぎ取ってブタに食わせてやる!
屋敷に着いた私、冷静に考えたら調子に乗った私がいけないんだと反省をした、でもやっぱりホークはなんとなく許さん!




